遺言執行者を複数人選ぶことはできます。
法律上、遺言執行者の人数に決まりはないので、候補者が2人以上いるなら全員指定することも可能です。
ただし、遺言書で遺言執行について決めておかなければ、遺言執行がスムーズに進まない可能性があります。
今回の記事では、遺言執行者を複数人選ぶことについて説明しているので、遺言書を作成する際の参考にしてください。
目次
1.遺言執行者の人数に決まりはない
遺言執行者は1人だけだと勘違いしやすいですが、遺言執行者の人数に決まりはありません。
法律上でも、複数人を指定できると明記されています。
遺言書で複数人の遺言執行者を指定することもできますし、指定を第3者に委託することもできます。
遺言執行者の候補が2人以上いるなら、すべての人を遺言執行者に指定することも可能です。
ただし、遺言執行者を複数人指定するとデメリットもあります。
2.遺言執行者が複数人なら任務執行に注意
遺言執行者が複数人存在するなら、任務執行に注意しましょう。
遺言執行者が1人の場合と複数人の場合では、任務の執行に違いがあります。
2-1.遺言執行者が複数人なら過半数で決める
原則として、遺言執行者が複数人なら、任務の執行は過半数で決めます。
例えば、遺言執行者が3人なら、遺言執行をするには2人以上の賛成が必要です。
気を付ける点としては、遺言執行者が偶数人だと可否同数になって、遺言執行が進まなくなる可能性があります。
2-2.遺言書で任務の執行について決める
遺言者は遺言書で、遺言執行者の任務執行について決めることができます。
遺言書で過半数以外の方法を決めることが可能です。
具体的には、以下のような方法があります。
- それぞれ単独で遺言執行できる
- 遺言執行者の役割を分担する
遺言執行者が複数人でも単独で執行できる
遺言執行者が複数人いる場合でも、それぞれ単独で遺言執行ができるように記載します。
それぞれが単独で遺言執行できるなら、可否同数等で遺言執行が止まることもありません。
遺言執行者の役割を分担して定める
遺言執行者が複数人いる場合、それぞれの役割を分担して定めます。
例えば、遺言執行者がAとBの2人だとします。
遺言執行者Aは、不動産に関する遺言執行を行う。
遺言執行者Bは、預貯金に関する遺言執行を行う。
上記のように、役割を分担をしておけば、遺言執行者が複数人いても単独でそれぞれ遺言執行を行います。
2-3.保存行為は単独ですることができる
遺言執行者が複数人いる場合でも、保存行為については単独ですることができます。
保存行為とは財産の現状を維持する行為のことで、各遺言執行者が単独ですることが可能です。
3.遺言執行者の追加選任も可能
遺言書で複数人指定するだけでなく、相続開始後に遺言執行者の追加選任をすることも可能です。
一般的には、遺言執行者がいれば、追加で選任申立てをすることはありません。
ですが、以下のようなケースでは追加選任することがあります。
- 遺言執行者が偶数人で過半数にならない
- 遺言執行者を定めていない部分がある
3-1.遺言執行者が偶数人で過半数にならない
原則として、遺言執行者が複数人いる場合、任務の執行は過半数で決めます。
ですが、遺言執行者が偶数人だと、可否同数で遺言執行が進まない場合があります。
例えば、遺言執行者が2人だとします。過半数は2なので、2人の意見が一致しなければ遺言執行はできません。
遺言執行を進めるためにも、家庭裁判所に追加で選任申立てができます。
*遺言執行者を奇数人にするため。
関連記事を読む『遺言執行者の選任申立てを家庭裁判所にすることもできる』
3-2.遺言執行者を定めていない部分がある
遺言書で遺言執行者の役割を分担している場合、以下のような事態が考えられます。
- 特定の財産について遺言執行者を定めていない
- 遺言執行者がいなくなった部分がある
特定の財産について遺言執行者を定めていない
例えば、遺言執行者を2人指定して、それぞれ役割を分担して定めていたとします。
遺言執行者Aは、不動産についてのみ権限を有する。
遺言執行者Bは、預貯金についてのみ権限を有する。
財産が不動産と預貯金だけであれば問題ないですが、その他にも財産があれば遺言執行者がいないことになります。
その他の財産について遺言執行をしてもらうために、追加で選任申立てをすることができます。
遺言執行者がいなくなった部分がある
遺言執行者を複数人指定して、役割を分担して定めていたとします。
ですが、遺言執行者が辞退や死亡することもあるので、分担していた部分の遺言執行者がいなくなることもあります。
いなくなった部分の遺言執行をしてもらうために、追加で選任申立てをすることができます。
関連記事を読む『遺言執行者が死亡することは珍しくない』
4.さいごに
遺言執行者を複数人選ぶことはできます。法律上、遺言執行者の人数に決まりはありません。
ただし、遺言執行者を複数人指定する場合は、遺言書で遺言執行について決めておいてください。何も決めておかなければ、遺言執行は過半数で決めることになります。
遺言執行者が選任されている場合でも、理由があれば追加選任することも可能です。
遺言執行者を複数人選ぶ場合は、メリットとデメリットを確認しておいてください。