養子は基礎控除を計算する際に人数制限があるので注意

養子と基礎控除
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亡くなった人に養子がいる場合、相続税の基礎控除に注意してください。

なぜなら、計算する際に人数制限があるからです。

  • 実子ありなら養子は1人まで
  • 実子なしなら養子は2人まで

上記の人数までしか養子は含まれないので、基礎控除の額を間違えないように気を付けてください。

今回の記事では、養子と基礎控除について説明しているので、相続税を計算する際の参考にしてください。

目次

1.基礎控除では養子に人数制限がある

基礎控除の計算では養子に人数制限がある

亡くなった人に養子がいる場合、基礎控除の計算には注意してください。

なぜなら、実子の有無によって、計算に含める養子の人数に違いがあるからです。

以下は、相続税法の条文。

(遺産に係る基礎控除)
第十五条(省略)
2 前項の相続人の数は、同項に規定する被相続人の民法第五編第二章(相続人)の規定による相続人の数(当該被相続人に養子がある場合の当該相続人の数に算入する当該被相続人の養子の数は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める養子の数に限るものとし、相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人の数とする。)とする。
一 当該被相続人に実子がある場合又は当該被相続人に実子がなく、養子の数が一人である場合 一人
二 当該被相続人に実子がなく、養子の数が二人以上である場合 二人
出典:e-Govウェブサイト(相続税法15条2項)
  • 実子ありなら養子は1人まで
  • 実子なしなら養子は2人まで

民法上は養子の人数に制限はありませんが、相続税の計算上は制限があります。

1-1.実子がいるなら養子は1人まで

実子がいるなら養子は1人まで計算に含む

亡くなった人に実子がいる場合、養子は1人まで計算に含みます。

例えば、亡くなった人の実子が1人の場合。
※配偶者はいない。

実子養子計算控除額
1124,200万円
1224,200万円
1324,200万円
1424,200万円
基礎控除と相続人の人数

養子が何人であっても、計算上は1人までしか含みません。したがって、基礎控除の額も増えないです。

1-2.実子がいないなら養子は2人まで

実子がいないなら養子は2人まで計算に含む

亡くなった人に実子がいない場合、養子は2人まで計算に含みます。

以下は、養子の人数による比較表です。
※配偶者はいない。

実子養子計算控除額
0113,600万円
0224,200万円
0324,200万円
0424,200万円
基礎控除と相続人の人数

養子が何人であっても、計算上は2人までしか含みません。養子が3人以上でも基礎控除の額は増えないので、相続税を計算する際は注意してください。

2.基礎控除では実子として扱う養子

基礎控除の計算では実子として扱う養子

亡くなった人の養子であっても、基礎控除の計算では実子として扱うケースがあります。

  • 特別養子縁組による養子
  • 配偶者の連れ子が養子
  • 代襲相続人(孫や曾孫)が養子

上記のケースでは、養子を実子として基礎控除を計算します。

2-1.特別養子縁組による養子

特別養子は基礎控除で実子扱い

亡くなった人と養子が特別養子縁組であれば、基礎控除の計算では実子として扱います。

特別養子縁組

養子と実親の親子関係を解消して、養親と親子関係を結ぶ制度

特別養子縁組による養子は実子と変わらないので、基礎控除でも実子として計算します。

実子特別養子計算控除額
1124,200万円
1234,800万円
1345,400万円
基礎控除と相続人の人数

特別養子と普通養子は、基礎控除以外でも違う部分が多いので、以下の記事も参考にしてください。

2-2.配偶者の連れ子が養子

配偶者の連れ子養子は基礎控除で実子扱い

亡くなった人の養子が配偶者の連れ子(実子)であれば、基礎控除の計算では実子として扱います。

実子連れ子
養子
計算控除額
1124,200万円
1234,800万円
1345,400万円
基礎控除と相続人の人数

連れ子養子の注意点としては、勘違いによる縁組届の届出忘れが挙げられます。

配偶者と婚姻すれば自動的に養子になると、勘違いしている人は多いです。婚姻届とは別に縁組届を届出しなければ、養子にはなりません。

縁組届を出していなければ、相続人ではないので注意してください。

2-3.代襲相続人(孫や曾孫)が養子

代襲相続人を養子にすると基礎控除では実子として扱う

亡くなった人の孫や曾孫が代襲相続人であり、かつ、養子になっていると、基礎控除の計算では実子として扱います。

ただし、2人ではなく1人として計算します。

以下は、国税庁のウェブサイトです。

(代襲相続人が被相続人の養子である場合の相続人の数)
15-4 相続人のうちに代襲相続人であり、かつ、被相続人の養子となっている者がある場合の法第15条第2項に規定する相続人の数については、その者は実子1人として計算するのであるから留意する。
出典:国税庁ウェブサイト(第15条《遺産に係る基礎控除》関係)

代襲相続人である孫や曾孫を養子にしても、相続税の基礎控除は増えないです。

ちなみに、基礎控除の計算では1人として扱うだけで、相続人としては2つの立場で相続分を有しています。遺産分割協議等で相続分を計算する際は、勘違いしないように注意してください。

3.基礎控除の計算から養子を除外

不当な養子縁組は相続税から除外

原則として、相続人に養子がいる場合、1人または2人を基礎控除の計算に含みます。

ただし、相続税を不当に減少させる目的で、養子縁組を利用していると判断された場合は別です。

3-1.不当な節税だと判断された場合

養子縁組が不当な節税目的だと判断された場合、税務署長は養子を含めないで基礎控除を計算できます。

以下は、相続税法の条文です。

(相続人の数に算入される養子の数の否認)
第六十三条 第十五条第二項各号に掲げる場合において当該各号に定める養子の数を同項の相続人の数に算入することが、相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合においては、税務署長は、相続税についての更正又は決定に際し、税務署長の認めるところにより、当該養子の数を当該相続人の数に算入しないで相続税の課税価格(第十九条又は第二十一条の十四から第二十一条の十八までの規定の適用がある場合には、これらの規定により相続税の課税価格とみなされた金額)及び相続税額を計算することができる。
出典:e-Govウェブサイト(相続税法63条)

例えば、相続人が実子2人と養子1人だった場合。

正当不当
法律上33
計算上32
控除額4,800万円4,200万円
基礎控除額

法律上は相続人3人ですが、計算上は相続人2人になります。

相続税を不当に安くする目的で養子縁組を利用すると、計算から除外される可能性があるので気を付けてください。

3-2.節税目的でも当然に無効とはならない

養子縁組が節税目的でも当然に無効ではない

節税目的で養子縁組をしたとしても、当然に無効とはなりません。

以下は、最高裁の判例です。

専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。
出典:裁判所ウェブサイト(平成29年1月31日最高裁判所第三小法廷判決)

当事者間に縁組をする意思があれば、節税目的であっても養子縁組は有効です。

もちろん、税務署が不当だと判断すれば、相続税の計算からは除外されます。

あくまでも、上記の裁判で判断しているのは、養子縁組は有効という点だけなので、勘違いしないように注意してください。

4.養子が相続放棄しても基礎控除の額は同じ

相続放棄があっても基礎控除は変わらない

養子が相続放棄すると、初めから相続人ではなかったとみなされます。

ただし、基礎控除の計算では、相続放棄はなかったものとして扱われます。

【例題】

相続人が実子2人・養子1人の合計3人だった場合です。

養子が相続放棄すると、相続人は2人となります。

ですが、基礎控除の計算上は3人です。

3,000万円+600万円×3=4,800万円

亡くなった人の養子が相続放棄しても、基礎控除の額には影響がありません。

相続放棄と基礎控除については、下記の記事で詳しく説明しています。

まとめ

今回の記事では「養子と基礎控除」について説明しました。

亡くなった人に養子がいる場合、基礎控除の計算では人数に制限がかかります。

  • 実子ありなら養子は1人まで
  • 実子なしなら養子は2人まで

養子が何人であっても、計算上は上記の人数までとなります。

ただし、以下に該当する養子は、基礎控除の計算上は実子です。

  • 特別養子縁組による養子
  • 配偶者の連れ子が養子
  • 代襲相続人(孫や曾孫)が養子

養子の人数を間違えると、基礎控除の額も間違えるので、しっかりと確認しておいてください。

相続税を不当に減少させる目的で養子縁組すると、相続税の計算から養子は除外されるので注意してください。

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