遺留分放棄を生前にするなら家庭裁判所の許可が必要

遺留分の放棄を生前にする
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遺留分の放棄を生前にするには、家庭裁判所の許可が必要となります。当事者双方が納得していても、許可を得なければ効力は発生しません。

家庭裁判所が許可をするかどうかは、3つの判断基準を元に決めます。

遺留分の放棄を生前にすることを検討されている人は、判断基準について知っておいてください。

1.相続開始前は許可が必要

相続が開始する前(生前)に遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可が必要です。自由に放棄できるわけではありません。

(遺留分の放棄)
第千四十九条 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。

出典:e-Govウェブサイト

残す側と残される側の両方が納得していても、家庭裁判所が許可しない限り遺留分の放棄は効力がありません。

家庭裁判所が許可をするかどうかは、3つの基準があります。

  1. 本人の希望であること
  2. 合理的な理由があること
  3. 対価が支払われていること

すべてを満たす必要があると言われています。

1-1.本人の希望であること

1つ目は本人の希望であることですが、当たり前のことを決めているだけになります。

親が子供に遺留分の放棄を強要したり、推定相続人が他の推定相続人に無理やり放棄させることはできません。

ただし、家庭裁判所が強要されているかどうかを見極めるのは難しいので、2つ目と3つ目の基準を満たすことで補完しています。

1-2.合理的な理由があること

2つ目の合理的な理由があることが、家庭裁判所の判断基準の中で1番重要な要素となります。

相続開始前に遺留分の放棄をしなくても、相続開始後に何もしなければ遺留分の放棄となります。
したがって、本来は放棄する必要がないので合理的な理由が必要です。

推定相続人が嫌いだからや縁を切っているでは、合理的な理由とはならないです。あくまでも、生前に遺留分を放棄する合理的な理由が必要です。

1-3.対価が支払われていること

3つ目の対価が支払われているとは以下の2つです。

  • 経済的な支援をすでに受けている
  • 遺留分の放棄を条件に経済的な支援を受ける

経済的な支援

対価は経済的な支援なので、結婚を認める代わりに遺留分の放棄をするでは認められないです。
*過去に実際にあったことです。

経済的に裕福かどうかは無関係

子どもが起業して資産を築いていても、対価の支払いは必要です。
あくまでも、相続開始前に遺留分の放棄をするには、対価が必要ということです。

 

2.遺留分放棄の撤回は難しい

遺留分の放棄を撤回するには、家庭裁判所の許可が必要となります。

原則として、一度放棄すると撤回することは難しいです。撤回を認めてもらうには、事情が変わった等の理由が必要です。

たとえば、遺留分の放棄を条件に金銭を受け取る予定だったが、金銭が支払われなかった。あるいは、会社を継ぐ予定だった長男が亡くなったので、相続対策自体をやり直すことになった等が考えられます。

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3.相続開始後は自由に放棄

相続開始後の遺留分の放棄は特に決まりはないです。遺留分の放棄というよりは、何もしなければ勝手にそうなります。

たとえば、亡くなった人が遺言書で全財産を第3者に遺贈していて、あなたが何もせずに一定期間経過すると遺留分の放棄となります。

一定期間とは以下のどちらかです。

  • 贈与または遺贈を知ってから1年間
  • 相続開始から10年間

遺留分を侵害されても何もしないのが、相続開始後の遺留分の放棄です。

 

4.さいごに

遺留分の放棄を生前にするには、家庭裁判所の許可が必要です。

家庭裁判所の許可を得るには、合理的な理由が必要となるので注意してください。

家庭裁判所の手続きについては『遺留分放棄の手続き|家庭裁判所に許可申立書を提出する』をご覧ください。

基本的に遺留分の放棄とは、相続開始前のことを言っている人が多いのではないでしょうか。相続対策とセットですることになるので、専門家に相談されることをお勧めします。