遺骨の引き取りは相続放棄に影響しない!拒否した場合も注意が必要

相続放棄と遺骨の引き取り
  • URLをコピーしました!

市役所等から遺骨の連絡を受けたが、相続放棄を検討しているので、引き取りをしてもいいのか悩んでいませんか。

結論からいえば、遺骨の引き取りは相続放棄に影響を与えません。遺骨を引き取ったうえで、家庭裁判所に申述書を提出してください。

一方、引き取りを拒否しても、相続人であることに変わりはないです。相続も拒否するのであれば、相続放棄の手続きをしてください。

相続放棄の相談は無料

相続放棄は定額料金

目次

1.遺骨の引き取りは相続放棄と無関係

遺骨の引き取りは、相続放棄とは無関係です。

なぜなら、遺骨は相続財産には含まれないので、引き取っても相続の承認にならないからです。

1-1.相続財産に遺骨は含まれない

遺骨が相続財産に含まれるか、法律上は明文化されていません。

ただし、過去の判例では、相続財産に含まれないと判断されています。

遺骨が相続財産に含まれないなら、引き取っても相続放棄には何の影響もないです。

ちなみに、私の経験上、たとえ遺骨が相続財産だったとしても、相続放棄には影響しないと考えています。

財産の受け取りと相続放棄については、下記の記事も参考にしてください。

1-2.遺骨は祭祀承継者が管理する

遺骨は相続人ではなく、祭祀承継者が管理すると判断されています。

祭祀承継者

仏壇・仏具、お墓などを承継する人

祭祀承継者は相続人以外でも可能なので、相続とは別問題です。

したがって、相続放棄する人(した人)が祭祀承継者であれば、遺骨は問題なく引き取れます。

2.遺骨の引き取りを拒否しても相続放棄は必要

遺骨の引き取りを拒否しても相続放棄は成立しない

遺骨の引き取りは強制ではないので、断る相続人もいます。

ただし、引き取りを拒否したからといって、相続放棄は成立しません。

相続も拒否するのであれば、家庭裁判所に申述書の提出が必要です。

2-1.家庭裁判所の手続きでしか成立しない

相続放棄には家庭裁判所の手続きが必要なので、意思表示(引き取りの拒否)では成立しません。

以下は、よくある勘違いです。

市役所に対して遺骨の引き取りを拒否したので、相続放棄になっていますよね?

司法書士

相続放棄は成立していないので、負債があれば相続します

遺骨の引き取りを拒否しても、相続放棄していなければ相続人です。

亡くなった人の負債や負動産(不要な不動産)も相続します。

相続を放棄するのであれば、家庭裁判所に申述書を提出してください。

2-2.知った日から3ヶ月経過すると単純承認

相続の開始を知った日から3ヶ月経過で単純承認

相続の開始を知った日から3ヶ月経過すると、単純承認したとみなされます。

単純承認

亡くなった人の権利義務をすべて承継する

遺骨の引き取りを拒否するのは自由ですが、相続の判断は別に必要です。

相続放棄をするつもりなら、3ヶ月経過する前に申述書を提出してください。

3.遺体の引き取りと相続放棄も同じ結論

遺体の引き取りと相続放棄

遺体の引き取りと相続放棄についても説明します。

結論からいえば、遺体の引き取りも相続放棄とは無関係です。

3-1.遺体を引き取っても単純承認ではない

遺体を引き取っても単純承認とはみなされません。

遺骨と同じで遺体も相続財産ではないので、相続放棄には何の影響もないです。

したがって、遺体を引き取ったうえで、相続放棄しても何の問題もありません。

3ヶ月経過すると単純承認になるので、早めに手続きをしてください。

3-2.遺体の引き取りを拒否しても相続人

遺体の引き取りを拒否しても相続人

亡くなった人と疎遠であれば、遺体の引き取りを拒否する人もいます。

ただし、引き取りを拒否しても相続人です。

亡くなった人に負債等があれば、相続人として引き継ぎます。

相続も拒否するのであれば、相続放棄の手続きを忘れずにしてください。

4.火葬費用は支払っても大丈夫なのか

自治体が亡くなった人の火葬を行った場合、遺骨を引き取ったかに関わらず、相続人に対して火葬費用を請求するケースがあります。

以下は、根拠となる法律の条文です。

第九条 死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。
2 前項の規定により埋葬又は火葬を行つたときは、その費用に関しては、行旅病人及び行旅死亡人取扱法(明治三十二年法律第九十三号)の規定を準用する。
出典:e-Govウェブサイト(墓地、埋葬等に関する法律9条)
第十一条 行旅死亡人取扱ノ費用ハ先ツ其ノ遺留ノ金銭若ハ有価証券ヲ以テ之ニ充テ仍足ラサルトキハ相続人ノ負担トシ相続人ヨリ弁償ヲ得サルトキハ死亡人ノ扶養義務者ノ負担トス
出典:e-Govウェブサイト(行旅病人及行旅死亡人取扱法11条)

上記の条文は、費用の負担者について順序を定めています。

  1. 亡くなった人の現金や有価証券
  2. 亡くなった人の相続人
  3. 亡くなった人の扶養義務者

亡くなった人の現金や有価証券で足らなければ、相続人が火葬費用の負担者です。

4-1.火葬費用を支払うなら自分の財産

火葬費用を支払うなら自分の財産が安全

相続放棄を検討しているなら、火葬費用は自分の財産から支払いましょう。

自分の財産から支払っておけば、後で問題になる可能性は限りなくゼロに近いです。

ちなみに、相続財産から支払っても、単純承認になるかは不明なので、相続放棄を諦める必要はありません。

以下の記事では、相続放棄と葬儀代の関係について説明しているので、参考にしてください。

4-2.自治体によっては請求されない

法律上は相続人や扶養義務者が、火葬費用の負担者となります。

ただし、火葬費用の請求は自治事務なので、、自治体の判断により請求しないケースもあります。

  • 亡くなった人と縁を切っていた
  • 亡くなった人と生前に交流がない
  • 費用を支払うための収入等がない

上記のような場合、請求先として相応しくないと判断するからです。

もとろん、請求されなくても相続人なので、相続しないなら放棄の手続きをしてください。

5.遺骨や遺体は相続放棄申述書に記載しない

遺骨や遺体の引き取りをしたうえで、相続放棄する場合でも、申述書には記載しないです。

そもそも、家庭裁判所の用意している雛形には、遺骨や遺体を記載する欄がありません。
※相続財産に含まれない。

以下は、家庭裁判所が用意している申述書の2枚目です。

相続放棄申述書の相続財産の概略記載欄

亡くなった人の不動産や現金・預貯金は記載しますが、遺骨や遺体は記載しなくて問題ないです。

6.まとめ

今回の記事では「遺骨の引き取りと相続放棄」について説明しました。

亡くなった人の遺骨を引き取っても、相続放棄には影響しません。

なぜなら、遺骨は相続人ではなく、祭祀承継者が引き継ぐと考えられているからです。相続放棄した人(する人)が祭祀承継者であれば、問題なく引き取れます。

遺骨の引き取りを拒否しても相続人なので、相続放棄の手続きは必要です。何もせずに放置していると3ヶ月経過により単純承認とみなされます。

自治体から火葬費用の請求を受けた場合、自分の財産から支払っておけば、相続放棄には影響しません。

相続放棄を検討しているなら、今回の記事を参考にしてください。

目次