生命保険金を受け取っても、原則として遺産分割協議書には記載しません。
なぜなら、受取人の固有財産であり、相続財産には含まれないからです。
ただし、受取人が被相続人になっている場合等は、生命保険金も相続財産になるので、遺産分割協議書に記載します。
今回の記事では、遺産分割協議書と生命保険金について、原則と例外を分かりやすく説明しているので、ぜひ最後までお読みください。
1.生命保険金は原則として遺産分割協議書に記載しない
原則として、生命保険金は遺産分割協議書に記載しません。
なぜなら、受取人が指定されている生命保険金は相続財産ではなく、受取人の固有財産だからです。
1-1.生命保険金の請求権は受取人の固有財産
生命保険金の受取人が指定されている場合、保険金(請求権)は相続財産ではなく受取人の固有財産となります。
以下は、保険法の条文です。
(第三者のためにする生命保険契約) 第四十二条 保険金受取人が生命保険契約の当事者以外の者であるときは、当該保険金受取人は、当然に当該生命保険契約の利益を享受する。
生命保険金の請求権は受取人が直接取得する権利であり、相続によって取得する権利ではありません。
相続人が受取人になっている場合でも、生命保険金の請求権は相続財産には含まれないです。
1-2.受取人の固有財産は遺産分割の対象外
遺産分割の対象になるのは、亡くなった人の相続財産です。
したがって、受取人の固有財産である生命保険金は、遺産分割の対象外となります。
▼家族構成
被相続人|父親
相続人 |長男・二男(2人)
▼相続財産
不動産|2,000万円
預貯金|1,000万円
▼生命保険金
長男|1,000万円
生命保険金は長男の固有財産なので、父親の相続財産には含まれません。
したがって、遺産分割の対象になるのは不動産と預貯金のみであり、遺産分割協議書に記載するのも不動産と預貯金のみです。
生命保険金は受取人の固有財産なので、遺産分割をする際は間違えないように注意してください。
2.生命保険金が相続財産なら遺産分割協議書に記載
前章で説明したとおり、生命保険金は原則として相続財産に含まれません。
しかし、例外的に生命保険金が相続財産に含まれるケースもあります。
- 生命保険金の受取人が被相続人の場合
- 保険金を請求する前に亡くなった場合
上記の場合は、生命保険金も遺産分割の対象となり、遺産分割協議書にも記載します。
記載方法に決まりはないので、生命保険金が特定できるように記載すれば大丈夫です。
2-1.生命保険金の受取人が被相続人の場合
現在の生命保険契約では、原則として受取人を被保険者本人にするケースはありません。
ただし、古い生命保険契約だと、受取人が被保険者本人になっているケースもあります。
被保険者が受取人になっている場合は、生命保険金の請求権は被相続人(被保険者)に帰属するので、相続財産に含まれます。
以下は、遺産分割協議書の記載例です。
遺産分割協議書
Aは、下記の生命保険金を取得する。
契約保険会社 ○○生命保険会社
保険契約者 ○○ ○○
被保険者 ○○ ○○
保険金受取人 ○○ ○○(※被相続人)
保険証券番号 ○○○○○○○
死亡保険金額 金○○万円
上記の記載事項は、保険証券に記載されています。
遺産分割協議書は生命保険金を請求する際にも必要なので、生命保険会社が読んでも分かるように記載します。
2-2.保険金を請求する前に亡くなった場合
被相続人(被保険者)が亡くなって、受取人が生命保険金を請求する前に亡くなった場合です。
被保険者が亡くなった時点で請求権は発生しているので、受取人が亡くなると請求権は相続財産となります。
▼家族構成
被相続人|父親
※2月18日に亡くなる
相続人 |長男
被相続人|長男
※3月7日に亡くなる
相続人 |A・B・C
▼生命保険金
長男|1,000万円
父親が亡くなった時点で生命保険金の請求権は長男の財産になります。
その後、生命保険金を請求する前に長男が亡くなると、長男の相続人が遺産分割協議で請求権についても話し合います。
滅多に起こらないですが、親族が立て続けに亡くなっている場合は、亡くなった順番を確認してください。
3.遺産分割協議書と生命保険金に関する注意点
遺産分割協議書と生命保険金に関する注意点を3つ説明します。
- 固有財産である生命保険金を渡すと贈与になる
- 生命保険金を代償金に使うのは問題ない
- 相続財産に含まれない生命保険金も相続税の対象
上記は勘違いしやすいので、しっかりと確認しておいてください。
3-1.固有財産である生命保険金を渡すと贈与になる
相続人が受けった生命保険金を、別の相続人に渡すのは自由です。
ただし、遺産分割の対象ではないので、受取人からの贈与だと判断されるでしょう。
▼家族構成
被相続人|父親
相続人 |長男・二男(2人)
▼生命保険金
長男|1,000万円
遺産分割協議書
1 長男は、受け取った生命保険金から、二男に対して金500万円を支払う。
※長男が二男に500万円を渡した場合、長男から二男への贈与だと判断される可能性が高いです。
生命保険金は受取人の財産なので、贈与するのは自由ですが、贈与税には注意してください。
3-2.生命保険金を代償金に使うのは問題ない
相続人が受けった生命保険金を、代償分割の支払いに使うのは問題ありません。
- 代償分割
-
特定の相続人が家や土地などの現物資産を相続する代わりに、他の相続人に対して、自分の財産から代償を支払う遺産分割のこと
以下は、長男が不動産を相続する代わりに、二男に対して代償金を支払うケースです。
▼家族構成
被相続人|父親
相続人 |長男・二男(2人)
▼相続財産
不動産|2,000万円
▼生命保険金
長男|1,000万円
遺産分割協議書
(省略)
2 長男は、前項に記載された遺産を取得する代償として、二男に対して金500万円を令和○年○月○日までに、以下の口座に振り込む方法により支払う(振込手数料はA負担)。
(省略)
生命保険金を代償金に使っても贈与ではないので、原則として贈与税は課税されません。
ただし、不動産の価格を上回る代償金を支払うと、上回った部分は贈与と判断されます。
代償分割と贈与税については、下記の記事で詳細に説明しているので、気になった方は確認してみてください。
代償分割と贈与税を読む『代償分割で贈与税は原則かからない|例外的に課税される3つのケース』
3-3.相続財産に含まれない生命保険金も相続税の対象
原則として、生命保険金は受取人の固有財産なので、遺産分割協議書には記載しません。
ただし、遺産分割協議書に記載しない生命保険金も、相続税の対象にはなります。
なぜなら、被相続人の死亡により支払われる生命保険金は、「みなし相続財産」だからです。
- みなし相続財産
-
相続税の計算上は相続財産とみなされる財産のこと
被相続人の死亡によって取得した生命保険金や損害保険金(偶然な事故に基因する死亡に伴い支払われるものに限られます。)で、その保険料の全部または一部を被相続人が負担していたものは、相続等により取得したとみなされて、相続税の課税対象となります。
非常に紛らわしいのですが、固有財産である生命保険金も、相続税の計算上は相続財産として扱います。
遺産分割協議書に記載しない生命保険金も、相続税の対象にはなるので注意してください。
4.遺産分割協議書と生命保険金に関するQ&A
遺産分割協議書と生命保険金について、よくある質問と回答を説明します。
遺産分割協議書に生命保険金を書いてしまったら、どうなりますか?
生命保険金を書いても遺産分割協議書は無効になりません。
生命保険金を考慮して遺産分割の内容を決めることはできますか?
可能です。相続人全員の合意があれば問題ありません。
生命保険金を相続人で分けたい場合、遺産分割協議書に記載すれば良いですか?
遺産分割協議書ではなく、別の合意として記載した方が良いです。
5.さいごに
今回の記事では「遺産分割協議書と生命保険金」について説明しました。
亡くなった人が生命保険契約を結んでいた場合、生命保険金の受取人が重要になります。
受取人が亡くなった人以外であれば、生命保険金は受取人の固有財産なので遺産分割の対象外です。
一方、受取人が亡くなった人であれば、生命保険金も相続財産なので遺産分割の対象となります。
受取人が生命保険金を他の相続人に渡すと、遺産分割ではなく贈与と判断されます。
遺産分割の対象でない生命保険金であっても、相続税の対象にはなるので注意してください。



