「相続放棄の申述書を提出した後で、やっぱり相続したい」と考え直し、急いで取り下げの手続きをする人もいます。
相続財産の価値が思ったよりも高額だったや、提出後に財産を発見するケースもあるからです。
ただし、相続放棄の申述が受理されると、取り下げは認められません。まだ受理通知書が届いていないなら、今すぐ家庭裁判所に電話してください。
今回の記事では「相続放棄の取下げ」について説明しているので、間に合わなかった人も確認しておいてください。
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1.相続放棄の審判前なら取り下げ可能
家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出しても、受理される前なら取り下げできます。
なぜなら、家事審判の申立ては、審判があるまで取り下げ可能だからです。
以下は、家事事件手続法の条文。
もし事情が変わって相続放棄を止めたいなら、今すぐ家庭裁判所に電話してください。
相続放棄の申述が受理されると、取り下げできなくなります。
2.相続放棄を取り下げるなら今すぐ電話
相続放棄を取り下げるなら、今すぐ提出先の家庭裁判所に電話してください。
なぜなら、審判(受理)までの期間は、ケースごとに違うからです。
2-1.審判までの期間はケースごとに違う
相続放棄申述書を提出してから、審判までの期間はケースごとに違います。
早いケースだと数日で終わりますし、遅いケースだと1ヶ月ほどかかります。
以下は、違いが生じる主な要因です。
- 家庭裁判所の事務処理能力
- 相続放棄の内容が難しいか
- 添付書類が揃っているか
上記以外で、重要な要因としては、照会書が省略されるかどうかです。
2-2.照会書が省略されると審判まで早い
家庭裁判所からの照会書が省略されると、審判までの期間は早くなります。
ただし、照会書を省略するかは、家庭裁判所により違うので、提出しないと分かりません。
もし照会書が省略されるケースであれば、取り下げまでの時間はわずかです。
すでに申述書を提出しているなら、今すぐ家庭裁判所に電話してください。
関連記事を読む『【相続放棄の照会書(回答書)】記載内容について詳細に説明』
2-3.家庭裁判所に相続放棄の取下書を提出
家庭裁判所に電話で取り下げの意思を伝えれば、取下書の提出を求められます。
なぜなら、電話では言った言わないになるので、証拠としての書面が必要になるからです。
家庭裁判所によって違うかもしれませんが、一般的には取下書を郵送してくれます。
※取下書を自分で作成するケースもある。
郵送された取下書に必要事項を記入して、署名捺印(申述書に押印した印鑑)したら送り返してください。
3.相続放棄の取り下げが間に合わなかった
相続放棄の取り下げができる期間は短いので、間に合わない人がほとんどです。
そこで、間に合わなかった場合についても、説明していきます。
- 撤回は法律で禁止されている
- 取消事由に該当しないか確認
- 相続人がいるなら相談する
- 相続人がいないなら特別縁故者
財産が取得できる可能性は残されているので、諦めずに確認しておいてください。
3-1.撤回は法律で禁止されている
相続放棄の撤回は、法律により禁止されています。
以下は、民法の条文です。
財産が見つかった、気が変わったなど、理由に関わらず撤回できません。
法律で禁止されている以上、取り下げが間に合わなかった場合も認められません。
関連記事を読む『相続放棄の撤回は認められない!事情に関わらず禁止されている』
3-2.取消事由に該当しないか確認
相続放棄の撤回は禁止されていますが、取消事由に該当するなら取消しはできます。
以下は、主な取消事由です。
- 詐欺または脅迫があった
- 成年被後見人が相続放棄した
- 保佐人の同意を得ていない
相続放棄も法律行為なので、取消事由に該当しているなら取り消せます。
取り消しに関しては、以下の記事を参考にしてください。
関連記事を読む『取消事由に該当すれば相続放棄も取消し可能【債権者は不可】』
3-3.相続人がいるなら財産について相談
相続放棄した後に財産が見つかった場合、相続人が他にいるなら相談してみてください。
※相続放棄していない人がいる。
なぜなら、あなたに譲ってくれる可能性もあるからです。
【事例】
被相続人|父親
相続人 |子(A・B)
相続財産|借金(100万円)
相続放棄|B
父親が亡くなり、財産も借金しかなかったので、Bはすぐに相続放棄しました。
ところが、定期預金(500万円)が見つかったと、Aから連絡があった。
AとBは相談のうえ、借金を支払った残額の半分を、AからBに贈与すると決めた。
他に相続人がいるなら、念のため相談してください。場合によっては、財産を譲ってくれるかもしれません。
もちろん、相続人に譲る義務はないので、あくまでも相談できるだけです。
3-4.相続人がいないなら特別縁故者を検討
相続放棄した後に財産が見つかった場合、相続人が他にいないなら特別縁故者を検討してください。
※全員が相続放棄している。
過去には、相続放棄した人が特別縁故者として、財産を取得できたケースもあるからです。
もちろん、特別縁故者の要件を満たす必要があるので、すべてのケースで認められるとは限りません。
相続人が存在せず、かつ、相続財産が存在するなら、最終手段として検討してください。
関連記事を読む『特別縁故者には相続放棄をした相続人も要件を満たせば該当する』
4.取り下げを当てにして相続放棄は選べない
すでに説明したとおり、取り下げができる時間はわずかです。人によっては1日かもしれません。
したがって、取り下げを当てにして、相続放棄は選べません。財産が見つかっても後悔しない人だけ、相続放棄を選んでください。
後悔しそうな人は、下記の方法を検討しましょう。
- 期間を延長して財産を探す
- 限定承認して財産を相続
もしかしたら、財産が見つかるかもしれません。
4-1.期間を延長して財産を探す
相続放棄の期間は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内となります。
ただし、相続の事情によっては、期間の延長も可能です。
- 亡くなった人の財産が遠方にある
- 亡くなった人と疎遠だった
- 相続人同士で連絡が取れない
上記に該当するなら、「期間伸長の申立て」も選択肢となります。
財産が見つかったら取り下げるは無理なので、後悔しないように探してください。
関連記事を読む『【相続放棄の期間延長】どのくらい伸ばせるかは事情により違う』
4-2.限定承認して財産を相続する
見つかってない財産を相続したいなら、限定承認するという方法もあります。
以下は、限定承認の主な特徴です。
- プラスを限度にマイナスを負担
- 後から財産が見つかっても相続できる
- 家庭裁判所に限定承認の申立てが必要
たとえ財産が見つからなくても、プラスの財産を限度にマイナスの財産を負担するだけです。
もし財産が見つかって、プラスの財産が多ければ相続できます。
限定承認のメリット・デメリットについては、下記の記事を参考にしてください。
関連記事を読む『限定承認のメリットとデメリットを4つずつ説明』
5.まとめ
今回の記事では「相続放棄の取り下げ」について説明しました。
相続放棄の申述書を提出しても、審判(受理)前であれば取り下げできます。
ただし、審判までの期間はケースごとに違い、数日しかない場合もあります。
相続放棄を取り下げたいなら、今すぐ家庭裁判所に電話してください。1日後回しにするだけで、間に合わない可能性があるからです。
相続放棄の取り下げが間に合わなかった場合、以下を検討してください。
- 取消しや無効に該当しないか
- 相続人がいるなら相談する
- 相続人がいないなら特別縁故者
上記に該当すると、財産を取得できるケースも存在します。
取り下げを当てにして相続放棄はできないので、後悔しないように財産を探しておきましょう。