相続発生前に相続放棄を決めていても、手続きができるのは相続発生後になります。
ただし、事前準備は相続発生前でも可能です。
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申述書や収入印紙を取得しておくや、必要になる戸籍の確認をしておくなど、相続発生前でもできる準備は複数あります。
事前準備しておけば、相続発生後に慌てることもないので、手続きもスムーズに進みます。
今回の記事では、「相続放棄の事前準備」について説明しているので、何ができるのか確認しておいてください。
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1.今からできる相続放棄の事前準備

相続放棄できるのは相続開始後ですが、事前準備は相続開始前でも可能です。
そこで、今からできる相続放棄の事前準備を7つ説明します。
- 相続放棄申述書を取得しておく
- 収入印紙・郵便切手を購入しておく
- 必要な戸籍の種類を確認しておく
- 相続財産の内容を把握しておく
- 後順位相続人の連絡先を調べておく
- 相続の開始が分かるようにしておく
- 依頼する専門家を探しておく
ただし、すべての事前準備をする必要はありません。
例えば、自分で手続きするなら1と2は役立ちますが、専門家に依頼するなら不要です。
あなたにとって必要な事前準備をするだけで問題ありません。
1-1.相続放棄申述書を取得しておく

事前準備の1つ目は、相続放棄申述書を取得しておくです。
相続放棄するには家庭裁判所に申述書を提出する必要があります。前もって取得しておけば、手続きもスムーズに進みます。
申述書の取得方法は以下の2つです。
- 家庭裁判所の窓口で取得
- ホームページからダウンロード
どちらの方法でも取得できるので、ご自身に合った方を選んでください。
家庭裁判所の窓口で取得
近くに家庭裁判所があり、かつ、昼間に行く時間があるなら、直接取りに行くのも良いでしょう。
窓口で申述書を取得する場合は、予備の分も取得しておいてください。1枚しか取得していないと、書き間違えた際に再度行く必要があるからです。
ホームページからダウンロード
家庭裁判所に行く時間がなければ、ホームページからダウンロードしてください。
以下をクリックすると、家庭裁判所のホームページに移行できます。
ダウンロードした申述書は、A4サイズでプリントアウトして使用してください。
1-2.収入印紙・郵便切手を購入しておく

事前準備の2つ目は、収入印紙・郵便切手を購入しておくです。
相続放棄するには収入印紙(800円分)と予納郵券を用意する必要があるので、前もって購入しておくと手続きはスムーズに進みます。
予納郵券の額は家庭裁判所によって違いますが、110円×5枚を用意しておけば問題ありません。
収入印紙・郵便切手は郵便局の窓口で購入できるので、行ける人は準備しておきましょう。
関連記事を読む『相続放棄の収入印紙と予納郵券|貼付け位置や提出方法を図で説明』
1-3.必要な戸籍の種類を確認しておく

事前準備の3つ目は、必要な戸籍の種類を確認しておくです。
相続放棄する人によって必要な戸籍等は違うので、前もって確認しておけば取得もスムーズにできます。
| 相続人 | 必要な戸籍等 |
|---|---|
| 配偶者 | 被相続人の死亡戸籍 被相続人の住民票 |
| 子ども | 被相続人の死亡戸籍 被相続人の住民票 相続人の戸籍 |
| 直系尊属 | 被相続人の出生から死亡まで 被相続人の住民票 相続人の戸籍 |
| 兄弟姉妹 | 被相続人の出生から死亡まで 被相続人の住民票 直系尊属の死亡戸籍 相続人の戸籍 |
※孫や甥姪の場合は追加で戸籍が必要です。
必要な戸籍の本籍地を確認しておけば、取得の手間を大幅に省けます。
関連記事を読む『相続放棄には戸籍謄本が必要!誰がするかで枚数が違う』
1-4.相続財産の内容を把握しておく

事前準備の4つ目は、相続財産の内容を把握しておくです。
本当に相続放棄しても問題ないのか、相続財産の内容を把握しておきましょう。
例えば、不動産が不要なので相続放棄を検討している場合、不動産の名義が誰になっているか確認してください。実際は別人名義になっているケースもあります。
被相続人|伯父(父の兄)
相続人 |甥
相続財産|伯父が住んでいる家
伯父が住んでいる家の不動産登記簿を確認したら、名義は伯父ではなく祖父のままだった。
祖父名義の不動産は、祖父の相続人で共有状態なので、伯父を相続放棄しても解決にはなりません。
伯父が生きている間に名義を変更して、相続発生に備える必要があります。
相続財産の内容が放棄の理由なら、間違いがないか確認しておいてください。
1-5.後順位相続人の連絡先を調べておく

事前準備の5つ目は、後順位相続人の連絡先を調べておくです。
先順位相続人が全員相続放棄すると、後順位相続人に相続が移ります。被相続人に負債がある場合などは、後順位相続人も相続放棄する必要があります。
被相続人予定|父親
相続財産 |借金500万円
先順位相続人|子
後順位相続人|父親の姉、妹の子(甥)
※父親の妹は亡くなっている
父親が亡くなったら相続放棄する予定なので、後順位相続人を確認したところ、妹の子(甥)の連絡先が分からなかった。
父親の姉に連絡をして、妹の子(甥)の連絡先を教えてもらった。
前もって連絡先を調べておけば、先順位相続人の相続放棄が終わったら、すぐに後順位相続人も手続きを始めれます。
もちろん、知らせる義務はないので、後順位相続人と交流がなければ、わざわざ調べる必要もないです。
関連記事を読む『相続放棄すると次順位の相続人に負債等が移ってしまう』
1-6.相続の開始が分かるようにしておく

事前準備の6つ目は、相続の開始が分かるようにしておくです。
相続放棄できるのは「相続の開始を知った日」から3ヶ月以内なので、開始が分からなければ手続きできません。
※申述書にも知った日を記載する。
被相続人(予定)と交流があれば関係ないですが、疎遠になっている場合などは、分かるようにしておくのも事前準備になります。
例えば、親と絶縁しているので死亡の連絡が来ない可能性があるなら、定期的に親の戸籍を取得するのも良いでしょう。実際、1年に1回のペースで親の戸籍を取得していた依頼人はいました。
相続発生後、すぐに相続放棄の手続きがしたいなら、相続の開始が分かるようにしておきましょう。
関連記事を読む『【相続の開始を知った日】相続放棄はいつからできるのか徹底解説』
1-7.依頼する専門家を探しておく

事前準備の7つ目は、依頼する専門家を探しておくです。
相続放棄を自分でする場合は別ですが、依頼する予定なら前もって探しておきましょう。
依頼した場合の流れや必要な費用の総額などを確認しておけば、スムーズに依頼もできるからです。
事務所によって料金も違うので、余裕をもって探しておきましょう。
2.相続放棄の事前準備で注意する点

相続放棄の事前準備をするなら注意点も知っておいてください。
- 相続発生前は手続きできない
- 戸籍は相続発生後に取得する
- 相続財産の内容は変化する
- 事前準備しても相続は選べる
2-1.相続発生前は手続きできない
相続放棄の事前準備が終われば、すぐに手続きをしたいと考える人もいます。
ですが、相続放棄できるのは相続が発生してからなので、今すぐにはできません。被相続人が亡くならない限り、手続きはできないです。
たとえ家庭裁判所に申述書を提出しても、要件を満たしていないので却下されます。
相続放棄の事前準備が終われば、相続が発生するのを待ってください。
関連記事を読む『相続放棄が生前に認められることは無く例外も存在しない』
2-2.戸籍は相続発生後に取得する
相続放棄に必要な戸籍を確認できると、すぐに取得しようとする人もいます。
ですが、被相続人や相続人の戸籍は、相続が発生してから取得してください。
相続発生前に被相続人の戸籍を取得しても、当然ですが死亡は記載されていません。また、相続人の戸籍を取得しても、相続発生前の発行日付では相続人の証明になりません。
相続発生前に取得して大丈夫な戸籍もありますが、間違えないよう注意してください。
2-3.相続財産の内容は変化する
相続放棄の事前準備で相続財産の内容を確認していても、相続発生までの間に変化している可能性はあります。
被相続人予定|父親
事前準備の日|令和5年3月13日
相続財産 |借金100万円
相続発生日 |令和7年7月20日
父親が亡くなったら相続放棄する予定なので、あらかじめ財産(借金以外は特に無し)を確認しておいた。
ところが、令和6年8月16日に父親の姉が亡くなっており、父親は唯一の相続人として定期預金(2,000万円)を相続していた。
事前準備の時点ではマイナスですが、相続発生時にはプラスに変わっています。
前もって相続財産を調べても、相続発生時には変わっているケースはあります。相続財産の内容が放棄の理由なら、しっかりと調べておきましょう。
2-4.事前準備しても相続は選べる
相続放棄の事前準備をしても、相続(単純承認)は選べます。
あくまでも事前準備しているだけなので、相続放棄するかの最終判断は相続発生後にします。
- 相続財産の内容が変わった
- 相続財産が必要になった
事前準備したからといって、相続放棄は強制されないので、事情が変わって相続しても問題ありません。
相続を選んでも事前準備は無駄にならず、相続手続きの役に立つでしょう。
3.相続が発生したら3ヶ月以内に手続き

相続放棄の事前準備をしていても、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に申述書を提出しなければ、単純承認したとみなされます。
- 単純承認
-
亡くなった人の権利義務をすべて相続する
以下は、民法の条文です。
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。 第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。 (省略) 二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
事前準備をするのは相続放棄するためなので、後回しにせず手続きをしてください。
もし3ヶ月以内に申述書を提出できなければ、単純承認したとみなされ事前準備も無駄になります。
申述書を家庭裁判所に提出しない限り相続放棄はできないので、絶対に3ヶ月経過しないよう注意してください。
関連記事を読む『相続放棄の期間は3ヶ月以内|絶対に経過しないよう早めに行動』
4.みかち司法書士事務所に事前準備の相談
相続放棄の事前準備を専門家に相談するなら、みかち司法書士事務所にご連絡ください。
みかち司法書士事務所では相続放棄の依頼だけではなく、相続発生前の相談も受けております。
- 相続放棄した方が良いのか?
- 相続放棄にデメリットはあるか?
- 前もって用意できる書類はあるか?
事前準備を相談したからといって、依頼する必要はないので、お気軽にご連絡ください。
電話で答えられる内容であれば、電話ですぐにお答えいたします。
5.まとめ
今回の記事では「相続放棄の事前準備」について説明しました。
相続放棄ができるのは相続発生後ですが、事前準備は相続発生前でもできます。
- 相続放棄申述書を取得しておく
- 収入印紙・郵便切手を購入しておく
- 必要な戸籍の種類を確認しておく
- 相続財産の内容を把握しておく
- 後順位相続人の連絡先を調べておく
- 相続の開始が分かるようにしておく
- 依頼する専門家を探しておく
ただし、注意点もあるので、事前準備する際は気を付けてください。
- 相続発生前は手続きできない
- 戸籍は相続発生後に取得する
- 相続財産の内容は変化する
- 事前準備しても相続は選べる
事前準備できない部分については、相続発生後に行ってください。
相続放棄の事前準備に関するQ&A
- 事前準備をしなくても相続放棄できますか?
-
相続発生後すぐに手続きをすれば間に合います。
- 兄の住所や本籍は不明ですが大丈夫でしょうか?
-
分かる範囲で調べるだけでも意味はあります。
- 財産を調べると単純承認になりますか?
-
相続財産を調べても単純承認にはならないです。
相続放棄のQ&Aについては、上記以外にもあるので参考にしてください。




