公証役場に出向くことが難しい人でも、公正証書遺言を作成することは可能です。
公証人が自宅や病院等に出張して遺言書を作成します。
ただし、出張による遺言書の作成は、遺言手数料が割り増しになります。
今回の記事では、公正証書遺言の出張による作成について説明しているので、遺言書の作成を検討しているなら参考にしてください。
目次
1.公証役場に出向くことが難しい人もいる
公正証書遺言を作成したいが、公証役場に出向くことが体力的に難しい人もいます。あるいは、すでに病院等に入院されているかもしれません。
公正証書遺言は公証役場で作成するのが一般的ですが、自宅や病院に出張してもらって作成することもできます。
ですので、公証役場に出向くのが難しいからといって、公正証書遺言の作成を諦める必要はありません。
遺言書は本人の意思を表示する重要な手段なので、公証人も出張等によりできる限り協力してくれます。
ただし、公証人が出張できる範囲は決まっているので、依頼する場合は前もって確認しておく必要があります。
2.公証人が出張できる範囲は決まっている
公証人に出張による遺言書作成を依頼する場合、前もって出張範囲を確認しておきましょう。
なぜなら、公証人は無制限に出張できるわけではなく、公証人が所属する法務局の管轄内となります。
例えば、東京法務局に所属している公証人は、東京都内であれば出張することができます。
したがって、公証役場と病院が近くても、所属する法務局(地方法務局)の管轄外であれば出張による作成は依頼できません。
まずは、出張してもらう場所と依頼する公証役場の管轄を確認しましょう。
注意公証役場に出向く場合は遠方の公証役場でも作成できます。
3.出張により遺言書を作成すると費用は増える
出張により公正証書遺言を作成すると、公証役場に出向いて作成するよりも費用は増えます。
出張依頼を検討しているなら、費用面についても知っておいてください。
公正証書遺言を出張により作成するには、以下の合計額が必要となります。
- 遺言手数料
- 病床執務加算
- 日当および交通費
各項目を説明していきます。
3-1.遺言書作成の基本となる遺言手数料
遺言書を作成する際の手数料は、公証人手数料令により定められています。
以下の表は、財産額が1億円以下の遺言手数料です。
目的の価額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5,000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 17,000円 |
1,000万円を超え3,000万円以下 | 23,000円 |
3,000万円を超え5,000万円以下 | 29,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 43,000円 |
遺言は相続人・受贈者ごとに別の法律行為になるので、個別に遺言手数料を計算します。
例えば、相続財産が5000万円で相続人が2人だとします。
【1人に5,000万円相続させるケース】
2万9,000円となります。
【2,500万円ずつ相続させるケース】
2万3,000円+2万3,000円=4万6,000円となります。
公正証書遺言に記載する財産額の合計が1億円以下の場合、遺言加算として1万1,000円が追加されます。
3-2.病床執務加算は遺言手数料の50%
公証人が出張により遺言書を作成する場合、遺言手数料に病床執務加算が追加されます。
病床執務加算は基本となる遺言手数料の10分の5(50%)です。
例えば、相続財産が5000万円で相続人が1人だとします。
遺言手数料は2万9,000円です。
2万9,000円の50%なので1万4,500円が病床執務加算となります。
2万9,000円+1万4,500円+1万1,000円=5万4,500円
遺言手数料+病床執務加算+遺言加算
遺言書に記載する財産額が増えるほど、病床執務加算も増えるようになります。
3-3.公証人が出張すると日当および交通費
公証人に出張してもらう場合、日当および交通費も支払う必要があります。
公証人の日当は2万円。ただし、4時間以内であれば1万円となります。
自宅や病院等までの交通費は実費請求となります。
4.さいごに
公正証書遺言を自宅や病院等で作成することはできます。
公証役場に出向くことが難しい人でも、遺言書の作成を諦める必要はありません。
ただし、出張により作成してもらう場合は、遺言書の作成費用は割増しです。公証人の日当や交通費も支払います。
公正証書遺言を作成したいが体力的に難しい等の事情があれば、公証人に出張してもらえるので遺言書を作成しておきましょう。