遠い親戚の相続人になっていると書面が届き、相続放棄できるか不安に思っていませんか。
結論から言えば、遠い親戚であっても、あなたに相続が回ってきているなら相続放棄が可能です。
ただし、通常の相続放棄と比べて、相続経路の判断や家庭裁判所への説明など、特有の注意点があります。
この記事では、遠い親戚の相続放棄について、以下の内容を詳しく解説します。
- 遠い親戚でも相続放棄できる条件
- 遠い親戚の相続人になる主なケース
- 手続きを進める際の注意点
- 放置した場合のリスク
相続放棄には「相続の開始を知った日から3ヶ月以内」という期限があります。遠い親戚からの相続通知を受け取った方は、早めに対応方針を決めることが重要です。
記事作成者
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司法書士 小嶋高士
大阪司法書士会 第4921号
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1.遠い親戚でも相続人なら相続放棄できる

本来、遠い親戚が亡くなっても相続人ではありません。
しかし、相続が複数回発生していると、遠い親戚の相続が回って来るので、相続放棄もできます。
まずは、以下の順番で確認してください
- 誰の相続人になっているか確認
- 相続が回ってきた理由を確認
- どの相続が相続放棄できるか確認
私が依頼を受ける際も、上記の順番で確認しています。
1-1.誰の相続人になっているか確認
まずは、誰の相続人になっているか確認してください。
具体的には、債権者は役所から届いた書面に書かれている、被相続人が誰になっているかです。
送付者|〇〇市役所
内容 |不動産が放置されている
所有者|知らない人
所有者が知らない人でも、以下の2つから推測できるケースはあります。
- 所有者の苗字が父方・母方と一致しないか
- 不動産の所在地が親族の出身地と一致しないか
推測の結果に関わらず、市役所には電話で確認してください。詳細に教えてくれる場合もあるので。
被相続人が誰になっているか分かれば、なぜ相続が回ってきたのか確認します。
ちなみに、市役所等に聞いても教えてくれない場合は、戸籍を辿って探すしかありません。
※相続なので必ず戸籍で辿れる。
1-2.遠い親戚の相続が回ってくる理由
次に、なぜ自分に相続が回ってきたのか確認します。
遠い親戚の相続が回ってくる理由は、相続が複数回発生しているからだと考えられます。
なぜなら、相続が複数回発生すると、通常では回ってこない被相続人からでも、相続は回ってくるからです。
例えば、以下の順番で相続が発生した場合、相続財産は3回移動しています。

- Aが亡くなる
※相続人はB(配偶者) - Bが亡くなる
※相続人はC(妹) - Cが亡くなる
※相続人はD(子)
本来、Aが亡くなってもDは相続人になりません。
※相続順位に含まれていない。
しかし、A→B→C→Dの順で相続が発生すると、Aの相続がDに回ってきます。
市役所からの書面には、被相続人Aの相続人Dと書かれますが、実際は複数回の相続により回ってきているだけです。
遠い親戚の相続が回ってきた場合、自分に繋がる相続(経路)を確認してください。
自分に繋がる相続が分かれば、相続放棄で繋がりを断つことができます。
1-3.どの相続が相続放棄できるのか確認
被相続人から自分に繋がる相続が分かれば、どの相続が相続放棄できるのか確認します。
なぜなら、相続が複数回発生している場合、相続放棄できない相続もあるからです。
例えば、Aが建物を所有していた場合。
- Aが亡くなる
※相続人はB(配偶者) - Bが亡くなる
※相続人はC(妹) - Cが亡くなる
※相続人はD(子)
BはAが亡くなった後も建物に住んでいたので、単純承認により相続は確定しています。
したがって、相続放棄を検討するのは、以下のどちらかです。
- B→C
- C→D
Cが相続の開始を知らずに亡くなっているなら、DはCの相続人としてBの相続放棄ができます。
※B→Cの相続は確定していない。
※再転相続による相続放棄
あるいは、Cに相続財産が何もなかったのであれば、DはCの相続放棄もできます。
※書面が届いて相続財産を知った。
※通常の相続放棄
相続が複数回発生している場合、「通常の相続放棄」または「再転相続による相続放棄」のどちらが可能か確認してください。
再転相続による相続放棄については、下記の記事で詳しく説明しています。
関連記事を読む『再転相続人による相続放棄も可能|熟知している専門家を探そう』
2.遠い親戚が被相続人になる主なケース

遠い親戚が被相続人になる主なケースを4つ説明します。
本来は相続人になりませんが、相続が複数回発生していると相続が回ってきます。
- おじ・おばの配偶者
- 兄弟姉妹の配偶者
- 祖父母の兄弟姉妹
- 離婚した親の再婚相手
実際に私が依頼を受けたケースなので、どのような経路で相続人になるのか、ご自身に照らし合わせながら確認してください。
2-1.おじ・おばの配偶者が被相続人
遠い親戚の相続人になるケース1つ目は、おじ・おばの配偶者が被相続人です。
本来、おじ・おばの配偶者が亡くなっても法定相続人になりません。
しかし、相続の順番によっては、遠い親戚の相続財産が回ってきます。

▼相続発生日
A|令和6年3月13日
B|令和7年8月21日
C|令和8年2月9日
▼Aの家族構成
被相続人|A(伯母の配偶者)
相続人 |B(伯母)
※相続人は配偶者のみ
▼Bの家族構成
被相続人|B(伯母)
相続人 |C(父)※叔母の弟
※相続人は兄弟姉妹
※CはBの死亡を知らなかった
▼Cの家族構成
被相続人|C(父)
相続人 |D(子)、E(子)
Aが令和6年3月13日に亡くなっているので、Aの財産は配偶者であるB(伯母)に移ります。不動産の名義を変えていなくても、Aの不動産はBに移っています。
その後、Bが令和7年8月21日に亡くなっているので、Bの財産(A名義の不動産含む)はC(父)に移ります。
Cが令和8年2月9日に亡くなっているので、DとEにCの財産(A名義の不動産含む)が移ります。
ただし、CはBの死亡を知らずに亡くなっているので、DとEは再転相続人としてBの相続放棄が可能です。
おじ・おばの配偶者の相続が回ってきた場合は、以下の死亡日を確認してください。
- おじ(おば)の配偶者が亡くなった日
- おじ(おば)が亡くなった日
- 父親(母親)が亡くなった日
特に重要なのは、おじ(おば)と父親(母親)のどちらが先に亡くなっているかです。
おじ(おば)が先に亡くなっていれば、父親(母親)経由での相続になります。
一方、父親(母親)が先に亡くなっていれば、おじ(おば)から直接の相続(代襲相続)になります。
2-2.兄弟姉妹の配偶者が被相続人
遠い親戚の相続人になるケース2つ目は、兄弟姉妹の配偶者が被相続人です。
本来、兄弟姉妹の配偶者が亡くなっても法定相続人になりません。
しかし、相続の順番によっては、遠い親戚の相続財産が回ってきます。

▼相続発生日
A|令和2年3月13日
B|令和7年8月21日
▼Aの家族構成
被相続人|A(姉の配偶者)
相続人 |B(姉)
※相続人は配偶者のみ
▼Bの家族構成
被相続人|B(姉)
相続人 |C(弟)
※相続人は兄弟姉妹
※Cは相続財産の有無を知らなかった
Aが令和2年3月13日に亡くなっているので、Aの財産は配偶者であるB(姉)に移ります。不動産の名義を変えていなくても、Aの不動産はBに移っています。
※Aは山林を所有していた。
その後、Bが令和7年8月21日に亡くなっているので、Bの財産(A名義の不動産含む)はC(弟)に移ります。
ただし、CはBに相続財産が存在すると知らなかったので、知った日から3ヶ月以内ならBの相続放棄が可能です。
兄弟姉妹の配偶者から相続財産(不動産)が回ってくるケースは珍しくありません。夫婦に子がいても不動産が不要だと相続放棄するからです。
兄弟姉妹が婚姻している場合、兄弟姉妹の配偶者からも相続が回ってくると覚えておいてください。
2-3.祖父母の兄弟姉妹が被相続人
遠い親戚の相続人になるケース3つ目は、祖父母の兄弟姉妹が被相続人です。
田舎の不動産がらみでは、祖父母の兄弟姉妹からも相続が回ってきます。

▼相続発生日
A|平成20年8月11日
B|平成25年1月15日
C|令和8年3月3日
Aが平成20年8月11日に亡くなっているので、Aの財産は弟であるB(祖父)に移ります。不動産の名義を変えていなくても、Aの不動産はBに移っています。
その後、Bが平成25年1月15日に亡くなっているので、Bの財産(A名義の不動産含む)はC(母)に移ります。
Cが令和8年3月3日に亡くなっているので、DにCの財産(A名義の不動産含む)が移ります。
田舎の不動産については名義が変更されていないケースが多いので、祖父や曾祖父の兄弟姉妹から相続が回ってくるのは珍しくありません。
ただし、昔の戸籍は見づらいので、相続の経路を確認する際は十分に注意してください。
2-4.離婚した親の再婚相手が被相続人
遠い親戚の相続人になるケース4つ目は、離婚した親の再婚相手が被相続人です。遠い親戚とは少し違いますが、よくある事例なので説明しておきます。
原則として、離婚した親の再婚相手と養子縁組を結んでいなければ、再婚相手が亡くなっても相続人になりません。
しかし、相続の順番によっては、遠い親戚の相続財産が回ってきます。

▼相続発生日
A|令和2年3月13日
B|令和7年8月21日
▼Aの家族構成
被相続人|A(母の再婚相手)
相続人 |B(母)
※相続人は配偶者のみ
▼Bの家族構成
被相続人|B(母)
相続人 |C(子)
※相続人は実父と暮らしている
Cの母であるBは離婚後にAと再婚しており、A所有の不動産で暮らしていた。
Aが令和2年3月13日に亡くなっているので、Aの財産はBに移ります。不動産の名義を変えていなくても、Aの不動産はBに移っています。
その後、Bが令和7年8月21日に亡くなっているので、Bの財産(A名義の不動産含む)はCに移ります。
AとCが養子縁組を結んでいなくても、Aの相続が回ってくるので注意してください。
離婚した親の再婚相手の相続が回ってきた場合は、以下の順番で確認してください。
- 親の再婚相手と養子縁組していないか
- 再婚相手の後に親が亡くなっていないか
養子縁組していれば直接の相続人ですし、再婚相手の後に親がなくなっていれば親経由の相続です。
3.遠い親戚を相続放棄する際の注意点

遠い親戚を相続放棄する場合、一般的な相続放棄とは違う注意点があります。
- 必要な戸籍の枚数が多くなりやすい
- 住民票が廃棄されている可能性あり
- 家庭裁判所に事情説明が必要になる
- 複数の経路から相続していないか
ご自身で相続放棄の手続きをされる際は、しっかりと確認しておいてください。
3-1.必要な戸籍の枚数が多くなりやすい
相続放棄する際は戸籍を添付しますが、被相続人が遠い親戚だと必要な枚数が多くなります。
なぜなら、相続が複数回発生していると、相続を証明するための戸籍も増えるからです。
以下は、祖母(父方)の異父弟が被相続人だった場合。
※祖母は異父兄と面識がない。
▼添付戸籍
被相続人の出生から死亡までの戸籍
被相続人の両親の死亡戸籍
祖母の死亡戸籍
父親の死亡戸籍
相続人の戸籍
相続が3回(被相続人、祖母、父親)発生しているので、上記の戸籍を揃える必要があります。
遠い親戚の相続が回ってきた事実を戸籍で証明する必要があるので、通常よりも多くなると覚えておいてください。
関連記事を読む『相続放棄には戸籍謄本が必要!誰がするかで枚数が違う』
3-2.住民票が廃棄されている可能性あり
一般的に遠い親戚の相続は、死亡から期間が経過して気付くケースが多いです。
その場合、被相続人の住民票が廃棄されていて、取得できない可能性があります。
なぜなら、かつては死後5年で住民票が廃棄されていたからです。
※現在は150年に延長。
もし住民票が廃棄されている場合は、戸籍の附票が取得できないか試してください。戸籍の附票でも最後の住所は証明できるからです。
住民票だけでなく戸籍の附票も廃棄されていたら、家庭裁判所または専門家に相談してください。
3-3.家庭裁判所に事情説明が必要になる
遠い親戚の相続放棄をする場合、家庭裁判所に事情説明が必要になります。
なぜなら、被相続人の死亡から3ヶ月経過している場合や、再転相続人が相続放棄する場合、戸籍だけでは家庭裁判所が判断できないからです。
説明内容は相続によって違いますが、以下の事例を参考にしてください。

祖母(父方)の異父弟が被相続人だった場合
▼相続発生日
A|平成20年8月11日
B|平成25年1月15日
C|令和2年3月3日
▼Aの相続
Aは祖母(B)の異父弟だが、面識もなく死亡の連絡も来ていなかった。
Aの不動産はE(異母兄)が使用しており、固定資産税もEが支払っていた。
▼Aの相続を知った経緯
Aの不動産を使用していたEが亡くなり、固定資産税を支払う人がいなくなったので、市役所がAの相続人を調べてDに書面が届いた。
▼家庭裁判所への説明ポイント
- 祖母(B)はAの死亡を知らずに亡くなっている
- 父親(C)もAの死亡を知らずに亡くなっている
- Dは市役所から書面が届いてAの死亡を知った
上記3点を家庭裁判所に説明します。
遠い親戚を相続放棄する場合は、家庭裁判所に事情を説明する必要があると覚えておいてください。
何を説明するかは相続によって違うので、分からない場合は専門家に相談しましょう。
3-4.複数の経路から相続していないか
遠い親戚から相続が回ってきている場合、経路が一つとは限りません。
もし相続の経路が複数あるなら、相続放棄も複数必要になります。

上記は、おばの配偶者の相続が回ってきたケースですが、2つの経路から相続が来ています。
- A→B→C→E
- A→B→C→D→E
Cから回ってきた相続を放棄しても、Dから回ってきた相続が残ると根本的な解決になりません。
「Cから回ってきた相続」と「Dから回ってきた相続」の両方を相続放棄しなければ、Aの相続問題は解決できないです。
遠い親戚の相続が回ってきている場合、集めた戸籍から相続の経路を確認してください。
もし相続の経路が複数なら相続放棄も複数必要になります。
4.遠い親戚の相続を放置するのは危険
遠い親戚の相続を放置するのは危険なので止めてください。
- 相続人としての義務(返済・支払い)が発生する
- 知った日から3ヶ月経過すると相続放棄できない
- 相手方への意思表示では相続放棄にならない
何もせず放置しておくと、遠い親戚の相続が確定して義務から逃れられなくなります。
4-1.債務の返済義務や固定資産税の支払い義務が発生
債権者や市役所からの書面を無視しても、あなたが相続人であれば、債務の返済義務や固定資産税の支払い義務が発生します。
遠い親戚だから関係ないと考えても、法律にしたがって請求書(督促状)は届いているので、無視しても解決しません。
債権者や市役所から請求を無視し続けると、最終的に「あなたの財産」が差し押さえられます。
亡くなったのが遠い親戚であっても、相続が回ってきているなら相続人としての義務が発生するので注意してください。
4-2.知った日から3ヶ月経過すると相続放棄できない
遠い親戚の相続についても、相続の開始を知った日から3ヶ月経過すると、単純承認したとみなされます。
- 単純承認
-
亡くなった人の権利・義務をすべて引き継ぐ
つまり、債権者や市役所からの書面を無視している間に3ヶ月経過すると、相続放棄したくても認められないです。
遠い親戚の相続人だと書面が届いた場合は、無視して放置するのではなく、本当に相続人なのか確認して、3ヶ月以内に相続または相続放棄の判断をしてください。
関連記事を読む『相続放棄の期間は3ヶ月以内|絶対に経過しないよう早めに行動』
4-3.相手方への意思表示では相続放棄にならない
本人は放置したつもりがなくても、意思表示だけでは相続放棄になりません。
相続放棄は家庭裁判所の手続きであり、その他の方法では成立しないからです。たとえ相手方に相続放棄する旨を伝えても、それだけでは放置しているのと同じになります。
意思表示だけで済ませている間に3ヶ月経過すると、単純承認したとみなされます。
相手方への意思表示よりも、相続放棄の手続きを急いでください。
5.遠い親戚の相続放棄に関するQ&A
遠い親戚の相続放棄について、よくある質問と回答をまとめました。
遠い親戚が遠方に住んでいた場合、郵送でも手続きできますか?
郵送でも相続放棄できます。窓口に行かなくても手続き可能です。
遠い親戚が誰か分からない場合、どうすればよいですか?
両親や祖父母の兄弟姉妹を確認して、苗字や名前が一致する人を探してください。婚姻相手の苗字も重要です。
遠い親戚と会ったことが無くても、相続人になりますか?
なります。面識の有無は関係ありません。
遠い親戚の相続財産が一部しか分からなくても、相続放棄できますか?
できます。相続財産が一部しか分からなくても手続きは可能です。
ただし、知らなかった財産も相続できないので注意してください。
上記以外にも、相続放棄のQ&Aは100以上あるので参考にしてください。

6.遠い親戚の相続放棄を専門家に相談・依頼
遠い親戚の相続放棄が難しいと感じた場合や時間が取れない場合などは、専門家に相談・依頼してください。
専門家であれば遠い親戚の相続放棄にも慣れているので、あなたが気付いていない問題にも気付く可能性があります。
どの経路で相続が回ってきたのか、どの相続放棄をすれば良いのか、どの相続放棄なら認められるのか、豊富な経験で答えてくれます。
ほとんどの事務所は無料相談を設けているので、疑問があるなら自分だけで判断せず相談してください。
7.まとめ

遠い親戚の相続放棄について、重要なポイントをまとめます。
亡くなった人が遠い親戚であっても、相続が複数回発生していると相続が回ってきます。
- 兄弟姉妹の配偶者
- おじ・おばの配偶者
- 祖父母の兄弟姉妹
遠い親戚の相続放棄では、戸籍の枚数が多くなったり、家庭裁判所に事情説明が必要だったりと、通常の手続きよりは手間がかかります。
相続の通知を放置していると、3ヶ月経過により相続放棄できなくり、債務の返済義務や固定資産税の支払い義務が発生します。電話での意思表示では相続放棄できないので注意してください。
遠い親戚からの相続通知を受け取ったら、まず自分が相続人になっているかを確認し、早めに対応しましょう。分からない場合は専門家に相談してください。



