相続放棄した後も、注意すべきポイントは複数あります。
- 単純承認
- 連絡の有無
- 撤回の禁止
- 相続財産清算人
- 別の相続発生
相続放棄した後にも単純承認の規定はあるので、勝手に相続財産を使用するのは禁止です
後から財産が見つかっても、放棄の撤回はできません。財産が高額であっても結論は同じです。
今回の記事では「相続放棄した後」について説明しているので、しっかりと確認しておいてください。
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1.相続放棄した後も単純承認に注意
相続放棄した後も、単純承認には注意してください。
なぜなら、相続放棄が認められた後は、単純承認にならないと勘違いしている人もいるからです。
相続放棄した後なら相続財産を使っても大丈夫ですか?
相続放棄した後も禁止です
1-1.財産の隠匿や消費は単純承認
相続人が相続放棄した後であっても、単純承認とみなされる規定は存在します。
以下は、民法の条文です。
※相続財産の目録は限定承認の場合
- 相続財産の隠匿
- 相続財産の消費
上記の行為は、相続放棄した後もしないでください。
相続財産の隠匿
相続放棄した後であっても、相続財産の隠匿はしないでください。
- 隠匿
-
相続財産の全部または一部の所在を不明にする行為
例えば、相続放棄した後に、被相続人の財産を黙って持ち去れば、単純承認したとみなされます。
相続放棄の前後を問わず、相続財産の隠匿は止めてください。
相続財産の消費
相続放棄した後であっても、相続財産の消費はしないでください。
- 私に消費
-
勝手に相続財産を処分して原形の価値を失わせる
例えば、相続放棄した後に、不動産等を処分すると、単純承認したとみなされます。
相続放棄の前後を問わず、相続財産の消費は止めてください。
1-2.他の相続人が相続した場合は除く
民法921条3項の規定(相続放棄した後の単純承認)は、他の相続人が相続した場合は適用されません。
なぜなら、すでに相続財産は相続人の財産なので、「相続放棄した人」と「相続人」の問題になるからです。
【事例】
被相続人|父親
相続人 |子(A・B)
相続放棄|B
相続財産|Bは実家から現金100万円を持ち去った
Bの行為は単純承認ではなく、Aの財産を持ち去ったになります。
相続を選んだ相続人がいるなら、相続放棄した後に単純承認を恐れる必要はありません。
もちろん、相続人ではないので、不必要に関わる必要もないです。
2.相続放棄した後の連絡は誰がする
相続放棄が認められても、家庭裁判所は第3者に対して何の連絡もしてくれません。申述人(本人)に受理通知書を送付するだけです。
したがって、第3者に相続放棄を知らせるなら、自分で連絡するしかありません。
2-1.家庭裁判所は連絡してくれない
相続放棄が受理されると、家庭裁判所は申述人(本人)に受理通知書を送付します。
ただし、債権者や市役所等に連絡はしてくれません。
あくまでも、家庭裁判所は相続放棄の申述を受理するだけなので、第3者への連絡は自分でする必要があります。
次章では、債権者と後順位相続人への連絡について説明していきます。
関連記事を読む『相続放棄を連絡する必要はあるのか?家庭裁判所は知らせない!』
2-2.債権者には受理通知書のコピー
相続放棄した後に債権者等へ連絡するなら、受理通知書のコピーを送付しましょう。
債権者からは受理証明書を求められるケースもありますが、受理通知書のコピーで十分です。
実際、私が依頼を受けた相続放棄では、受理通知書のコピーで何の問題も発生していません。
受理証明書の発行は有料(150円)なので、わざわざ取得する必要はないです。
関連記事を読む『【相続放棄申述受理通知書】再発行できないのでコピーを渡そう』
2-3.後順位相続人は関係性で判断
相続放棄した後に後順位相続人へ連絡するかは、関係性で判断するようアドバイスしています。
後順位相続人(親の兄弟姉妹や甥姪)と交流があれば、連絡すれば良いでしょう。
一方、交流がない(連絡先も知らない)のであれば、連絡しなくても特に問題ないでしょう。
法律上の決まりはないので、関係性で判断するしかありません。
関連記事を読む『相続放棄すると次順位の相続人に負債等が移ってしまう』
3.相続放棄した後に財産が見つかった
相続放棄した後に財産が見つかるケースは存在します。
ただし、相続人ではないので、財産の内容に関わらず相続できないです。
3-1.相続放棄の撤回は認められない
高額な財産が見つかっても、相続放棄の撤回は認められません。
なぜなら、法律により禁止されているからです。
以下は、民法の条文。
たとえ相続の開始を知った日から3ヶ月以内だったとしても、撤回は認められません。
後から財産が見つかって後悔するなら、初めから単純承認または限定承認を選ぶべきです。
関連記事を読む『相続放棄の撤回は認められない!事情に関わらず禁止されている』
3-2.後から借金が見つかっても問題ない
相続放棄した後に、新たな借金が見つかっても問題ありません。
初めから相続人ではないので、亡くなった人の借金が増えても、あなたには何の影響もないからです。
「知っている財産」だけでなく、「知らなかった財産」も含めて放棄しています。
後から借金が見つかることに不安があるので、相続放棄を選んでいる人は珍しくありません。
3-3.相続財産以外は固有の権利で受け取れる
相続放棄すると相続財産は受け取れません。
一方、相続財産以外に関しては、相続と無関係なので受け取れます。
以下は、主な財産です。
- 生命保険金
- 葬祭費・埋葬料
- 未支給年金
- 遺族年金
- 死亡退職金
- 祭祀財産
- 香典や霊前
上記の財産は、相続とは違うルールで受け取るので、相続放棄した後も受け取れます。
相続放棄した後に財産が見つかったら、「相続財産」と「相続財産以外」のどちらに該当するか確認してください。
関連記事を読む『【相続放棄をしても受け取れるもの】固有の権利で取得する財産』
4.相続放棄した後に相続財産清算人の申立て
相続放棄した後に相続財産清算人の申立てをするかは、相続財産の内容によって違います。
一般的に、相続財産の中に不動産が含まれていると、申立てを検討するケースが多いです。
4-1.土地やマンションを引き継ぎたい
相続財産の中に建物や土地が含まれていると、相続放棄した後に保存義務の問題が残ります。
※不動産を占有していた相続人。
そこで、保存義務の問題を解決するために、相続財産清算人の選任を検討します。
なぜなら、相続財産清算人が選任されると、相続財産を引き継いでもらえるからです。保存義務に関しても清算人が引き継ぎます。
相続放棄した後の保存義務(管理義務)に関しては、下記の記事で詳しく説明しています。
関連記事を読む『【相続放棄後の管理義務】法改正後の940条で責任者が明確になる』
4-2.予納金は申立人の負担となる
相続財産清算人を選任するにあったて、一番の問題は予納金の負担です。
- 予納金
-
前もって家庭裁判所に納める金銭
予納金は約100万円であり、申立人の負担となります。予納金を納めなければ、相続財産清算人は選任されません。
相続放棄した後に清算人を選任する予定なら、前もって予納金も用意しておいてください。
関連記事を読む『相続財産清算人は相続放棄により必要な場合がある』
5.相続放棄した後に発生した相続
亡くなった人の相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったみなされます。
ただし、相続放棄した後に別の相続が発生すれば、相続放棄とは関係なく相続人となります。
よくある事例としては、以下があります。
- 父親の相続放棄をした後に母親の相続発生
- 親の相続放棄をした後におじ・おばの相続発生
それぞれ説明していきます。
5-1.父親の相続放棄をした後に母親の相続発生
父親の相続放棄をした後に、母親の相続が発生するケースは少なくありません。
ただし、父親の相続と母親の相続は別なので、改めて相続の判断をする必要があります。
父親の相続 | 母親の相続 |
---|---|
相続放棄 | 単純承認 |
限定承認 | |
相続放棄 |
父親の相続放棄をした人も、母親の相続を単純承認できます。もちろん、母親の相続放棄をするのも自由です。
あくまでも、父親と母親の相続は別になります。
5-2.親の相続放棄をした後におじ・おばの相続発生
親の相続放棄をした後に、おじ・おばの相続人になるケースがあります。
なぜなら、親(被相続人の兄弟姉妹)が先に亡くなっていれば、甥姪が代襲相続人になるからです。
例えば、父親の相続放棄をした後に、父方の叔父が亡くなれば、甥姪として相続人になります。
※先順位相続人が存在しない場合。
たとえ親の相続放棄をしていても、おじ・おばの相続は別なので、改めて相続の判断が必要になります。
6.まとめ
今回の記事では「相続放棄した後」について説明しました。
相続放棄した後であっても、単純承認とみなされる規定はあります。
- 相続財産の隠匿
- 相続財産の消費
ただし、他の相続人が相続している場合は除きます。
相続放棄した後に連絡するかは、本人が判断する必要があります。家庭裁判所は連絡してくれないからです。
相続放棄し後に財産が見つかっても、撤回は認められません。たとえ財産が高額であっても結論は同じです。
相続人が全員相続放棄した後であれば、相続財産清算人の選任も可能です。ただし、申立人は予納金を負担する必要があるので、申立てをする前に確認しておいてください。
相続放棄が認められた後に、新たな相続が発生した場合、改めて相続の判断が必要になります。