相続税対策で養子縁組を結ぶことは、資産が多い人にとってはメリットがあります。では、同性カップルが相続税対策で、養子縁組を結ぶメリットはあるのでしょうか。
結論としては、条件付きですが得することもあります。一方で、養子縁組をしたせいで損することもあります。
損をする場合について、具体的に計算してみましょう。
目次
- 相続人の地位を得る
- 養親・養子の相続順位
- 養子縁組を結ぶメリット
- 基礎控除額が減る可能性
- 具体的に計算
- 生命保険金を受け取った場合
- さいごに
1.相続人の地位を得る
同性カップルが養子縁組をすることにより、養親または養子として相続人の地位を得ることができます。
1‐1.養親・養子の相続順位
養子は実子と同じく第1順位の相続人です。
ですので、同性パートナーは確実に相続人となります。
養親は実親と同じ第2順位の相続人です。
実子がいなければ相続人になることができます。
1‐2.養子縁組を結ぶメリット
同性パートナーの相続人になることで、相続税においては次のようなメリットが考えられます。
- 2割加算の対象ではない
- 法定相続人の人数に含む
- 生命保険金の非課税枠
- 小規模宅地の特例
①2割加算の対象ではない
養子縁組をしたことにより、相続税の2割加算の対象ではなくなります。通常は同性パートナーに相続税が発生すると2割加算されて課税されます。
②法定相続人の人数に含む
相続税の基礎控除額や生命保険金の非課税枠を計算する際の、法定相続人の人数に同性パートナーも含まれます。
③生命保険金の非課税枠
生命保険金を受け取った際の相続税の計算で、同性パートナーにも非課税枠が適用されます。
生命保険金の非課税枠が適用されることにより、相続税が発生する可能性が低くなります。
④小規模宅地の特例
相続財産に土地がある場合、条件を満たすことで小規模宅地の特例が使えます。
2.基礎控除額が減る可能性
一般的に相続税対策のために養子縁組を使うのは、法定相続人の数を増やすのが目的です。
なぜなら、基礎控除額を増やすことができるからです。
- 相続税の基礎控除額
- 3,000万円+600万円×法定相続人の数
ただし、同性カップルの養子縁組では、基礎控除額が減る可能性があります。
なぜかというと、養子縁組をして相続人になると、兄弟姉妹(両親)が存在した場合には、法定相続人の数が減ることもあるからです。
養子の方が兄弟姉妹より相続順位が高いので、養子縁組により法定相続人が変更します。
したがって、法定相続人の数も変更となります。
2‐1.具体的に計算
法定相続人の数が変更することにより、相続税がどれぐらい変わるのか計算してみましょう。
(前提条件)
相続財産は5,000万円で兄弟姉妹が2人。
全額を同性パートナーが取得。
①養子縁組をしなかった場合
(法定相続人は2人)
5,000万円-4,200万円=800万円(課税価額)
800万円を2人で割ると400万円
400万円×10%=40万円
400万円×10%=40万円
40万円+40万円=80万円(相続税の全体額)
80万円×1.2倍=96万円(2割加算)
相続税は96万円
②養子縁組をした場合
(法定相続人は1人)
5,000万円-3,600万円=1,400万円(課税価額)
1,400万円×15%-50万円=160万円
相続税は160万円
養子縁組をしない方が相続税は低かったです。
2‐2.生命保険金を受け取った場合
生命保険金を受け取った場合の計算もしてみましょう。
養子縁組をした場合です。
*養子縁組をしなかった場合の相続税は同じです。
(5000万円の内訳)
生命保険金が1,000万円で、その他が4,000万円。
生命保険金は500万円が非課税になります。
*500万円×法定相続人の数(1人)=500万円
4,500万円-3,600万円=900万円(課税価額)
900万円×10%=90万円
相続税は90万円
生命保険金を受け取っている場合は、同性カップルで養子縁組をすると相続税は少しだけ低くなりました。
3.さいごに
相続税の控除で優遇されているのは配偶者です。養親または養子では、そこまでの減額にはならないです。
ただし、同性パートナーの法定相続人が0人の場合は、養子縁組をすると相続税の基礎控除額が増えます。
あるいは、相続財産に土地がある場合は、小規模宅地の特例に該当する可能性もあります。建物に関しても不動産取得税や登録免許税でメリットがあります。
生命保険金の非課税枠は基本的に500万円です。養親として同性パートナーの実親と法定相続人になる場合は、1,000万円以上になることもあります。
相続税は相続財産が基礎控除額を超えていなければ、同性パートナーが全額取得しても発生しません。
ですので、相続財産に不動産が無ければ、相続税が発生する可能性は低いです。
*生命保険金を高額にしている場合は別です。
『同性パートナーに相続税が発生する可能性|2つの理由から考える』もご覧ください。
相続税対策のために養子縁組を使う場合は、必ず相続専門の税理士等に相談してください。