単純承認は相続放棄する前だけでなく、終わった後も気にする必要があります。
なぜなら、単純承認の規定は、終わった後にもあるからです。
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相続放棄した後にも単純承認の規定はあるので、相続財産を勝手に使用するのは止めてください。
終わった後に注意すべきポイントは、単純承認以外にもあります。
- 連絡の有無
- 財産が見つかった
- 相続税
- 相続財産清算人
- 別の相続発生
後から財産が見つかっても、放棄の撤回はできません。財産が高額であっても結論は同じです。
今回の記事では「相続放棄した後」について説明しているので、しっかりと確認しておいてください。
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1.相続放棄した後にしてはいけないこと
相続放棄した後も、単純承認には注意してください。
- 単純承認
-
亡くなった人の権利義務をすべて相続すること
なぜなら、相続放棄が認められた後は、単純承認にならないと勘違いしている人がいるからです。
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相続放棄した後なら相続財産を使っても大丈夫ですか?
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相続放棄した後も禁止です
相続放棄する前だけでなく、終わった後も注意する必要があります。
関連記事を読む『相続放棄が認められない|単純承認とみなされる3つの行為』
1-1.財産の隠匿や消費は単純承認
相続人が相続放棄した後であっても、単純承認とみなされる規定は存在します。
以下は、民法の条文です。
(法定単純承認) 第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。 (省略) 三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。
※相続財産の目録は限定承認の場合
- 相続財産の隠匿
- 相続財産の消費
上記の行為は、相続放棄した後もしないでください。
相続財産の隠匿
相続放棄した後であっても、相続財産の隠匿はしないでください。
- 隠匿
-
相続財産の全部または一部の所在を不明にする行為
例えば、相続放棄した後に、被相続人の財産を黙って持ち去れば、単純承認したとみなされます。
相続放棄の前後を問わず、相続財産の隠匿は止めてください。
相続財産の消費
相続放棄した後であっても、相続財産の消費はしないでください。
- 私に消費
-
勝手に相続財産を処分して原形の価値を失わせる
例えば、相続放棄した後に、不動産等を処分すると、単純承認したとみなされます。
相続放棄の前後を問わず、相続財産の消費は止めてください。
1-2.債権者は相続放棄の無効を主張できる
相続放棄した後に単純承認とみなされた場合、債権者は相続放棄の無効を主張できます。
なぜなら、申述が受理された後であっても、無効の主張は禁止されていないからです。
【事例】
被相続人|父親
相続人 |子(A)
相続放棄|A
相続財産|預貯金(200万円)負債(400万円)
財産消費|相続放棄後に200万円を消費
債権者は貸金返還請求訴訟を提起して、訴訟内で単純承認によりAの相続放棄は無効だと主張できます。
相続放棄の無効が認められると、相続人として債務の返還義務が発生します。
相続放棄した後であっても、債権者は単純承認による無効を主張できます。
放棄した理由が債務超過(負債の方が多い)なら、絶対に相続財産を消費しないでください。
関連記事を読む『相続放棄の無効を争うことは可能!訴訟の中で主張する必要がある』
1-3.他の相続人が相続した場合は除く
民法921条3項の規定(相続放棄した後の単純承認)は、他の相続人が相続した場合は適用されません。
なぜなら、すでに相続財産は相続人の財産なので、「相続放棄した人」と「相続人」の問題になるからです。
【事例】
被相続人|父親
相続人 |子(A・B)
相続放棄|B
相続財産|Bは実家から現金100万円を持ち去った
Bの行為は単純承認ではなく、Aの財産を持ち去ったになるので、AとBの問題になります。
相続を選んだ相続人がいるなら、相続放棄した後に単純承認を恐れる必要はありません。
もちろん、相続人ではないので、不必要に関わる必要もないです。
2.相続放棄した後の連絡は誰がする
相続放棄が認められても、家庭裁判所は第3者に対して何の連絡もしてくれません。申述人(本人)に受理通知書を送付するだけです。
したがって、第3者に相続放棄を知らせるなら、自分で連絡するしかありません。
2-1.家庭裁判所は連絡してくれない


相続放棄が受理されると、家庭裁判所は申述人(本人)に受理通知書を送付します。
ただし、債権者や市役所等に連絡はしてくれません。
あくまでも、家庭裁判所は相続放棄の申述を受理するだけなので、第3者への連絡は自分でする必要があります。
次章では、債権者と後順位相続人への連絡について説明していきます。
関連記事を読む『相続放棄を連絡する必要はあるのか?家庭裁判所は知らせない!』
2-2.債権者には受理通知書のコピー


相続放棄した後に債権者等へ連絡するなら、受理通知書のコピーを送付しましょう。
債権者からは受理証明書を求められるケースもありますが、受理通知書のコピーで十分です。
実際、私が依頼を受けた相続放棄では、受理通知書のコピーで何の問題も発生していません。
受理証明書の発行は有料(150円)なので、わざわざ取得する必要はないです。
関連記事を読む『【相続放棄申述受理通知書】再発行できないのでコピーを渡そう』
2-3.後順位相続人は関係性で判断


相続放棄した後に後順位相続人へ連絡するかは、関係性で判断するようアドバイスしています。
後順位相続人(親の兄弟姉妹や甥姪)と交流があれば、連絡すれば良いでしょう。
一方、交流がない(連絡先も知らない)のであれば、連絡しなくても特に問題ないでしょう。
法律上の決まりはないので、関係性で判断するしかありません。
関連記事を読む『相続放棄すると次順位の相続人に負債等が移ってしまう』
3.相続放棄した後に財産が見つかった
相続放棄した後に財産が見つかるケースは存在します。
ただし、相続人ではないので、財産の内容に関わらず相続できないです。
3-1.相続放棄の撤回は認められない


高額な財産が見つかっても、相続放棄の撤回は認められません。
なぜなら、法律により禁止されているからです。
以下は、民法の条文。
第九百十九条 相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。
たとえ相続の開始を知った日から3ヶ月以内だったとしても、撤回は認められません。
後から財産が見つかって後悔するなら、初めから単純承認または限定承認を選ぶべきです。
関連記事を読む『相続放棄の撤回は認められない!事情に関わらず禁止されている』
3-2.他に相続人がいるなら交渉は可能
相続放棄した後にプラスの財産が見つかった場合、他に相続人(相続放棄していない人)がいるなら、交渉してみましょう。
「見つかった財産」は相続人の財産なので、相手が交渉に応じて贈与してくれる可能性はあるからです。
※贈与税には注意。
【事例】
被相続人 |父親
相続人 |子(A・B)
相続放棄 |A
後から発見|定期預金(1,000万円)
Aは相続放棄しているので、定期預金はBの財産となります。
その後、AとBで話し合いをして、BからAに500万円を贈与すると決めた。
もちろん、相手に応じる義務はないので、財産を取得できる保証はありません。
万が一、相続放棄した後にプラスの財産が見つかった時の、最後の手段として覚えておいてください。
3-3.後から借金が見つかっても問題ない
相続放棄した後に、新たな借金が見つかっても問題ありません。
初めから相続人ではないので、亡くなった人の借金が増えても、あなたには何の影響もないからです。
【事例】
被相続人|父親
相続人 |子(A)
相続放棄|A
相続財産|負債(100万円)
Aは相続放棄しているので、後から負債が見つかっても、何の関係もありません。
「知っている財産」だけでなく、「知らなかった財産」も含めて放棄しています。
後から借金が見つかることに不安があるので、相続放棄を選んでいる人は珍しくありません。
3-4.相続財産以外は固有の権利で受け取れる


相続放棄すると相続財産は受け取れません。
一方、相続財産以外に関しては、相続と無関係なので受け取れます。
以下は、主な財産です。
- 生命保険金
- 葬祭費・埋葬料
- 未支給年金
- 遺族年金
- 死亡退職金
- 祭祀財産
- 香典や霊前
上記の財産は、相続とは違うルールで受け取るので、相続放棄した後も受け取れます。
【事例】
被相続人 |父親
相続人 |子(A)
相続放棄 |A
生命保険金|1,000万円
受取人 |A
Aは相続放棄していますが、生命保険契約により1,000万円を受け取れます。
相続放棄した後に財産が見つかったら、「相続財産」と「相続財産以外」のどちらに該当するか確認してください。
関連記事を読む『【相続放棄をしても受け取れるもの】固有の権利で取得する財産』
4.相続放棄した後も相続税には注意
相続放棄した後も相続税には注意してください。
なぜなら、相続放棄した人であっても、相続税が課税されるケースはあるからです。
- 遺贈により財産を取得
- 生命保険金を受け取った
- 死亡退職金を受け取った
- 相続時精算課税を適用している
上記に該当すると、相続放棄していても相続税の課税対象者となります。
ただし、基礎控除は適用されるので、基礎控除以下であれば相続税は発生しません。
相続放棄した場合でも、相続税には注意する必要があります。
関連記事を読む『相続放棄しても基礎控除は変わらない!計算する際の人数は同じ』
5.相続放棄した後に相続財産清算人の申立て
相続放棄した後に相続財産清算人の申立てをするかは、相続財産の内容によって違います。
一般的に、相続財産の中に不動産が含まれていると、申立てを検討するケースが多いです。
5-1.土地やマンションの保存義務を引き継ぎたい
相続財産の中に建物や土地が含まれていると、相続放棄した後に保存義務の問題が残ります。
※不動産を占有していた相続人。
そこで、保存義務の問題を解決するために、相続財産清算人の選任を検討します。
なぜなら、相続財産清算人が選任されると、相続財産を引き継いでもらえるからです。保存義務に関しても清算人が引き継ぎます。
相続放棄した後の保存義務(管理義務)に関しては、下記の記事で詳しく説明しています。
関連記事を読む『【相続放棄後の管理義務】法改正後の940条で責任者が明確になる』
5-2.予納金は申立人の負担となる


相続財産清算人を選任するにあったて、一番の問題は予納金の負担です。
- 予納金
-
前もって家庭裁判所に納める金銭
予納金は約100万円であり、申立人の負担となります。予納金を納めなければ、相続財産清算人は選任されません。
相続放棄した後に清算人を選任する予定なら、前もって予納金も用意しておいてください。
関連記事を読む『相続財産清算人は相続放棄により必要な場合がある』
6.相続放棄した後に発生した相続
亡くなった人の相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったみなされます。
ただし、相続放棄した後に別の相続が発生すれば、相続放棄とは関係なく相続人となります。
よくある事例としては、以下があります。
- 父親の相続放棄をした後に母親が亡くなる
- 親の相続放棄をした後に祖父母が亡くなる
- 親の相続放棄をした後におじ・おばが亡くなる
それぞれ説明していきます。
6-1.父親の放棄をした後に母親が亡くなる
父親の相続放棄をした後に、母親の相続が発生するケースは少なくありません。
ただし、父親の相続と母親の相続は別なので、改めて相続の判断をする必要があります。
父親の相続 | 母親の相続 |
---|---|
相続放棄 | 単純承認 |
限定承認 | |
相続放棄 |
父親の相続放棄をした人も、母親の相続を単純承認できます。もちろん、母親の相続放棄をするのも自由です。
あくまでも、父親と母親の相続は別になります。
6-2.親の放棄をした後に祖父母が亡くなる
親の相続放棄をした後に、祖父母の相続が発生するケースもあります。
例えば、父親の相続放棄をした後に、父方の祖母が亡くなった場合です。
父親の放棄をしていても、祖母の相続人になります。父親と祖母の相続は別問題です。
親の相続放棄をすると、代襲相続人になれないと勘違いする人もいますが、法律にしたがって相続人になります。
6-3.親の放棄をした後におじ・おばが亡くなる
親の相続放棄をした後に、おじ・おばの相続人になるケースがあります。
なぜなら、親(被相続人の兄弟姉妹)が先に亡くなっていれば、甥姪が代襲相続人になるからです。
例えば、父親の相続放棄をした後に、父方のおじが亡くなれば、甥姪として相続人になります。
※先順位相続人が存在しない場合。
たとえ親の相続放棄をしていても、おじ・おばの相続は別なので、改めて相続の判断が必要になります。
7.まとめ
今回の記事では「相続放棄した後」について説明しました。
相続放棄した後であっても、単純承認とみなされる規定はあります。
- 相続財産の隠匿
- 相続財産の消費
ただし、他の相続人が相続している場合は除きます。
相続放棄した後に連絡するかは、本人が判断する必要があります。家庭裁判所は連絡してくれないからです。
相続放棄し後に財産が見つかっても、撤回は認められません。たとえ財産が高額であっても結論は同じです。
相続人が全員相続放棄した後であれば、相続財産清算人の選任も可能です。ただし、申立人は予納金を負担する必要があるので、申立てをする前に確認しておいてください。
相続放棄が認められた後に、新たな相続が発生した場合、改めて相続の判断が必要になります。
相続放棄した後に関するQ&A
- 相続放棄した後に債権者から催告状が届きました。なぜでしょうか?
-
債権者は相続放棄を調べずに書面を送ってきます。受理通知書のコピーを返送しましょう。
- 相続放棄した後に財産が見つかりました。家庭裁判所に報告する必要はありますか?
-
相続人ではないので、連絡する必要はありません。