遺言書は全部で7種類あるのですが、一般的に利用するのは2種類だけです。
「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つについては、名前を聞いたことがある人も多いでしょう。
残りの5種類を作成することは無いと思いますが、知識として知りたい人もいます。
今回の記事では、遺言書の種類について説明しているので、興味があれば参考にしてください。
1.遺言書は大きく2つに分かれる
遺言書は大きく2つに分かれています。
- 普通方式の遺言
- 特別方式の遺言
普通方式の遺言が、自筆証書遺言や公正証書遺言のことです。
特別方式の遺言は、特別な事態を想定して決められている遺言書のことです。
そして、普通方式の遺言は3種類、特別方式の遺言は4種類と複数に分かれています。
遺言書は普通方式3種類と特別方式4種類を合わせて、全部で7種類存在します。
2.普通方式の遺言書は3種類
原則として、遺言書は普通方式で作成します。
そして、普通方式の遺言書は3種類あります。
以下は、民法の条文です。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
それぞれ簡単に説明していきます。
2-1.自筆証書遺言は自分で作成
普通方式の1つ目は、自筆証書遺言です。
自筆証書遺言は遺言者本人が、自分で作成する遺言書となります。
特徴としては、遺言者が全文・日付・氏名を自分で書く必要があります。
以下は、民法の条文です。
一つでも満たしていなければ、自筆証書遺言は無効となります。
手軽に書けるのはメリットですが、無効になる可能性も高いので対策を立てておきましょう。
また、法務局に保管していない自筆証書遺言は亡くなった後に、家庭裁判所での検認手続きが必要です。
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2-2.公正証書遺言は公証人が作成
普通方式の2つ目は、公正証書遺言です。
公正証書遺言は公証人が作成する遺言書となります。
自筆証書遺言との主な違いは、以下になります。
- 公証人が作成
- 証人が2人必要
- 原本は公証役場で保管
公正証書遺言の原本は公証役場で保管されるので、紛失や偽造の恐れはありません。
デメリットとしては、公証人手数料が発生するのと、証人を2人用意する必要があります。
関連記事を読む『公正証書遺言にするなら証人が2人以上必要になる』
3-3.秘密証書遺言は特殊な作成
普通方式の3つ目は、秘密証書遺言です。
秘密証書遺言は、遺言者本人が作成する遺言書となります。
簡単に説明すると、自分で作成した遺言書を封筒に入れて、公証役場で封筒に遺言書が入っていることを申述します。
自筆証書遺言との主な違いは、以下になります。
- 遺言書の本文は自筆でなくとも大丈夫
- 公証役場での手続きは必要
- 証人が2人必要
秘密証書遺言も自筆証書遺言と同じく、亡くなった後に家庭裁判所での検認手続きが必要です。
秘密証書遺言は普通方式の1つですが、ほとんど作成されていません。
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3.特別方式の遺言書は4種類
特別方式の遺言書は4種類あります。
- 一般危急時遺言
- 一般隔絶地遺言
- 船舶危急時遺言
- 船舶隔絶遺地言
特別方式の遺言は、特別な状態にのみ許されている作成方法です。
3-1.一般危急時遺言は病気等により死が迫っている状態
特別方式の1つ目は、一般危急時遺言(死亡の危急に迫った者の遺言)です。
病気等により死期が迫っている人が作成する遺言書となります。
以下は、民法の条文です。
一般危急時遺言の主な特徴は、以下となります。
- 証人が3人以上必要
- 証人の1人が内容を筆記
- 証人全員が署名捺印
一般危急時遺言の作成後、20日以内に家庭裁判所での確認が必要です。
3-2.一般隔絶地遺言は伝染病で隔離された場所にいる状態
特別方式の2つ目は、一般隔絶地遺言(伝染病隔離者の遺言)です。
伝染病で隔離された場所にいる人が作成する遺言書となります。
以下は、民法の条文です。
一般隔絶地遺言の主な特徴は、以下となります。
- 警察官1人と証人1人以上の立ち合いが必要
- 遺言者と立会人全員の署名捺印が必要
家庭裁判所の確認は不要ですが、検認手続きは必要となります。
3-3.船舶危急時遺言は船舶が遭難した状態
特別方式の3つ目は、船舶危急時遺言(船舶遭難者の遺言)です。
船舶が遭難したことにより、死期が迫っている人が作成する遺言書となります。
以下は、民法の条文です。
船舶危急時遺言の主な特徴は、以下になります。
- 証人2人以上の立ち合い
- 口頭で遺言できる
- 証人が筆記して署名捺印
船舶危急時遺言の作成後、遅滞なく家庭裁判所での確認が必要です。
3-4.船舶隔絶地遺言は船舶に長期間乗船している状態
特別方式の4つ目は、船舶隔絶地遺言(在船者の遺言)です。
船舶で働いている人が作成する遺言書となります。
以下は、民法の条文です。
船舶隔絶地遺言の特徴は、以下になります。
- 船長または事務員1人の立ち合い
- 証人2人以上の立ち合い
- 遺言者と立会人全員の署名捺印
家庭裁判所の確認は不要ですが、検認手続きは必要となります。
4.まとめ
今回の記事では「遺言書の種類」について説明しました。
遺言書の種類は全部で7種類あります。普通方式が3種類と特別方式が4種類です。
ただし、実際に作成する可能性が高いのは、普通方式の自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類となります。
あくまでも、法律上は7種類あるというだけです。
専門家に遺言書の相談をする際も、自筆証書遺言と公正証書遺言の説明しかされないと思います。
上記以外の5種類に興味があれば、専門家に訊ねてみましょう。