相続登記は複数の不動産でも同じ申請書で可能だが条件あり

複数の不動産を相続登記
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亡くなった人が複数の不動産を所有していた場合、条件を満たせば同じ申請書で相続登記できます。

  • 不動産が同一登記所の管轄区域内にある
  • 不動産の所有者(被相続人)が同一である
  • 不動産の取得者(相続人)が同一である
複数の不動産を同一申請書で相続登記する図

条件を満たさない場合は別々の申請書を作成しますが、管轄法務局が同じであれば一緒に提出可能です。

相続登記の申請書を一緒に提出する場合、共通の添付書類(戸籍等)は省略できますが、申請書にその旨の記載が必要になります。

今回の記事では、複数の不動産を相続登記する場合について説明しているので、しっかりと確認しておいてください。

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目次

1.複数の不動産を同じ申請書で相続登記できるケース

原則として、相続登記の申請書は不動産ごとに作成します。

ただし、一定の条件を満たす場合は、複数の不動産を同じ申請書で作成できます。

以下は、不動産登記令の条文です。

(申請情報の作成及び提供)
第四条 申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じ、一の不動産ごとに作成して提供しなければならない。ただし、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるときその他法務省令で定めるときは、この限りでない。
出典:e-Govウェブサイト(不動産登記令4条)

上記の条文を相続登記に当てはめると、以下が条件になります。
※当事者の一致は当然に含まれる。

  • 不動産が同一登記所の管轄区域内にある
  • 不動産の所有者(被相続人)が同一である
  • 不動産の取得者(相続人)が同一である

上記の条件を満たせば、同一の申請書で相続登記を申請できます。

1-1.被相続人・相続人・管轄法務局が同じ

複数の不動産を同一の申請書で相続登記する場合、被相続人・相続人・管轄法務局が同じになります。

以下は、申請書の記載例です。

被相続人・相続人・管轄法務局が同一な申請書の記載例

被相続人・相続人・管轄法務局が一致しなければ、そもそも申請書が作成できません。

一致しない部分がある場合は、別々の申請書を作成してください。

1-2.申請書に対象不動産をまとめて記載

複数の不動産を同一の申請書で相続登記する場合、対象となる不動産をまとめて記載します。

例えば、2つの不動産を相続登記する場合です。

相続登記の申請書に複数の不動産を記載する場合の見本

上記の見本は土地が2つですが、土地と建物の組み合わせでも、まとめて相続登記できます。

申請書に不動産を記載する場合は、登記簿(登記事項証明書)を確認して記載してください。情報が間違っていると、法務局で不動産の確認ができません。

複数の不動産を相続登記するなら、申請書に対象となる不動産をまとめて記載しましょう。

1-3.登録免許税は各不動産を合算して計算

複数の不動産を同一の申請書で相続登記する場合、登録免許税は各不動産を合算して計算します。

登録免許税

不動産評価額の合算×0.4%

複数の不動産を同一の申請書で相続登記する場合の課税価格

以下の表は、不動産Aと不動産Bを同一の申請書で相続登記する場合の登録免許税の計算式です。

不動産A3,811,869
不動産B2,004,532
合算額5,816,401
課税価格
※1,000円未満切り捨て
5,816,000
税率(0.4%)23,264
登録免許税
※100円未満切り捨て
23,200

不動産が3つ以上であっても、計算の方法は変わりません。不動産評価額を合算してから登録免許税を計算してください。

相続登記の料金を確認する

2.複数の不動産を別々の申請書で相続登記するケース

複数の不動産を別々の申請書で相続登記するケースは3つあります。

  1. 不動産の管轄登記所が違う
  2. 不動産の所有者(被相続人)が違う
  3. 不動産の取得者(相続人)が違う

それぞれ説明していきます。

2-1.不動産の管轄登記所が違う

不動産の管轄登記所が違う場合は、別々の申請書で相続登記をします。

なぜなら、申請書は管轄登記所に提出するからです。提出先が別々であれば申請書も別々に作成します。

例えば、被相続人が大阪市に建物と宅地、岡山市に田畑を所有していれば、大阪市と岡山市の登記所に相続登記申請書を別々に提出します。

被相続人が複数の場所に不動産を所有していると、申請書も別々の法務局に提出するので注意してください。

2-2.不動産の所有者(被相続人)が違う

不動産の所有者(被相続人)が違う場合は、別々の申請書で相続登記をします。

なぜなら、登記原因(被相続人)が違うからです。

例えば、父親と母親が亡くなり、それぞれ不動産を所有していた場合です。不動産の取得者が同じ子どもであっても、被相続人が違うので申請書は別々に作成します。

被相続人取得者申請書
父親A父親の申請書
母親A母親の申請書

不動産の取得者が同じであっても、被相続人が違う場合は同じ申請書で相続登記できないので注意してください。

2-3.不動産の取得者(相続人)が違う

不動産の取得者(相続人)が違う場合は、別々の申請書で相続登記をします。

なぜなら、取得者(相続人)が違うからです。

例えば、亡くなった父親が複数の不動産を所有していた場合です。子であるAとBが別々の不動産を取得するなら申請書は別々に作成します。

被相続人取得者申請書
父親AAの申請書
父親BBの申請書

不動産の所有者(被相続人)が同じ出会っても、取得者(相続人)が違う場合は同じ申請書で相続できないので注意してください。

司法書士から一言相続人が共有で相続する場合は同じ申請書で作成します。

3.別々の相続登記申請書も同時に提出できる

別々の相続登記申請書であっても、管轄登記所が同じであれば同時に提出できます。

  • 相続登記申請書を同時に提出するケース
  • 共通の添付書類(戸籍等)は省略できる
  • 相続登記申請書の右上に番号を記載する

申請書を同時に提出する場合、細かいルールもあるので、しっかりと確認しておいてください。

3-1.相続登記申請書を同時に提出するケース

別々の相続登記申請書を同時に提出するケースは、主に2つあります。

  1. 複数の相続人が別々に不動産を取得
  2. 別々の被相続人から不動産を取得

複数の相続人が別々に不動産を取得

被相続人が不動産を複数所有しており、かつ、複数の相続人が別々の不動産を相続する場合、相続登記申請書を同時に提出できます。
※管轄法務局は同じ。

【事例】

被相続人|父親
相続人 |長男・二男
不動産 |建物・宅地・雑種地(駐車場)

長男と二男は遺産分割協議により、以下のように不動産の取得者を決めました。

相続人取得する不動産
長男建物・宅地
二男雑種地(駐車場)

長男の相続登記申請書と二男の相続登記申請書は同時に提出できます。

複数の相続人が別々に不動産を相続する場合でも、管轄法務局が同じであれば申請書を同時に提出できます。

別々の被相続人から不動産を取得

別々の被相続人から不動産を取得する場合も、相続登記申請書を同時に提出できます。
※管轄法務局が同じ。

【事例】

被相続人  |父親・母親
相続人   |長男・二男
父親の不動産|建物
母親の不動産|宅地

長男と二男は遺産分割協議により、以下のように不動産の取得者を決めました。

被相続人不動産の取得者
父親長男
母親長男

父親の不動産に関する相続登記申請書と、母親の不動産に関する相続登記申請書は同時に提出できます。

別々の被相続人から不動産を相続する場合でも、管轄法務局が同じであれば申請書を同時に提出できます。

3-2.共通の添付書類(戸籍等)は省略できる

別々の相続登記申請書を同時に提出する場合、共通の添付書類は省略できます。

以下は、不動産登記規則の条文です。

(添付情報の省略等)
第三十七条 同一の登記所に対して同時に二以上の申請をする場合において、各申請に共通する添付情報があるときは、当該添付情報は、一の申請の申請情報と併せて提供することで足りる。
2 前項の場合においては、当該添付情報を当該一の申請の申請情報と併せて提供した旨を他の申請の申請情報の内容としなければならない。
出典:e-Govウェブサイト(不動産登記規則37条1項)

相続登記で共通する添付情報とは、主に以下のような書類です。

  • 戸籍・除籍・原戸籍
  • 住民票・戸籍附票
  • 遺産分割協議書

以下は、父親が亡くなって、長男と次男がそれぞれ不動産を相続する場合の添付書類になります。

添付書類長男二男
父親の全戸籍省略
父親の住民票省略
相続人の戸籍
相続人の住民票
遺産分割協議書省略
印鑑証明書

※遺産分割協議書には長男と二男が取得する不動産が記載されている。

父親の全戸籍(出生から死亡まで)、父親の住民票(戸籍附票)、遺産分割協議書は共通の添付書類です。

一方、相続人(長男と二男)の戸籍、住民票、印鑑証明書はそれぞれ添付します。

共通の添付書類を省略する場合は、以下のように(前件添付)と記載してください。
※父親の戸籍や遺産分割協議書は登記原因証明情報。

相続登記申請書を同時に提出する場合、共通の添付書類は省略できるので、同じ書類を2枚用意する必要はありません。

以下の記事では、相続登記に必要な戸籍について詳しく説明しています。

3-3.相続登記申請書の右上に番号を記入

複数の相続登記申請書を同時に申請して、共通の添付書類を省略する場合は、申請書の右上に番号を鉛筆で記入してください。

例えば、父親が亡くなって、長男と二男がそれぞれ不動産を相続する場合です。

連件申請する場合は右上に番号を記入する図

右上の番号は、左側が総数で右側が順番になります。長男の申請書が1番目で、二男の申請書が2番目という意味です。

あくまでも、登記官に申請書の順番を教えるためなので、鉛筆で番号を書いてください。
※番号は申請書の内容ではない。

4.司法書士に複数不動産の相続登記を依頼

司法書士に複数不動産の相続登記を依頼する場合、料金をしっかりと確認しておいてください。

なぜなら、事務所によって、料金の計算式が違うからです。

4-1.同一申請書なら個数により追加料金

一般的には、同一申請書での相続登記であれば、基本料金と個数による追加料金の組み合わせになります。

例えば、みかち司法書士事務所に不動産3つの相続登記を依頼する場合です。
※被相続人・相続人・管轄法務局が同じ。

基本料金|49,500
追加料金|3,300(1個)

不動産料金
建物49,500
宅地3,300
宅地3,300
合計額56,100
料金は税込表示です

司法書士に相続登記を依頼する場合は、基本料金と個数による追加料金を確認してください。

4-2.戸籍謄本等の取得費は別途請求される

相続登記を申請するには、戸籍謄本等を複数取得する必要があります。

そして、戸籍謄本等の取得費は料金に含まれていないので、別途実費を請求されます。

相続登記に必要な戸籍謄本等の枚数は、「被相続人と相続人の関係」および「相続人の人数」によって増減します。

  1. 配偶者
  2. 子ども
  3. 父母
  4. 兄弟姉妹
  5. 甥姪

相続人が被相続人の配偶者や子どもであれば、必要な戸籍謄本等も少ないです。

一方、相続人が被相続人の兄弟姉妹や甥姪であれば、必要な戸籍謄本等は多くなります。

実費請求なので取得した後でなければ金額は分かりませんが、相続人が兄弟姉妹や甥姪なら金額が増えると覚えておいてください。

5.まとめ

今回の記事では、「複数不動産の相続登記」について説明しました。

原則として、一つの不動産ごとに申請書を作成します。

ただし、以下の条件を満たすと、不動産が複数でも同じ申請書で作成できます。

  • 不動産が同一登記所の管轄区域内にある
  • 不動産の所有者(被相続人)が同一である
  • 不動産の取得者(相続人)が同一である

上記の条件を満たさない場合は、原則どおり別々に申請書を作成してください。

ちなみに、別々の申請書であっても、管轄法務局が同じであれば、同時に相続登記申請書を提出できます。

  • 相続登記申請書を同時に提出するケース
  • 共通の添付書類(戸籍等)は省略できる
  • 相続登記申請書の右上に番号を記載する

同時に相続登記申請書を提出する場合、共通の添付書類(戸籍等)は省略できますが、申請書に追加の記載が必要になるので、しっかりと確認しておいてください。

司法書士に複数不動産の相続登記を依頼する場合、料金の計算が事務所によって違うので、前もって確認しておきましょう。

複数不動産の相続登記に関するQ&A

不動産が10以上あります。同一申請書で相続登記できますか?

相続登記できます。条件を満たしていれば不動産の数は関係ありません。

祖父・父・伯父の相続登記申請書を一緒に提出できますか?

管轄法務局が同じであれば、申請書が3枚以上でも提出できます。

管轄法務局が別の場合は、戸籍一式を複数セット用意する必要がありますか?

戸籍一式を原本還付してから、別の法務局に提出すれば1セットでも大丈夫です。

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