NHK受信料の滞納があっても相続放棄すれば引き継がない

相続放棄とNHK受信料
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亡くなった人がNHK受信料を滞納している場合、相続放棄しなければ相続人が支払い義務を引き継ぎます。

NHK受信料の滞納も債務なので、相続財産に含まれるからです。

相続放棄するのであれば、NHK受信料は支払う必要がありません。相続財産から支払うと、単純承認とみなされる可能性があるので、注意してください。

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1.NHK受信料の滞納分も相続放棄できる

NHK受信料の滞納分も相続放棄の対象

亡くなった人の家にテレビが設置されていれば、NHKの受信料にも注意してください。

なぜなら、受信料の滞納があれば、相続債務となり相続の対象となるからです。

1-1.受信料の滞納分は相続人が引き継ぐ

NHK受信料の滞納分も相続人が引き継ぐ

亡くなった人がNHK受信料を滞納していれば、法律により相続人が引き継ぎます。

以下は、民法の条文です。

第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
出典:e-Govウェブサイト(民法896条)

相続人は亡くなった人の権利義務をすべて引き継ぐので、NHK受信料の滞納分も引き継ぎます。

たとえ離れて暮らしていたとしても、相続するので注意してください。

1-2.相続放棄すると相続債務も引き継がない

相続放棄するとNHK受信料の滞納分も引き継がない

相続人が相続放棄すると、初めから相続人ではなかったとみなされます。

以下は、民法の条文です。

第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
出典:e-Govウェブサイト(民法939条)

つまり、亡くなった人がNHK受信料を滞納していたとしても、相続人ではないので支払う必要はありません。

NHK受信料の滞納分を相続したくなければ、相続放棄の手続きを済ませましょう。

ただし、相続の開始を知った日から3ヶ月以内なので、期間経過には注意してください。

2.NHK受信料に後から気付いた場合

3ヶ月経過してからNHK受信料の滞納に気付いた場合

相続の開始を知った日から3ヶ月経過すると、単純承認したとみなされ、相続放棄できなくなります。

単純承認

すべての権利義務を引き継ぐ

では、3ヶ月経過してからNHK受信料の滞納に気付いた場合、相続放棄は絶対に無理なのでしょうか。

結論から言えば、事情によっては相続放棄できます。

  • 受信料の滞納に気付けなかった
  • その他の財産も特に存在しなかった

受信料の滞納に気付いておらず、かつ、その他の財産も特に存在しなければ、相続の開始を知ったには該当していません。

【事例】

被相続人|父親
相続人 |子ども
関係性 |ほとんど交流は無かった
相続財産|数百円

父親が亡くなったことは知っていたが、口座の残高も数百円しかなく、財産は特に無かった。

ところが、死亡から半年後に、NHK受信料を滞納している事実に気付いた。

相続財産(受信料の滞納)の存在に気付くことは難しいので、滞納に気付いた日が相続の開始を知った日です。

受信料の滞納に気付いた日から3ヶ月以内に、家庭裁判所へ申述書を提出してください。

3.NHK受信料を支払った後に相続放棄

NHK受信料を支払った後に相続放棄できるのか

NHK受信料の滞納分を支払った後に、高額な借金の存在に気付いた場合、相続放棄できるのかについても説明していきます。

上記のケースで問題になるのは、受信料の滞納分をどこから支払ったかです。

  • 相続財産から支払った
  • 自分の財産から支払った

どちらに該当するかで、相続放棄できるか結論が変わります。

3-1.滞納分を相続財産から支払うと単純承認

NHK受信料の滞納分を相続財産から支払うと単純承認

NHK受信料の滞納分を相続財産(亡くなった人の財産)から支払うと、単純承認とみなされる可能性があります。

なぜなら、亡くなった人の財産から、受信料の滞納分を支払うかどうかは、相続人が判断するからです。相続放棄する人(相続放棄した人)が判断することではありません。

自分の判断で勝手に相続財産から支払うと、単純承認とみなされ相続放棄できない恐れがあります。

相続放棄を検討しているなら、相続財産から支払うのは止めておきましょう。

3-2.滞納分を自分の財産から支払うのは問題ない

NHK受信料の滞納分を自分の財産から支払っても相続放棄できる

NHK受信料の滞納分を自分の財産から支払っても、単純承認とはみなされません。

なぜなら、相続財産を使っていないからです。

どうしても、NHK受信料の滞納分を支払いたいなら、自分の財産から支払ってください。

自分の財産から支払っても、単純承認とはみなされないので、相続放棄できます。

4.NHK受信料と相続放棄の注意点

相続放棄とNHK受信料の注意点は4つ

最後に、NHK受信料と相続放棄の注意点を4つ説明します。

  • 受信料の滞納分だけ放棄はできない
  • NHK受信料の返還金は受け取るな
  • 受信料の滞納分は次順位に移る
  • 相続放棄しても配偶者は連帯納付

それぞれ説明していきます。

4-1.滞納分だけ選んで放棄はできない

NHK受信料の滞納分を放棄する場合、その他の財産も放棄することになります。

相続放棄は相続を放棄する手続きなので、財産の一部だけ選んで放棄はできないからです。

【事例】

被相続人|父親
相続人 |子ども
相続財産|受信料の滞納分(5万円)
     預貯金(50万円)

NHK受信料の滞納分を支払うのが嫌なので相続放棄すると、預貯金も相続できません。

相続放棄を検討しているなら、他の財産にも注意してください。

4-2.NHK受信料の返還金は受け取るな

NHK受信料の返還金は相続人が受け取る

亡くなった人が受信料を年払いしていた場合、受信料の返還金が発生します。
※継続して契約する場合は除く。

ただし、相続放棄する予定なら、返還金は受け取らないでください。

返還金を受け取る権利があるのは相続人だからです。相続人としての権利を行使すると、単純承認とみなされ相続放棄できなくなります。

4-3.受信料の滞納分は次順位に移る

相続放棄により相続順位が変更

先順位の相続人が全員相続放棄すると、次順位の相続人に権利・義務が移ります。

つまり、NHK受信料の滞納分も、次順位の相続人に移ってしまいます。

次順位の相続人が相続を選ぶなら別ですが、支払うつもりがなければ、相続放棄が必要です。

相続放棄による順位変更については、下記の記事で詳しく説明しています。

4-4.相続放棄しても配偶者は支払い義務

配偶者は日常家事債務の連帯責任者

相続放棄すると受信料の滞納分があっても、相続人として支払う義務はありません。

ただし、亡くなった人の配偶者は支払う義務があります。

以下は、民法の条文です。

(日常の家事に関する債務の連帯責任)
第七百六十一条 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
出典:e-Govウェブサイト(民法761条)

NHKの受信契約も民法761条が適用されるので、相続放棄しても配偶者としての責任が残ります。

ちなみに、公共料金に関しても同じ結論になるので、配偶者は注意してください。

5.まとめ

今回の記事では「NHK受信料の滞納と相続放棄」について説明しました。

NHK受信料の滞納分も相続財産なので、相続人が返済義務を引き継ぎます。相続したくないのであれば、3ヶ月以内に相続放棄してください。

受信料の滞納に3ヶ月経過してから気付いた場合、事情によっては相続放棄できます。

逆に、滞納している受信料を支払った後に相続放棄する場合は、どこから支払ったかで結論が違います。

  • 相続財産 |相続放棄できない
  • 自分の財産|相続放棄できる

相続放棄を検討しているなら、相続財産は使用しないでください。