農地の相続登記|名義を変えるのに農業委員会の許可は不要

農地の相続登記
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農地の相続登記を申請したいが、何か特殊な手続きが必要なのではと不安に思う方も多いです。

結論から言うと、農地の相続登記であっても、建物や宅地と同じ方法で進められます。農業委員会の許可も不要です。

ただし、実務上の細かい注意点はいくつかあります。

  • 農地が複数存在する
  • 現況が農地と違う
  • 農地の名義が被相続人と違う
  • 農地が共有になっている

今回の記事では、農地の相続登記について基本的な内容から、細かい実務上の注意点まで説明しているので、しっかりと確認しておいてください。

目次

1.農地の相続登記も他の不動産と変わらない

相続登記の手続きは農地であっても変わらない

亡くなった人の不動産が農地であっても、相続登記は他の不動産と変わりません。

相続登記の方法や必要な書類も、建物や宅地と同じなので安心してください。

1-1.相続登記の方法は地目に関わらず共通

相続登記の方法は不動産の地目に関わらず共通です。宅地、農地、山林に関わらず同じになります。

相続登記地目を
問わず共通
申請先不動産の所在地を
管轄する法務局
提出方法窓口・郵送
どちらも可能
登録免許税の
税率
0.4%

不動産が農地だからといって違う部分はありません。宅地や建物と同じように相続登記を申請できます。

申請書のひな形も同じなので、不動産の地目だけが違うという認識で問題ありません。

相続登記の方法は農地も農地以外も同じなので、特に気にしなくて大丈夫です。

1-2.農地の相続登記に必要な書類(戸籍等)

農地の相続登記に必要な書類は、一般的な不動産(建物・宅地等)と同じく3パターンに分かれます。

  1. 遺産分割協議による相続登記
  2. 遺言書による相続登記
  3. 法定相続分による相続登記

今回の記事では、遺産分割協議により農地を相続登記する場合の必要書類を説明します。


▼家族構成

被相続人|父親
相続人 |長男・二男・三男

遺産分割協議により農地は長男が取得すると決めた。

▼相続登記に必要な書類

父親の出生から死亡までの戸籍すべて
父親の住民票(戸籍の附票)
長男・二男・三男の戸籍
長男の住民票
遺産分割協議書
長男・二男・三男の印鑑証明書

遺産分割協議書には相続人全員の実印による押印が必要なので、印鑑証明書も相続人全員分が必要になります。


農地の相続登記を申請する場合、どの方法により農地の取得者を決めたかで、必要な戸籍等が変わるので注意してください。

2.農地の相続登記に農業委員会の許可は不要

相続登記に農業委員会の許可は不要

農地の相続登記を申請するのに、前もって農業委員会の許可を得る必要はありません。

なぜなら、相続による農地の移転は、法律により当然に発生しているからです。

2-1.相続が発生すると農地は当然に移転

農地の所有者が亡くなって相続が発生すると、農地は当然に相続人へ移転します。

なぜなら、法律により被相続人の権利・義務は、相続人がすべて承継するからです。

第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
出典:e-Govウェブサイト(民法896条)

被相続人|父親
相続人 |子
相続財産|建物・宅地・農地

父親が亡くなると相続財産(農地を含む)は子に移ります。農業委員会は相続の発生に無関係です。


ちなみに、遺産分割により農地の承継者を決める場合1でも、農業委員会の許可は必要ありません。

相続による移転に農業委員会の許可は不要なので、相続登記にも農業委員会の許可は不要です。

2-2.相続でも農業委員会への届出は必要

農地を相続した場合、農業委員会の許可は不要ですが、農業委員会への届出2は必要になります。

移転許可届出
相続×

※遺産分割や包括遺贈による取得も同じ。

届出は相続登記の有無に関わらず必要であり、相続開始からおおむね10ヶ月以内と期限も決まっています。

農地の相続に許可は不要だが届出は必要という、勘違いしやすい規定なので注意してください。

3.農地を相続登記する場合の登録免許税

農地の登録免許税は非課税になるケースが多い

相続登記により農地の名義を変える場合、登録免許税という税金を支払う必要があります。

  • 固定資産評価額×0.4%
  • 免税措置で非課税の可能性あり

原則と免税措置について説明していきます。

3-1.原則として農地の固定資産評価額×0.4%

相続登記の登録免許税は、原則として「固定資産評価額×0.4%」です。

農地の
固定資産評価額
登録免許税
200万円8,000
300万円12,000
400万円16,000
500万円20,000

農地の固定資産評価額は「課税明細書」または「固定資産評価証明書」で確認できます。

課税明細書

毎年4月~6月頃に納税通知書と一緒に自治体から郵送される書面

固定資産評価証明書

役所で取得できる固定資産の評価額を証明する書面

課税明細書を紛失している場合でも、固定資産評価証明書を取得すれば確認できるので安心してください。

基本的な登録免許税の説明については、下記の記事で詳しく説明しています。

3-3.農地は免税措置で非課税のケースが多い

前項で登録免許税の説明をしたのですが、農地は免税措置で非課税になるケースが多いです。

具体的には、以下のどちらかに該当すると、登録免許税は非課税になります。

  • 農地の固定資産評価額が100万円以下
  • 死亡した相続人へ農地を移転する場合

免税措置は2つありますが、農地が該当しやすいのは「固定資産評価額が100万円以下」の方です。

実際、私が受けている農地の相続登記でも、100万円以下のケースがほとんどなので、登録免許税も非課税になっています。

ただし、免税措置を受けるには申請書に根拠条文を記載する必要がります。死亡した相続人へ不動産を移転するケースも含めて、下記の記事で確認しておいてください。

4.実務でよくある農地の相続登記で注意する点

農地の相続登記で注意する点をまとめた画像

農地を相続登記する際に注意する点を4つ説明するので、ご自身で手続きする予定なら、しっかりと確認しておいてください。

  • 農地が複数でも1回で登記可能(条件あり)
  • 現況が農地と違っても相続登記は可能
  • 農地の登記名義が被相続人と違う
  • 農地が被相続人と第三者の共有

4-1.農地が複数でも1回で登記可能(条件あり)

亡くなった人が農地を複数所有している場合、条件を満たせば相続登記は1枚の申請書で済みます。

具体的には、以下の3つが条件になります。

  1. 農地が同一登記所の管轄区域内にある
  2. 農地の所有者(被相続人)が同一である
  3. 農地の取得者(相続人)が同一である

農地が同一登記所の管轄区域内にあり、農地の取得者が同一であれば、農地が複数であっても1枚の申請書で登記可能です。

亡くなった人が農地を複数所有しているケースは多いので、余計な登記を増やさないよう注意してください。

4-2.現況が農地と違っても相続登記は可能

不動産の現況が農地以外になっていても、相続登記は可能です。

なぜなら、相続登記は所有権の名義を変更する手続きであり、現況が違っていても問題はないからです。

登記簿現況
農地宅地
農地駐車場
農地山林

登記簿上は農地でも、現況が農地以外になっているケースは珍しくありません。

何十年も前に農家を辞めている人もいれば、農地を相続しただけの人もいるからです。

ただし、現況が農地と違う場合、以下の点に注意してください。

  • 申請書には登記簿上の地目を書く
  • 地目の変更登記は別途必要になる

相続登記の申請書には登記簿上の地目(農地)を書いてください。現況を書いても記録と一致しないからです。

また、地目の変更登記は別途必要になるので、放置しないよう注意してください。
※地目の変更登記は義務。

司法書士から一言地目変更登記は土地家屋調査士に依頼できます。

4-3.農地の登記名義が被相続人と違う場合

農地の登記名義が被相続人と違う場合、原則として直接相続人に移すことはできません。

以下のように複数の登記が必要になります。

  1. 登記名義人から被相続人へ相続登記
  2. 被相続人から相続人へ相続登記

ただし、条件を満たすと直接相続人へ移すことも可能です。

細かい条件については下記の記事で詳しく説明していますので、もし農地の登記名義が被相続人と違う場合は参考にしてください。

4-4.農地が共有でも相続登記に影響はない

農地が被相続人と第三者の共有であっても、相続登記に影響はありません。

  • 被相続人の持分だけ相続登記できる
  • 相続登記に共有者の同意は不要

農地の共有者は相続登記に関係しないので、相続人だけで相続登記は進められます。

ただし、農地が共有だと申請書の記載が少し変わります。

持分移転登記については、下記の記事で詳しく説明しているので、農地が共有なら確認しておいてください。

5.農地の相続登記に関するQ&A

農地の相続登記について、よくある質問と回答をまとめました。

農地の相続登記をしない場合、罰則はありますか?

農地を相続により取得したと知った日から3年以内に相続登記しないと、10万円以下の過料が科される可能性はあります。

【相続登記の義務化】罰則もあるので忘れずに申請しよう

相続登記と農業委員会への届出は、どちらを先にすれば良いですか?

届出の期限(おおよそ10か月以内)は相続登記の期限(3年以内)より短いため、届出を先に済ませた方が良いでしょう。

相続登記を先に済ませた場合、農業委員会への届出は不要ですか?

農業委員会への届出は必要です。相続登記と農業委員会への届出は別の手続きになります。

農地は20筆以上あるのですが、相続登記は1回で可能でしょうか?

3つの条件を満たせば何筆でも可能です。

  1. 農地が同一登記所の管轄区域内にある
  2. 農地の所有者(被相続人)が同一である
  3. 農地の取得者(相続人)が同一である

6.まとめ

農地の相続登記のまとめ画像

今回の記事では、「農地の相続登記」について説明しました。

以下が、農地の相続登記に関するポイントです。

  • 農地の相続登記も他の不動産と同じ方法
  • 農業委員会の許可は不要だが、届出は別途必要になる
  • 登録免許税は0.4%だが、免税措置により非課税になるケースが多い

不動産が農地であっても、相続登記の方法は特に変わりません。

農地は相続により移転しているので、相続登記を申請するのに農業委員会の許可は不要です。ただし、相続による取得であっても、農業委員会への届出は必要なので注意してください。

農地の固定資産評価額は低いケースが多いので、免税措置により非課税になるケースが多いです。

相続登記の手続きを進める中で、数次相続や共有関係などで難しいと感じた場合は、司法書士などの専門家に相談してみてください。


脚注

  1. 農地法3条1項12号 ↩︎
  2. 農地法3条の3 ↩︎
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