相続放棄しても配偶者控除は適用できる|相続税の軽減は可能

相続放棄しても配偶者控除
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配偶者が相続放棄しても、相続税の配偶者控除は適用できます。

なぜなら、相続権を失っても、配偶者の権利は失っていないからです。

遺贈・生命保険金・死亡退職金等を受け取ると、相続放棄した配偶者も相続税の課税対象となります。

控除の適用には申告が必要なので、相続財産が基礎控除額を超えているなら、忘れずに申告しましょう。

目次

1.相続放棄しても配偶者控除は適用可能

相続放棄と配偶者の関係

亡くなった人の配偶者が相続放棄しても、相続税の配偶者控除(配偶者の税額軽減)は適用できます。

なぜなら、配偶者控除は相続人の権利ではなく、配偶者の権利だからです。

1-1.配偶者の権利は失っていない

相続放棄しても配偶者の権利は失わない

亡くなった人の配偶者が相続放棄すると、初めから相続人ではなかったとみなされます。

ですが、相続放棄しても配偶者の権利は失いません。

以下は、国税庁の通達です。

(相続を放棄した配偶者に対する相続税額の軽減)
19の2-3 配偶者に対する相続税額の軽減の規定は、配偶者が相続を放棄した場合であっても当該配偶者が遺贈、令5課資2-21により取得した財産があるときは、適用があるのであるから留意する。
出典:国税庁ウェブサイト(第19条の2《配偶者に対する相続税額の軽減》関係)

相続放棄しても相続税の配偶者控除は適用できます。

したがって、配偶者が遺贈等により財産を受け取っても、相続税が課税されるケースは少ないでしょう。

以下の記事では、相続放棄と配偶者の権利について説明しているので、参考にしてください。

1-2.控除される金額は変わらない

配偶者控除の金額

配偶者控除される金額は、相続放棄しても変わりません。

以下の、どちらか大きい方の金額までは非課税となります。

  • 1億6,000万円
  • 配偶者の法定相続分
    ※相続放棄前の割合

相続放棄した配偶者が、1億6,000万円より多く財産を取得するケースは少ないでしょう。

仮に、1億6,000万円を超えても、配偶者の法定相続分までは非課税です。

以下は、配偶者の法定相続分を表しています。

配偶者子ども直系
尊属
兄弟
姉妹
2分の12分の1
3分の23分の1
4分の34分の1
1分の1
配偶者の法定相続分

共同相続人によって、配偶者の法定相続分は違います。子どもや兄弟姉妹が複数人でも、配偶者の法定相続分は変わりません。

2.相続放棄しても配偶者控除を適用するケース

相続放棄した配偶者が相続税の配偶者控除を適用するケース

相続放棄した配偶者が、配偶者控除を適用するのは、相続税の課税対象となるケースです。

財産を相続しなくても、以下により財産を受け取ると、課税対象となります。

  • 遺贈により財産を受け取った
  • 生命保険金を受け取った
  • 死亡退職金を受け取った

それぞれ説明していきます。

2-1.遺贈により財産を受け取った

相続放棄した配偶者に遺贈

亡くなった人が配偶者に遺贈していた場合、相続放棄しても受け取れます。

なぜなら、遺贈による財産の取得は、相続とは違うからです。

遺贈は相続人以外に対しても有効なので、配偶者が相続人でなくても問題ありません。

そして、遺贈により財産を取得すると、相続税の課税対象となります。

2-2.生命保険金を受け取った

相続放棄した配偶者も生命保険金を受け取れる

配偶者が生命保険金の受取人であれば、相続放棄しても受け取れます。

なぜなら、生命保険金は相続ではなく、契約によって受け取る金銭だからです。

配偶者が生命保険金の受取人であれば、相続人でなくても問題ありません。

ただし、生命保険金は「みなし相続財産」なので、受け取ると相続税の課税対象となります。

2-3.死亡退職金を受け取った

相続放棄した配偶者も死亡退職金を受け取れる

配偶者が死亡退職金の受取人であれば、相続放棄しても受け取れます。

なぜなら、死亡退職金は相続ではなく、法律や規約により遺族が受け取る金銭だからです。

配偶者が死亡退職金の受取人であれば、相続人でなくても問題ありません。

ただし、死亡退職金は「みなし相続財産」なので、受け取ると相続税の課税対象となります。

3.相続放棄と配偶者控除の注意点

最後に、相続放棄と配偶者控除の注意点を2つ説明しておきます。

  • 適用には相続税の申告が必要
  • 相続税の基礎控除額は変わらない

しっかりと確認しておいてください。

3-1.適用には相続税の申告が必要

配偶者控除を適用するには申告書の提出が必要

配偶者が相続放棄しても、配偶者控除は適用できます。

ただし、適用を受けるには、税務署に相続税の申告が必要です。申告書には「配偶者の税額軽減額」を記入する欄もあります。

もし申告をしていなければ、配偶者控除は適用されません。

結果的に0円であっても、配偶者控除の適用には申告が必要なので、忘れないように注意してください。

3-2.相続税の基礎控除額は変わらない

配偶者控除を適用するのは、相続財産が基礎控除額を超えていた場合です。

そして、相続税の基礎控除額は、配偶者が相続放棄しても変わりません。

以下は、相続税法の条文です。

(遺産に係る基礎控除)
第十五条 (省略)
2 前項の相続人の数は、同項に規定する被相続人の民法第五編第二章(相続人)の規定による相続人の数(当該被相続人に養子がある場合の当該相続人の数に算入する当該被相続人の養子の数は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める養子の数に限るものとし、相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人の数とする。)とする。
出典:e-Govウェブサイト(相続税法15条2項)

相続放棄した相続人がいても、基礎控除額の計算上は関係ありません。相続放棄する前の人数で計算します。

相続放棄前相続放棄後基礎控除額
214,200万円
324,800万円
435,400万円
相続放棄と基礎控除額

配偶者が相続税の課税対象であっても、相続財産の総額が基礎控除額以下であれば、相続税は発生しません。つまり、配偶者控除も不要となります。

4.まとめ

今回の記事では「相続放棄と配偶者控除」について説明しました。

配偶者が相続放棄した場合でも、相続税の配偶者控除は適用できます。

なぜなら、相続権は失いますが、配偶者の権利は失わないからです。控除できる金額も変わりません。

配偶者が遺贈や生命保険金等を受け取ると、相続税の課税対象となります。ただし、配偶者控除を適用すれば、非課税になるケースがほとんどでしょう。

ただし、控除の適用を受けるには、相続税の申告が必要です。結果的に0円であっても、税務署に申告書は提出してください。

もちろん、相続財産が基礎控除額を超えていなければ、申告(控除の適用)も不要になります。

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