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遺産分割協議書に「その他一切の財産」と書いても大丈夫なのか?

遺産分割協議書にその他一切の財産と記載
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遺産分割協議書の文章が長くなると面倒なので、その他一切の財産と書きたくなります。

その他一切の財産と書いても法律上は問題ありません。誰が何を取得するのか分かれば大丈夫です。

ただし、デメリットもあるので、安易に記載するのは止めておきましょう。

今回の記事では、その他一切の財産という記載について説明しているので、遺産分割協議書の作成に役立ててください。

1.「その他一切の財産」と書いても遺産分割協議書は有効

まずは、遺産分割協議書に「その他一切の財産」と書いても、問題無いのか説明します。

結論から言えば、「誰が」「何を」取得するのかが、遺産分割協議書を読んで分かれば問題ありません。

例えば、以下のような記載です。

遺産分割協議書

次の不動産はAが取得する。

(不動産の記載省略)

上記以外のその他一切の財産はBが取得する。

特定の不動産はAが取得して、その他一切の財産はBが取得すると分かります。

逆に、以下のような記載は問題があります。

遺産分割協議書

その他一切の財産はBが取得する。

その他一切の財産だけでは、何を取得するのか分かりません。全財産をBが取得するという意味であれば、「全財産はBが取得する」と記載すべきです。

遺産分割協議書に「その他一切の財産」と書くのであれば、誰が読んでも分かるようにしましょう。

 

2.遺産分割協議書に「その他一切の財産」と書く理由

遺産分割協議書に「その他一切の財産」と書くのは、主に以下のような理由です。

  • 相続財産(少額)の記載を省くため
  • 相続財産の記載漏れを防ぐため

それぞれ説明していきます。

2-1.相続財産(少額)の記載を省くため

不動産や預貯金等の高額な財産であれば、特定できるように遺産分割協議書に書きます。

ですが、少額の財産まで細かく全部書くのは、現実的ではありません。遺産分割協議書が複数枚になると、契印などが必要になるので面倒です。

そのため、細かい財産の記載を省くため「その他一切の財産」を使います。

例えば、以下のような記載です。

遺産分割協議書

次の不動産は、Aが取得する。

(不動産の記載省略)

次の預金は、Bが取得する。

(預金の記載省略)

上記以外のその他一切の財産は、Cが取得する。

上記の遺産分割協議書は、AとBが取得する財産は特定して、その他の財産はCが取得するという内容です。

もちろん、Cの取得する財産が少額であれば、わざわざ遺産分割協議書に書かないという選択肢もあります。

2-2.相続財産の記載漏れを防ぐため

遺産分割協議書に記載していない相続財産があれば、改めて遺産分割協議書を作成する必要があります。
※相続手続が不要な財産は除く。

相続人が少ない場合や、相続人が近所に住んでいる場合は別ですが、改めて遺産分割協議書を作成するのは面倒です。

そのため、相続財産の記載漏れを防ぐため「その他一切の財産」を使います。

例えば、以下のような記載です。

遺産分割協議書

次の不動産は、Aが取得する。

(不動産の記載省略)

次の預金は、Bが取得する。

(預金の記載省略)

上記以外のその他一切の財産は、Aが取得する。

上記の遺産分割協議書は、Aが不動産を取得して、Bが預金を取得するという内容です。もし記載漏れの財産があればAが取得します。

その他一切の財産は便利な記載

 

3.遺産分割協議書に「その他一切の財産」と書くデメリット

遺産分割協議書に「その他一切の財産」と記載しておくて便利です。

ただし、「その他一切の財産」にはデメリットもあります。

  • その他には高額な財産も含まれる
  • その他には不要な財産も含まれる

デメリットについても説明していきます。

3-1.高額な財産もその他一切に含まれる

通常、その他一切の財産と記載している場合、少額な財産をイメージしていることが多いです。

ですが、高額な財産もその他一切の財産に含まれます。

相続人同士の認識が一致しているなら別ですが、その他に含まれる財産が高額だと揉めやすいです。

例えば、以下のような遺産分割協議書を作成したとします。

遺産分割協議書

不動産はAが取得する。

預金はBが取得する。

上記以外のその他一切の財産はCが取得する。

遺産分割協議の時点では、その他一切の財産を500万円ぐらいと想定していました。ですが、現金や株券があったのでその他一切の財産が増えています。

想定の金額と実際の金額が違う
相続財産 想定の金額 実際の金額
不動産 1,000万円 1,000万円
預金 800万円 800万円
その他一切の財産 500万円 3,000万円

AやBが納得するなら別ですが、普通は納得しないはずです。

安易に「その他一切の財産」を使うと、後から揉める原因になります。

3-2.不要な財産もその他一切に含まれる

その他一切の財産には、不要な財産(損する財産)も含まれます。

例えば、相続財産の中に田畑や山林があった場合です。田畑や山林を処分するのは難しいので、処分できず固定資産税だけ支払い続ける可能性もあります。

遺産分割協議をやり直したいと提案しても、応じてくれるとは限りません。不要な財産は他の相続人にとっても不要だからです。

遺産分割協議後に不要な財産に気付くことは珍しくないので、「その他一切の財産」を使うなら注意してください。

その他一切の財産にはデメリットもある

 

4.「その他一切の財産」と同じ意味になる書き方

遺産分割協議書に「その他一切の財産」と書かなくても、同じ意味になる書き方もあります。

  • ○○以外の財産はすべて取得する
  • その他の財産はすべて取得する

上記の書き方は、「その他一切の財産」と同じ意味になります。

例えば、「不動産以外の財産はすべてBが取得する」と書いてあれば、株券はBが取得すると分かります。

重要なのは文言ではなく、財産の取得者が分かるかどうかです。

 

5.さいごに

今回の記事では「遺産分割協議書とその他一切の財産」について説明しました。

遺産分割協議書に「その他一切の財産」と記載しても、法律上は問題ありません。遺産分割協議書の記載方法は特に決まりがないからです。

その他一切の財産と記載しておけば、以下のようなメリットがあります。

  • 細かい財産の記載を省ける
  • 財産の記載漏れを防げる

一方、その他一切の財産にはデメリットもあります。

  • 高額な財産も含まれる
  • 不要な財産も含まれる

遺産分割協議書にその他一切の財産と記載するのであれば、メリット・デメリットを理解しておきましょう。