特別代理人に関する民法の条文【826条と860条】

特別代理人に関する民法の条文
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民法の条文には、特別代理人を選任するケースも記載されています。

  • 826条|親権者と未成年者の利益相反行為
  • 860条|後見人と被後見人の利益相反行為

利益相反行為に該当する場合、親権者や後見人は特別代理人を選任する必要があります。

特別代理人に関する記載は826条と860条だけなので、一度は民法を確認しておいてください。

目次

未成年者の特別代理人(民法826条)

民法826条

民法826条では、未成年者の特別代理人について定めています。

以下は、民法の条文です。

(利益相反行為)
第八百二十六条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
出典:e-Govウェブサイト(民法826条)
  • 第1項|親権者と未成年者の利益相反行為
  • 第2項|未成年者同士の利益相反行為

どちらのケースであっても、利益相反行為をするには特別代理人が必要です。

親権者と未成年者の利益相反行為(民法826条1項)

民法826条1項

民法826条1項では、親権者と未成年者の利益相反行為について定めています。

以下は、主な利益相反行為です。

  • 親権者と未成年者で遺産分割協議
  • 親権者と未成年者が相続人で未成年者だけ相続放棄
  • 親権者の債務を担保するため未成年者の不動産に抵当権設定

上記の行為をするには、未成年者に特別代理人を選任する必要があります。

未成年者同士の利益相反行為(民法826条2項)

民法826条2項

民法826条2項では、未成年者同士の利益相反行為について定めています。

以下は、主な利益相反行為です。

  • 複数の未成年者が遺産分割協議
  • 一部の未成年者だけ相続放棄

上記の行為をするには、一方の未成年者に特別代理人を選任する必要があります。

被後見人の特別代理人(民法860条)

民法860条

民法826条では、被後見人の特別代理人について定めています。

以下は、民法の条文です。

(利益相反行為)
第八百六十条 第八百二十六条の規定は、後見人について準用する。ただし、後見監督人がある場合は、この限りでない。
出典:e-Govウェブサイト(民法860条)

民法826条を後見人について準用すると、以下のようになります。

後見人と被後見人との利益が相反する行為について、後見人は、被後見人のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

後見人が数人の被後見人に対して後見を行う場合において、その一人と他の被後見人との利益が相反する行為については、後見人は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

以下は、被後見人が関係する主な利益相反行為です。

  • 後見人と被後見人で遺産分割協議
  • 被後見人と被後見人で遺産分割協議
  • 後見人と被後見人が相続人で被後見人だけ相続放棄
  • 後見人の債務を担保するため被後見人の不動産に抵当権設定
  • 後見人が被後見人(15歳未満)と養子縁組

上記の行為をするには、被後見人に特別代理人を選任する必要があります。

後見監督人がいるなら不要(民法860条但し書き)

民法860条但し書き

民法860条但し書きでは、後見監督人がいるなら民法826条を準用しないと定めています。

なぜなら、後見人と被後見人が利益相反行為に該当する場合、後見監督人が被後見人を代理するからです。

以下は、民法の条文です。

第八百五十一条 後見監督人の職務は、次のとおりとする。
(省略)
四 後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること。
出典:e-Govウェブサイト(民法851条4号)

後見監督人が選任されている場合、特別代理人を選任する必要はありません。

ちなみに、後見によって後見監督人の名称が違うので注意してください。

後見人後見監督人
成年後見人成年後見監督人
任意後見人任意後見監督人
未成年後見人未成年後見監督人
後見人と後見監督人

家事事件手続法にも特別代理人の条文

家事事件手続法にも、特別代理人の定めがあります。

以下は、家事事件手続法の条文です。

(特別代理人)
第十九条 裁判長は、未成年者又は成年被後見人について、法定代理人がない場合又は法定代理人が代理権を行うことができない場合において、家事事件の手続が遅滞することにより損害が生ずるおそれがあるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、特別代理人を選任することができる。
2 特別代理人の選任の裁判は、疎明に基づいてする。
3 裁判所は、いつでも特別代理人を改任することができる。
4 特別代理人が手続行為をするには、後見人と同一の授権がなければならない。
5 第一項の申立てを却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
出典:e-Govウェブサイト(家事事件手続法19条)

法定代理人(親権者や後見人)が代理権を行使できない場合(利益相反行為)、家庭裁判所は利害関係人の申立て又は職権で特別代理人を選任できます。

4.まとめ

今回の記事では「特別代理人に関する民法の条文」について説明しました。

民法には特別代理人に関する条文が2つあります。

  • 民法826条|親権者と未成年者
  • 民法860条|後見人と被後見人

民法826条では、親権者と未成年者が利益相反行為に該当する場合、特別代理人を選任するよう定めています。

民法860条では、後見人と被後見人が利益相反行為に該当する場合、特別代理人を選任するよう定めています。ただし、後見監督人が選任されている場合は除きます。

特別代理人に関する民法の条文は2つだけなので、しっかりと確認しておいてください。

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