遺言書の内容に問題が無くても、後々相続人が困ってしまう場合もあります。せっかく書いた遺言書で子ども達が困ってしまうのは、あなたにとっても本意ではないはずです。
困る理由は色々ですが前もって防ぐことは可能です。遺言書をすでに書いている場合は一度確認してみてください。
5つのケースについて説明しています。
目次
- 相続税に対する配慮が無い
- 不動産しか相続させていない
- 配偶者にすべて相続させている
- 理由を書いていない
- 相続分に差がある
- 第三者に遺贈している
- 予備的遺言を書いていない
- 債務についての記載
- 借金の記載がない
- 債権者には対抗できない
- 書き漏れがある
- 遺産分割協議が別に必要
- 相続人が気づかない
- まとめ
1.相続税に対する配慮がない
相続人は財産を引き継ぐと、相続税の課税対象者となります。
相続税は原則として、亡くなってから10ヶ月以内に現金一括納付です。
1‐1.不動産しか相続させていない
特定の相続人が不動産だけ相続すると、相続税の支払いに困ることがあります。
最悪の場合は、相続した不動産を売却して、相続税を払うことになります。
どうしても不動産を相続させたい場合には、生命保険金の受取人に指定する等の対策が必要です。
1‐2.配偶者にすべて相続させている
配偶者は相続税の控除があるので、実際に相続税が発生することは少ないです。
そのため、相続税を低くするために、配偶者にすべて相続させている遺言書は多いです。
しかし、配偶者が亡くなった後の2次相続で、結果として相続税が増えることもあります。
*2次相続とは、両親が亡くなった後の相続。
相続税はトータルで計算しないと、支払う税金が増えてしまいます。
2次相続まで計算するのは、相続税専門の税理士に頼まないと難しいです。
2.理由を書いていない
遺言書の記載事項に、付言事項があります。
書いても法的拘束力はありませんが、遺言書の内容によっては書く意味があります。
遺言書に記載されている内容の理由が分からないと、相続人は困ってしまいます。
2‐1.相続分に差がある場合
自分の相続分が他の相続人より少ないと、誰しも不満に思うことがあります。
理由が聞きたくても、亡くなっているので聞くことができません。
財産の分け方に差がある場合は、付言事項で理由を書いておきましょう。
分割方法の理由を書いているだけで、不満はあっても納得する場合もあります。
2‐2.第三者に遺贈している場合
相続人が遺贈について前もって知っていたら、揉めることは少ないと思います。
けれども、まったく知らなかった場合は、財産が減ることに驚き不満を持つ相続人もいます。
遺贈が高額な場合には、遺言書の記載を疑う相続人も存在します。
下手をしたら、裁判で争うことになります。
相続人が知らない遺贈をする場合は、付言事項で理由等を書いておきましょう。
理由を書いておくことで、遺贈の手続きもスムーズにいく可能性が高くなります。
3.予備的遺言を書いていない
遺言書を書くときは、自分が亡くなった後の相続人について考えていると思います。
ところが、現実には遺言書を書いた後に、相続人の方が先に亡くなることもあります。
相続人の方が先に亡くなると、その部分の遺言は無効です。
相続財産によっては、遺産分割協議で揉める原因にもなります。
相続人の年齢にもよりますが、予備的遺言を書いておくことも必要です。
予備的遺言を書いておけば、亡くなっていても無効にはならないです。
4.債務についての記載
相続財産にはプラスの財産だけではなく、マイナス財産(借金)も含みます。
4‐1.借金の記載がない
亡くなった人の借金を、すべて把握している相続人は少ないです。
遺言書に借金の記載がないと、相続人は気づくのが遅れてしまいます。
場合によっては、相続放棄を考える必要もあります。
*相続放棄は、3ヶ月以内の期間制限があります。
(相続放棄の手続き)はこちらで詳しく説明しています。
遺言書の財産目録には、借金についても記載しておきましょう。
4‐2.債権者には対抗できない
プラスの財産は遺言書で、帰属先を決めることができます。
一方、マイナスの財産(借金)は遺言書で帰属先を決めていても、債権者には対抗することができません。
債権者は相続人に対して、法定相続分で請求することができます。
借金がある場合は、相続人が請求されても困らないようにしておくべきです。
5.書き漏れがある
遺言書に記載されていない財産についてです。
5‐1.遺産分割協議が別に必要
遺言書に記載されていない財産については、別に遺産分割協議が必要になります。
書き漏れは意外と多いのですが、防ぐ記載方法もあります。
- 記載されていない財産は、すべて〇〇に相続させる
- 上記以外の財産は、すべて〇〇に相続させる
5‐2.相続人が気づかない
遺言書に記載されていない財産について、相続人が気づかない可能性もあります。
銀行口座を複数開設している人は多いです。
最近はネット銀行等もあるので、相続人も気づきにくいです。
遺言書を書く際は、今一度自分の財産の棚卸をしてみてください。
6.まとめ
相続人が困る遺言書について書いてみました。
今回、例示した遺言書は、あと少しだけ記載が足りないので困るケースです。
基本的な内容に問題があるわけではないです。
遺言書を書く際は、基本ルールだけではなく、後一歩踏み込んで考えると良いと思います。
自分で書いた遺言書を、第三者に見てもらうと気づくこともあります。
相続対策でもセカンドオピニオンは役立ちます。