生命保険金の受取人変更は、遺言書でもできるのはご存知でしょうか。
保険法に記載があるので、遺言書での受取人変更も認められています。
ただし、遺言書での受取人変更にはリスクもあります。優先的に選ぶ方法ではありません。
今回の記事では、遺言書での生命保険金の受取人変更について説明しているので、受取人変更を検討しているなら参考にしてください。
目次
1.遺言書での変更は保険法で認められている
生命保険金の受取人変更は、遺言書ですることも可能です。
遺言書の記載事項は法律で決まっています。保険金の受取人変更については、保険法に記載があります。
保険法44条により、保険金の受取人変更を遺言書ですることも認められます。
2.遺言書にどう書くかは決まっていない
保険金の受取人変更を遺言書にどう書くかは、特に決まっていません。
法律でも決められていないので、受取人の変更が分かるように書けば大丈夫です。
以下は、遺言書の記載例です。
遺言書
第○条 遺言者は、下記生命保険契約による生命保険金の受取人を、○○(昭和○○年○月○日生)に変更する。
保険証券番号 123456号
保険契約日 令和2年4月23日
種類 ○○生命保険
保険金額 1,000万円
保険者 ○○保険会社
契約者 甲乙 太郎
被保険者 甲乙 太郎
保険証券の記載事項を書くので、自筆証書遺言にするなら保険証券を見ながら書きましょう。
公正証書遺言にする場合は、公証人に保険証券を確認してもらいます。
3.遺言書での受取人変更には危険もある
遺言書によって保険金の受取人変更をすることは可能です。
ただし、遺言書での受取人変更には危険があります。
- すべての保険契約で認められるわけではない
- 元の受取人に支払われる可能性がある
3-1.すべての保険契約で認められるわけではない
1つ目の危険は、すべての保険契約で認められるわけではないです。
遺言書による保険金の受取人変更が法律で認められたのは、平成22年4月1日からです。
つまり、それ以前に締結した保険契約には、法律が適用されません。
平成22年4月1日よりも前に結んだ保険契約の受取人を遺言書で変更する場合は、前もって保険会社に確認しておいてください。
3-2.元の受取人に支払われる可能性がある
2つ目の危険は、元の受取人に支払われる可能性があるです。
遺言書による受取人変更を保険会社に知らせる前に、元の受取人が保険会社に請求すると保険金は支払われます。
なぜなら、保険会社は遺言書の内容を知らないので、元の受取人が正式に手続きをすれば支払うからです。
そして、元の受取人に保険金が支払われた場合、変更後の受取人は保険会社に請求することができません。
元の受取人が保険金を請求する前に、保険会社に受取人変更を通知しなければいけません。
4.受取人変更は遺言執行者に通知してもらう
遺言書による保険金の受取人変更をする場合は、遺言執行者を指定して保険会社に通知してもらってください。
- 遺言執行者
- 遺言書の内容を実行する人のこと
なぜなら、相続人が保険会社に受取人変更を通知するとは限らないからです。
わざわざ遺言書で受取人を変更するということは、変更後の受取人は相続人以外でしょう。生命保険金の受取人を相続人以外に変更することに、相続人が協力的だとは思えません。
ですので、遺言書で遺言執行者を指定しておき、生命保険会社へ通知してもらいましょう。
遺言執行者は遺言書の内容(保険金の受取人変更)を実現するため、保険会社に受取人変更を通知することができます。
5.遺言書での受取人変更は最終手段
生命保険金の受取人を遺言書で変更することはできます。
ですが、遺言書での変更は、お勧めできる方法ではありません。危険もありますし、トラブルの原因にもなります。
生前に受取人を変更できるなら、遺言書での変更を選ぶ必要がありません。
- 受取人を法律上の家族以外に変更したい
- 受取人の変更を家族に気付かれたくない
遺言書でなければ受取人変更ができない場合だけ、リスクがあることを理解して使ってください。
遺言書での生命保険金の受取人変更は最終手段です。
6.さいごに
生命保険金の受取人変更は、遺言書でもすることができます。
遺言書の記載事項は法律で決まっていますが、保険金の受取人変更については保険法で定められています。遺言書の書き方は特に決まっていないので、記載例を参考にしてください。
ただし、遺言書による受取人変更はリスクもあるので、お勧めできる方法ではありません。
あくまでも、他に方法が無い場合の最終手段です。
遺言書による受取人変更を選ぶなら、専門家からリスクについての説明を必ず受けてください。