相続人のために書いた遺言書で揉めることは少なくありません。相続対策の為に書いた遺言書が揉め事を引き起こします。
なぜ、遺言書で揉めるのでしょうか。揉める原因は2つに分けることができます。
- 内容に問題がある
- 書いた後の行動に問題がある
揉める遺言書を、5つ説明しています。
それぞれの対策も書いていますので、参考にしてください。
目次
- 内容に問題がある遺言書
- 遺留分を考慮せずに書いた遺言書
- 家族に対する不満を書いた遺言書
- あいまいな表現の遺言書
- 書いた後の行動に問題がある遺言書
- 遺言書の内容と家族に話した内容が違う
- 古い遺言書を処分していない
- まとめ
1.内容に問題がある
遺言書の内容に、問題がある場合です。
1‐1.遺留分を考慮せずに書いた遺言書
遺言書で揉める理由の一つに、遺留分があります。
遺言書の内容は自由に書いていいのですが、相続人には遺留分があります。
遺留分とは相続人に保障された、最低限の相続分です。
親だけが相続人の場合は全体の3分の1が、それ以外の場合は全体の2分の1が遺留分になります。
ちなみに、兄弟姉妹には遺留分がありません。
生前に遺言書の内容について、相続人と話し合いが済んでいるのなら、遺留分で揉めることは少ないでしょう。
けれども、まったく話していない場合は、遺留分侵害額請求の恐れがあります。
対策
遺留分に対しては、2通りの備えがあります。
- 遺言書を書く際に、遺留分を侵害しないように書く。
遺留分を侵害していない限りは、内容に納得するしかないです。 - 遺留分侵害額請求をされても大丈夫なように、現金を用意しておく。
侵害請求は金銭請求なので、払えるように準備しておけば問題ありません。
(遺留分について)はこちらで詳しく説明しています。
1‐2.家族に対する不満を書いた遺言書
付言事項に分割理由を書くことは、揉め事を防ぐためにも重要です。
しかしながら、付言事項に家族への不満を書いてしまうと、逆効果になります。
不満には、2種類あります。
直接的な不満
直接的な不満の代表例は、相続分を減らした理由を書くことです。
「次女は親の面倒を見なかったので、相続分を減らしている」
付言事項にマイナスの理由は書くべきではないです。
相続人が反論したくても、亡くなっているので不満だけが溜まってしまいます。
遺言書の付言事項には、良いことだけ書くべきです。
間接的な不満
直接的な不満でなくても、揉める場合もあります。
間接的に不満を書いたと、勘違いされやすい書き方です。
長男・次男共に、配偶者がいる場合です。
「長男の嫁は親の面倒を見てくれたので、長男の相続分を増やしている」
次男の嫁に対する記載は無し。
次男の嫁が悪いように見えるので、避けるべき表現です。
褒める場合は次男の嫁にも配慮が必要です。
1‐3.あいまいな表現の遺言書
遺言書を読んだときに、複数の解釈ができる文言を書くと揉めます。
自分に有利なように、解釈する相続人もいます。
例として「一戸建て」と「マンション」と「土地」を持っていた場合の遺言書。
「家は長男に相続させる」
建物が複数あると、全部なのか特定の不動産なのか分からない。
「マンションは次男に任せる」
マンション管理なのか、相続なのか分からない。
「土地は子ども達に相続させる」
土地を子ども達で、どのように相続するのか分からない。
対策
遺言書は誰が読んでも、同じ解釈ができる文章で書く必要があります。
あいまいな表現では、相続人が混乱します。
不動産であれば、登記簿の文言どおりに記載します。
相続させる場合は、「相続」という言葉を使います。
共有させる場合は割合も記載します。
2.書いた後の行動に問題がある
遺言書を書いていても、その後の行動に問題があると揉めてしまいます。
2‐1.遺言書の内容と家族に話した内容が違う
遺言書を書いた後に、家族に違う内容を話す人がいます。
遺言書が聞いていた内容と違うと、それだけで揉める可能性が増えます。
例えば、全員平等に分けてあると聞いていたが、実際に遺言書を見たら1人が全部相続することになっていた。
下手をすると、遺言書が本物か疑われて、裁判になることもあります。
対策
対策は2つです。
- 遺言書の内容は話さない。
- 遺言書の内容を話すのであれば、可能な限り真実に近いものにする。
2‐2.古い遺言書を処分していない
遺言書は何回でも書き直すことができます。古い遺言書を見ながら新しい遺言書を書くこともあります。
ただし、古い遺言書は必ず処分してください。
処分しなかったことが原因で、余計な手間やトラブルが発生します。
手続き終了後に、別の遺言書が見つかる
遺言書を相続人が見つけて、遺言書通りに相続した後で、別の遺言書が見つかることがあります。
後から見つかった遺言書の方が新しいと、相続手続をやり直すことになります。
*遺言書は作成日の新しい方が有効です。
内容の違いすぎる遺言書が見つかる
色々な事情で遺言書の内容を、大幅に変更することもあると思います。
ただし、変更したときは、確実に処分してください。
なぜなら、書き直した遺言書の内容が前回と違いすぎると、それだけで新しい遺言書が疑われます。
*不利に変更された相続人が、有利に変更されている相続人を疑います。
対策
対策は一つだけです、古い遺言書は処分する。
自筆証書遺言の場合は、破って処分してください。
公正証書遺言の場合は、原本は公証役場で保管されているので、変更する場合は再度手続きをしてください。
3.まとめ
5つの揉める内容や行動について説明しました。
遺言書を書くことは、相続において非常に重要なことです。トラブルも防げますし、手続きも早くなります。
しかしながら、せっかく書いた遺言書で揉めることがあっては本末転倒です。
記事に書いてあることは、過去に揉めた遺言書です。過去の事例を反面教師として正しい遺言書を書きましょう。
自分で遺言書を書くことは問題ありません。
ただし、揉める遺言書の大半は自分で書いた遺言書です。
遺言書を書いた後に、問題がないかの確認だけでも専門家に見てもらってください。
セカンドオピニオンは相続対策でも役立ちます。