相続放棄した人であっても、相続財産清算人の選任申立ては可能です。
ただし、以下の2つの条件を満たす必要があります。
- 相続人全員が相続放棄している
- 申立てについて利害関係を有している
他の相続人が相続放棄していなければ、相続財産清算人を選任することはできません。
相続財産清算人の選任申立てをするには、相続放棄した人が利害関係人に該当する必要もあります。
今回の記事では、相続財産清算人と相続放棄について説明しているので、申立の参考にしてください。
司法書士から一言令和5年4月1日に相続財産管理から相続財産清算人へ名称変更。
1.相続放棄すると相続財産清算人を選任できる?
相続財産清算人を選任するには、相続人の存在が不明であることが条件の一つとなります。
相続人の存在が不明とは、戸籍謄本等を調べても相続人が存在しない場合のことです。
相続人の連絡先が分からないや、相続人が行方不明になっている場合では、相続財産清算人を選任できません。
1-1.相続人が1人でもいれば選任できない
相続放棄していない事情に関係なく、誰が1人でも相続放棄していなければ、相続財産清算人を選任することはできません。
なぜかというと、1人でも相続人が存在するなら、相続人の存在が不明という条件を満たせないからです。
ただし、相続財産清算人以外の制度を利用することはできます。
相続人の所在が不明であれば、不在者財産管理人を選任して手続きをしてもらいます。
また、相続人の生死が不明であれば、失踪宣告することも可能です。
※生死不明の期間が7年以上。
相続人の状態 | 相続財産清算人 |
---|---|
所在が不明 | × |
生死が不明 | × |
存在が不明 | ○ |
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1-2.全員が相続放棄すると相続人の存在が不明になる
相続人が存在しない場合には、相続人全員が相続放棄した場合も含みます。
つまり、戸籍謄本等に記載されている相続人が全員相続放棄すれば、相続人の存在は不明という条件を満たすことになります。
ただし、相続人の存在が不明であっても、もう一つの条件を満たさなければ選任できません。
2.相続放棄した人も相続財産清算人の申立てができる
相続財産清算人を選任するには、家庭裁判所に申立てが必要です。相続人の存在が不明だからといって、自動的に選任されるわけではありません。
では、相続放棄した人は選任申立てができるのでしょうか?
家庭裁判所に相続財産清算人の選任申立てができるのは、限られた人だけになります。
- 利害関係人
- 検察官
つまり、相続放棄した人が相続財産清算人の選任申立てをするには、利害関係が必要になります。
2-1.相続財産清算人に管理義務を引き継いでもらう
亡くなった人の相続財産に建物や土地があれば、管理義務を引き継いでもらうために、相続財産清算人の選任申立てができます。
なぜなら、相続人が全員相続放棄すると、相続財産の管理義務を引き継ぐ人がいなくなるからです。
相続人全員が相続放棄した場合、相続財産の管理義務がどうなるかは曖昧になっています。
そのため、管理義務を引き継いでもらうために、相続財産清算人の選任申立てが可能になります。
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2-2.共有持分の移転には相続財産管理人が必要
亡くなった人が不動産の共有持分を所有していた場合、相続人が全員相続放棄すると持分は共有者に移転します。
※相続放棄した人が共有者の場合も含む。
ただし、共有者に持分が移転するのは、相続財産清算人が手続きをした後です。相続人全員が相続放棄しただけでは、共有持分は移転しません。
相続放棄した人が共有持分を取得するには、相続財産清算人を選任する必要があります。
3.相続放棄した人が申し立てる場合も予納金は必要
相続財産清算人の選任申立てをするには、家庭裁判所に予納金を納める必要があります。
※相続財産に預貯金が多ければ不要な場合あり。
予納金は20万円から100万円ぐらいと言われています。管轄家庭裁判所によっても違うので、金額はあくまでも目安と思ってください。
そして、相続放棄した人が相続財産清算人の選任申立てする際にも、予納金は必要になります。
相続財産清算人の選任申立てをしたくても、予納金が高額なので諦めている人も多いです。
関連記事を読む『【相続財産管理人と予納金】金額は流動資産の額により違う』
4.相続放棄しても相続財産管理人を選任しない場合
相続人全員が相続放棄したからといって、相続財産清算人を選任する義務はありません。
そのため、相続人全員が相続放棄していても、相続財産清算人が存在しない場合もあります。
相続財産清算人が必要な人(利害関係人)は、自分で選任申立てをします。
- 被相続人の債権者
- 特別縁故者
- 不動産の共有者
- 空家所在地の自治体
誰かが申立てをする可能性はありますが、誰も申立てをしないなら自分でするしかありません。
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5.さいごに
相続放棄した人も相続財産清算人の選任申立ては可能です。
ただし、以下の2つを満たす必要があります。
- 相続人全員が相続放棄している
- 相続放棄した人が利害関係人に該当する
相続人全員が相続放棄して、かつ、利害関係人に該当する必要があります。
相続放棄した人が選任申立てをする際にも、予納金は必要になるので注意してください。