あなたの周りに秘密証書遺言を作成した人は、ほとんどいないと思います。
なぜなら、自筆証書遺言や公正証書遺言に比べて圧倒的に作成件数が少ないからです。
ホームページ等をご覧になっている人は、多少なりとも秘密証書遺言に興味がある人だと思います。ですが、ほとんどの人は秘密証書遺言を知らないでしょう。
今回の記事では、秘密証書遺言のデメリットについて説明しているので、興味があれば参考にしてください。
1.遺言書としての効力はすべて同じ
遺言書は3種類ありますが、遺言書としての効力はすべて同じです。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
ですが、年間の作成件数には違いがあります。
公正証書遺言の作成件数は、113,137件(令和元年)です。
それに対して、秘密証書遺言の作成件数は年間100件ほどと言われています。
同じ遺言書で効力も同じなのに作成件数には大きな違いがあります。
つまり、秘密証書遺言の作成件数が少ないのは、効力以外の部分が関係しています。
2.秘密証書遺言のデメリットは5つある
秘密証書遺言の作成件数が少ない理由として、秘密証書遺言のデメリットが関係している思われます。
秘密証書遺言のデメリットとしては以下が挙げられます。
- 公証役場で手数料発生
- 証人が2人必要
- 内容は自己責任
- 紛失の恐れあり
- 検認は必要
2-1.公証役場で手数料が発生する
秘密証書遺言は自分で作成するのですが、公証役場で存在を証明してもらう必要があります。
そして、証明してもらう費用として、手数料が1万1,000円発生します。
公正証書遺言よりは安いですが、自筆証書遺言に比べると高くなります。
2-2.証人2人には遺言書の存在を知られる
秘密証書遺言の成立要件の1つとして、証人が2人必要となります。
内容を秘密にするために秘密証書遺言を作成するのですが、証人2人には遺言書の存在を知られてしまいます。
また、証人は第3者でなければならないので、用意してもらう場合には手配料も発生します。
2-3.遺言書の内容は自己責任となる
秘密証書遺言は内容を秘密にするのが特徴なので、内容を考えるのも自分となります。
したがって、遺言書の内容についても自己責任となります。
公証役場で遺言書の存在は証明してくれますが、内容については一切関与しません。
ですので、秘密証書遺言を作成していても、内容に問題があり無効になる可能性はあります。
2-4.遺言書を紛失する恐れがある
秘密証書遺言を保管しておく必要があります。
なぜなら、自筆証書遺言の法務局保管サービスや公正証書遺言と違い、秘密証書遺言には保管サービスがないからです。
せっかく秘密証書遺言を作成していても、紛失してしまうと意味がないです。
2-5.検認手続きが必要となる
秘密証書遺言は検認手続きを済ませなければ、相続手続で使用することができません。
公正証書遺言は検認手続きが不要ですし、自筆証書遺言であっても法務局で保管していれば検認は不要です。
すぐに相続手続で使用できないのは、秘密証書遺言のデメリットとなります。
3.秘密証書遺言は知名度も低い
秘密証書遺言の知名度は、自筆証書遺言や公正証書遺言に比べて圧倒的に低いです。
知名度が低い理由は複数あります。
- 専門家が説明しない
- 自分で調べるのも難しい
- 知らなければ選択肢に入らない
遺言書に関する知識を得ようとすると、専門家に相談するか書籍・ネット等で情報収集するかのどちらかだと思います。
3-1.専門家も積極的に説明しない
専門家に相談した際に、秘密証書遺言の説明を受けることは少ないでしょう。
説明の大半は、自筆証書遺言と公正証書遺言の違いについてだと思います。
専門家にすると秘密証書遺言はデメリットが多すぎて、説明するだけ時間の無駄という結論なのでしょう。
実際、私が相談を受けても秘密証書遺言を積極的に説明することはないです。
3-2.自分で情報収集するのも難しい
書籍やネットで情報収集をしたことがある人はご存知だと思いますが、秘密証書遺言は圧倒的に情報量が少ないです。
専門家のホームページ等を確認しても、秘密証書遺言をお勧めしている記事は少ないです。書籍を読んでも秘密証書遺言についての記述は一部です。
つまり、自分で情報収集をしても、秘密証書遺言に関する知識を得るのは難しいです。
3-3.知らなければ作成しようがない
遺言者(本人)が秘密証書遺言について知らなければ、当然ですが作成しようがありません。
ほとんどの人は、自筆証書遺言にするか公正証書遺言にするかで悩んでいます。秘密証書遺言は最初から選択肢に入っていません。
4.さいごに
遺言書の方式は3種類ありますが、秘密証書遺言の作成件数は圧倒的に少ないです。
理由としては、デメリットが多いのもあるのですが、相談を受ける専門家が秘密証書遺言を勧めないのも理由でしょう。
あなたが秘密証書遺言を選ぶ可能性は少ないですが、気になる部分があれば相談する際に聞いてみてください。