複数人の遺言執行者を選ぶなら任務執行についても定めておく

遺言執行者を複数人
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遺言執行者を複数人選ぶことはできます。

法律上、遺言執行者の人数に決まりはないので、候補者が2人以上いるなら全員指定することも可能です。

ただし、遺言書で遺言執行について決めておかなければ、遺言執行がスムーズに進まない可能性があります。

今回の記事では、遺言執行者を複数人選ぶことについて説明しているので、遺言書を作成する際の参考にしてください。

1.遺言執行者の人数に決まりはない

遺言執行者は1人だけだと勘違いしやすいですが、遺言執行者の人数に決まりはありません。

法律上でも、複数人を指定できると明記されています。

(遺言執行者の指定)
第千六条 遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。

出典:e-Govウェブサイト(民法1006条)

遺言書で複数人の遺言執行者を指定することもできますし、指定を第3者に委託することもできます。

遺言執行者の候補が2人以上いるなら、すべての人を遺言執行者に指定することも可能です。

ただし、遺言執行者を複数人指定するとデメリットもあります。

2.遺言執行者が複数人なら任務執行に注意

遺言執行者が複数人存在するなら、任務執行に注意しましょう。

遺言執行者が1人の場合と複数人の場合では、任務の執行に違いがあります。

2-1.遺言執行者が複数人なら過半数で決める

原則として、遺言執行者が複数人なら、任務の執行は過半数で決めます。

(遺言執行者が数人ある場合の任務の執行)
第千十七条 遺言執行者が数人ある場合には、その任務の執行は、過半数で決する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

出典:e-Govウェブサイト(民法1017条)

例えば、遺言執行者が3人なら、遺言執行をするには2人以上の賛成が必要です。

気を付ける点としては、遺言執行者が偶数人だと可否同数になって、遺言執行が進まなくなる可能性があります。

2-2.遺言書で任務の執行について決める

遺言者は遺言書で、遺言執行者の任務執行について決めることができます。

(遺言執行者が数人ある場合の任務の執行)
第千十七条 遺言執行者が数人ある場合には、その任務の執行は、過半数で決する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

出典:e-Govウェブサイト(民法1017条)

遺言書で過半数以外の方法を決めることが可能です。

具体的には、以下のような方法があります。

  • それぞれ単独で遺言執行できる
  • 遺言執行者の役割を分担する

遺言執行者が複数人でも単独で執行できる

遺言執行者が複数人いる場合でも、それぞれ単独で遺言執行ができるように記載します。

遺言書で単独執行にできる

それぞれが単独で遺言執行できるなら、可否同数等で遺言執行が止まることもありません。

遺言執行者の役割を分担して定める

遺言執行者が複数人いる場合、それぞれの役割を分担して定めます。

例えば、遺言執行者がAとBの2人だとします。

遺言執行者Aは、不動産に関する遺言執行を行う。
遺言執行者Bは、預貯金に関する遺言執行を行う。

遺言執行者の役割分担

上記のように、役割を分担をしておけば、遺言執行者が複数人いても単独でそれぞれ遺言執行を行います。

2-3.保存行為は単独ですることができる

遺言執行者が複数人いる場合でも、保存行為については単独ですることができます。

(遺言執行者が数人ある場合の任務の執行)
第千十七条 (省略)
2 各遺言執行者は、前項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。

出典:e-Govウェブサイト(民法1017条2項)

保存行為とは財産の現状を維持する行為のことで、各遺言執行者が単独ですることが可能です。

3.遺言執行者の追加選任も可能

遺言書で複数人指定するだけでなく、相続開始後に遺言執行者の追加選任をすることも可能です。

一般的には、遺言執行者がいれば、追加で選任申立てをすることはありません。

ですが、以下のようなケースでは追加選任することがあります。

  • 遺言執行者が偶数人で過半数にならない
  • 遺言執行者を定めていない部分がある

3-1.遺言執行者が偶数人で過半数にならない

原則として、遺言執行者が複数人いる場合、任務の執行は過半数で決めます。

ですが、遺言執行者が偶数人だと、可否同数で遺言執行が進まない場合があります。

例えば、遺言執行者が2人だとします。過半数は2なので、2人の意見が一致しなければ遺言執行はできません。

可否同数なら遺言執行できない

遺言執行を進めるためにも、家庭裁判所に追加で選任申立てができます。
*遺言執行者を奇数人にするため。

3-2.遺言執行者を定めていない部分がある

遺言書で遺言執行者の役割を分担している場合、以下のような事態が考えられます。

  • 特定の財産について遺言執行者を定めていない
  • 遺言執行者がいなくなった部分がある

特定の財産について遺言執行者を定めていない

例えば、遺言執行者を2人指定して、それぞれ役割を分担して定めていたとします。

遺言執行者Aは、不動産についてのみ権限を有する。
遺言執行者Bは、預貯金についてのみ権限を有する。

財産が不動産と預貯金だけであれば問題ないですが、その他にも財産があれば遺言執行者がいないことになります。

その他の財産について遺言執行をしてもらうために、追加で選任申立てをすることができます。

遺言執行者がいなくなった部分がある

遺言執行者を複数人指定して、役割を分担して定めていたとします。

ですが、遺言執行者が辞退や死亡することもあるので、分担していた部分の遺言執行者がいなくなることもあります。

いなくなった部分の遺言執行をしてもらうために、追加で選任申立てをすることができます。

4.さいごに

遺言執行者を複数人選ぶことはできます。法律上、遺言執行者の人数に決まりはありません。

ただし、遺言執行者を複数人指定する場合は、遺言書で遺言執行について決めておいてください。何も決めておかなければ、遺言執行は過半数で決めることになります。

遺言執行者が選任されている場合でも、理由があれば追加選任することも可能です。

遺言執行者を複数人選ぶ場合は、メリットとデメリットを確認しておいてください。