代償分割で支払う金銭が用意できなければ、代わりに自分の不動産を譲渡することもできます。
ただし、代償分割により不動産を譲渡するなら、3つの税金を知っておいてください。
- 譲渡所得税
- 不動産取得税
- 登録免許税
遺産分割協議をする際は、相続人同士で税金についても確認しておいてください。知らずに不動産譲渡すると、遺産分割協議後に揉める要因となります。
今回の記事では、遺産分割による不動産譲渡の税金について説明しているので、遺産分割の参考にしてください。
目次
1.代償分割により不動産を譲渡すると譲渡所得税
代償分割により金銭を支払っても、譲渡所得税は課税されません。
ただし、金銭の代わりに不動産を譲渡すると、譲渡所得税が課税されるケースもあります。
- 譲渡所得税
- 不動産等の譲渡により得られた利益に対して課税される税金の総称
分かりやすく説明するなら、不動産の取得費よりも譲渡する不動産の価値が高ければ、譲渡所得(利益)が発生します。
代償分割による譲渡する不動産の価値は、代償分割時の時価になります。
自分で取得した不動産を譲渡する場合、取得費を調べるのは難しくないはずです。
一方、相続により取得した不動産を譲渡する場合、取得費を調べるのが難しいので注意してください。
注意譲渡所得の計算は複雑なので、不動産に詳しい税理士に相談しましょう。
2.代償分割により不動産を取得すると不動産取得税
相続により不動産を取得した場合、不動産取得税は非課税になります。
- 不動産取得税
- 不動産を取得した人に課税される税金のこと
ただし、代償分割により不動産を取得した場合は、不動産取得税が課税されます。
代償分割により不動産を取得した場合、亡くなった人から不動産を取得するわけではないので、原則どおり不動産取得税が課税されます。
不動産取得税の課税を知らないと、相続人同士でトラブルになるので注意してください。
3.代償分割による不動産取得の登録免許税
代償分割により不動産を取得した場合も、所有権移転登記を申請しなければ、第3者に不動産取得を対抗できません。
たとえ遺産分割協議書に代償分割の記載があっても、所有権移転登記の申請は必要です。
そして、所有権移転登記を申請する際には、登録免許税が発生します。
3-1.代償分割による不動産取得は税率が2%
代償分割により不動産を取得した場合、所有権移転登記の登録免許税は以下の計算で求めます。
不動産評価額は、固定資産評価証明書を取得すると分かります。
例えば、代償分割により譲渡する不動産の評価額が800万円だった場合。
800万円×2%=16万円
登録免許税は16万円となります。
代償分割により譲渡する不動産の評価額が高ければ、登録免許税も高くなるので気を付けてください。
注意相続による所有権移転登記とは、登録免許税の税率が違います。
3-2.代償分割による不動産取得の登記原因
代償分割による不動産の所有権移転登記を申請する場合、登記原因は「遺産分割による贈与」となります。
遺産分割による代償譲渡の方が正しい気もしますが、法務局が「遺産分割による贈与」と決めています。
- 登記の目的:所有権移転
- 原因:令和○年○月○日遺産分割による贈与
- 権利者:不動産を取得する人
- 義務者:不動産を譲渡する人
登記原因日付は、遺産分割協議の成立日です。
添付書面として、相続人全員が署名捺印(実印)した遺産分割協議書が必要になります。
関連記事を読む『遺産分割協議書には代償分割による支払いであると記載する』
4.さいごに
今回の記事では「代償分割による不動産譲渡の税金」について説明しました。
不動産の取得費よりも譲渡する不動産の価値が高ければ、譲渡する人に譲渡所得税が課税されます。
代償分割により不動産を取得する人には、不動産取得税が課税されます。
不動産の所有権移転登記を申請するには、登録免許税を納める必要があります。
代償分割により不動産を譲渡すると税金が発生するので、遺産分割協議をする際に相続人同士で確認しておきましょう。