相続放棄しても基礎控除は変わらない!計算する際の人数は同じ

相続放棄と基礎控除
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相続人の中に相続放棄した人がいても、相続税の基礎控除額は変わりません。

なぜなら、基礎控除の計算では、相続放棄する前の人数で計算するからです。

例えば、相続人が3人から1人に減っても、計算上は3人となります。

基礎控除は相続放棄した人にも適用されるので、しっかりと確認しておいてください。

目次

1.相続放棄しても基礎控除の額は同じ

相続放棄の有無に関わらず基礎控除は同じ

相続税の基礎控除を計算する際は、相続人の人数を使用します。

ただし、相続放棄により相続人の人数が変わっても、基礎控除の額は同じです。

1-1.基礎控除額は人数が関係する

相続人の人数によって基礎控除額は変わる

相続税の基礎控除額は、相続人の人数によって変動します。

以下は、相続税法の条文です。

(遺産に係る基礎控除)
第十五条 相続税の総額を計算する場合においては、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格(第十九条の規定の適用がある場合には、同条の規定により相続税の課税価格とみなされた金額。次条から第十八条まで及び第十九条の二において同じ。)の合計額から、三千万円と六百万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額(以下「遺産に係る基礎控除額」という。)を控除する。
出典:e-Govウェブサイト(相続税法15条1項)

基礎控除額は最低3,000万円であり、相続人1人につき600万円ずつ増えていきます。

相続人基礎控除
13,600万円
24,200万円
34,800万円
45,400万円
相続人の人数と基礎控除

上記の金額は、相続人の中に相続放棄した人がいても変わらないです。

1-2.相続放棄する前の人数で計算

基礎控除は相続放棄前の人数で計算

相続放棄すると相続人ではありませんが、基礎控除の額は変わりません。

なぜなら、相続放棄はなかったものとして、基礎控除を計算するからです。

以下は、相続税法の条文です。

(遺産に係る基礎控除)
第十五条 (省略)
2 前項の相続人の数は、同項に規定する被相続人の民法第五編第二章(相続人)の規定による相続人の数(当該被相続人に養子がある場合の当該相続人の数に算入する当該被相続人の養子の数は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める養子の数に限るものとし、相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人の数とする。)とする。
出典:e-Govウェブサイト(相続税法15条2項)

以下の表は、相続人が相続放棄(1人)した場合の、相続人の人数を表しています。

放棄前放棄後基礎控除
101
212
32人3
相続人の人数

基礎控除は相続放棄する前の人数で計算するので、間違えないように注意してください。

2.相続放棄した場合の基礎控除を計算

相続放棄した人がいる場合の基礎控除について、事例を用いて計算していきます。

あなたの相続に該当するケースがあれば、参考にしてください。

2-1.共同相続人の人数が減った

共同相続人が相続放棄すると、相続人の人数が減ります。

ただし、基礎控除の計算上は、相続放棄する前の人数で計算します。

【事例1】

被相続人|A
相続人 |子ども(B・C・D)
相続放棄|D

法定相続人の人数は、相続放棄により3人から2人に減ります。

ですが、基礎控除は法定相続人を3人として計算します。

3,000万円+600万円×3=4,800万円

【事例2】

被相続人|A
相続人 |子ども(B・C・D)
相続放棄|C・D

法定相続人の人数は、相続放棄により3人から1人に減ります。

ですが、基礎控除は法定相続人を3人として計算します。

3,000万円+600万円×3=4,800万円

相続放棄した共同相続人の人数に関わらず、相続税の基礎控除額は変わりません。

基礎控除を計算する際は、相続放棄を気にしないでください。

2-2.後順位相続人に相続が移った

先順位相続人が全員相続放棄すると、後順位相続人に相続権が移ります。相続順位が変わると、相続人の人数も増減します。

ただし、基礎控除の計算上は、相続放棄する前(順位変更する前)の人数で計算します。

【事例1】

被相続人  |A
先順位相続人|子ども(B・C)
後順位相続人|兄弟姉妹(D)

法定相続人の人数は、相続放棄により2人から1人に減ります。

ですが、基礎控除は法定相続人を2人として計算します。

3,000万円+600万円×2=4,200万円

【事例2】

被相続人  |A
先順位相続人|子ども(B)
後順位相続人|兄弟姉妹(C・D・E)

法定相続人の人数は、相続放棄により1人から3人に増えます。

ですが、基礎控除は法定相続人を1人として計算します。

3,000万円+600万円×1=3,600万円

相続放棄により相続順位の変更が発生しても、相続税の基礎控除額は変わりません。

後順位相続人に相続税が発生する場合、基礎控除の計算には注意してください。

3.相続放棄と基礎控除の注意点

相続放棄と基礎控除の注意点は3つ

相続放棄と基礎控除の注意点についても、説明していきます。

勘違いしやすいので、しっかりと確認しておいてください。

3-1.相続放棄した人が取得した財産

相続放棄した人が取得した財産も相続税の課税対象

相続放棄すると相続人ではありません。

ただし、相続放棄した人(相続人以外)が取得した財産は、相続税の課税対象となります。
※下記以外にもあります。

上記の金額を加えた結果、基礎控除額を超えれば、相続税は課税されます。

【事例】

被相続人 |A
相続人  |子ども(B・C)
相続放棄 |C
相続財産 |預貯金(3,000万円
遺贈   |Cに2,000万円を遺贈
課税対象 |3,000万円+2,000万円=5,000万円
基礎控除額|3,000万円+600万円×2=4,200万円

預貯金だけなら基礎控除額以下ですが、遺贈の金額を加えると基礎控除額を超えます。

したがって、B・Cに相続税が課税されます。

基礎控除額を超えるかどうかは、相続放棄した人が取得した財産も関係するので、忘れずに確認しておいてください。

3-2.相続放棄した人も基礎控除は適用

相続放棄した人も相続税の基礎控除は適用される

相続放棄した人(相続人以外)も財産を取得すると、相続税の課税対象となります。

ただし、相続放棄した人も基礎控除は適用されるので、相続財産(みなし相続財産含む)の総額が基礎控除額以下であれば、相続税は課税されません。

【事例】

被相続人 |A
相続人  |子ども(B・C・D)
相続放棄 |D
相続財産 |預貯金(2,000万円
遺贈   |Dに2,000万円を遺贈
課税対象 |2,000万円+2,000万円=4,000万円
基礎控除額|3,000万円+600万円×3=4,800万円

Dは相続放棄していますが、遺贈を受け取っているので、相続税の課税対象者です。

ただし、課税対象となる財産の総額が、基礎控除額以下なので、相続税は非課税となります。

相続放棄した人が財産を取得した場合でも、基礎控除は適用されるので安心してください。

3-3.相続放棄した人が保険金を受け取った

相続放棄した人は保険金の非課税枠が適用されない

相続放棄した人(相続人以外)が生命保険金を受け取った場合、相続税の計算に注意してください。

なぜなら、保険金の非課税枠が適用されず、全額が相続税の課税対象となるからです。

(相続を放棄した者等の取得した保険金)
12-8 相続を放棄した者又は相続権を失った者が取得した保険金については、法第12条第1項第5号に掲げる保険金の非課税金額の規定の適用がないのであるから留意する。(昭46直審(資)6、昭57直資2-177改正)
出典:国税庁ウェブサイト(第12条《相続税の非課税財産》関係)

相続放棄した結果、基礎控除額を超えるケースはあります。

【事例】

被相続人 |A
相続人  |子ども(B・C・D)
相続財産 |預貯金(4,000万円
生命保険金|1,000万円の受取人はD
基礎控除額|4,800万円

D相続D放棄
預貯金4,000万円4,000万円
保険金非課税1,000万円
課税対象4,000万円5,000万円
基礎控除4,800万円4,800万円
相続税非課税課税
相続放棄と生命保険金の非課税枠

Dが相続放棄すると、保険金の非課税枠が適用されないので、基礎控除額を超えます。

相続放棄しても生命保険金は受け取れます。ただし、非課税枠は適用されないので、相続税を計算する際は注意してください。

4.まとめ

今回記事では「相続放棄と基礎控除」について説明しました。

相続放棄すると相続人ではありません。

ですが、基礎控除の計算では、相続人の人数に含みます。相続放棄はなかったものとして、基礎控除は計算するからです。

相続順位の変更により、相続人の人数に違いが生じても、基礎控除の額は変わりません。

相続放棄した人が相続税の課税対象になる場合でも、基礎控除は適用されます。ただし、保険金の非課税枠は適用されないので、計算する際は注意が必要です。

相続人の中に相続放棄した人がいるなら、今回の記事を参考にしてください。

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