失踪宣告を検討しているなら、失踪宣告のデメリットについても確認しておいてください。
どんな制度にも欠点や注意点が存在します。失踪宣告制度も例外ではありません。
- 失踪宣告まで時間がかかる
- 申立人は利害関係人に限られる
- 相続の開始日は選べない
- 失踪者が生存なら手続きが必要
今回の記事では、失踪宣告のデメリットについて説明しているので、失踪宣告を検討しているなら参考にしてください。
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1.失踪宣告までの時間はデメリット
デメリット1つ目は、失踪宣告までには時間がかかる点です。
たとえ親族に生死不明者がいても、失踪宣告はすぐに利用できません。
なぜなら、生死不明の期間が一定以上必要だからです。また、申立てから審判確定までにも時間がかかります。
1-1.普通失踪の申立てには7年以上必要
失踪宣告には普通失踪と特別失踪の2つがあり、必要な期間が違います。
一般的な行方不明は普通失踪なので、7年以上経過しなければ申立てできません。
申立てまでに時間かかる点は、親族にとってデメリットです。
関連記事を読む『失踪宣告の手続き|申立ての前に条件確認と書類等の準備』
1-2.審判確定には申立てから1年ぐらい
無事に失踪宣告の申立てができても、審判確定までには10ヶ月から1年ぐらい必要です。
なぜかというと、家庭裁判所が調査する期間や、一定期間以上の官報公告もあるからです。
失踪宣告の申立てから審判確定まで、約1年かかるのは申立人にとってデメリットになります。
関連記事を読む『失踪宣告の流れ|審判確定までには10ヶ月から1年ぐらい必要』
2.申立人が限られるのはデメリット
デメリット2つ目は、申立人が利害関係人に限られるです。
失踪宣告の申立人は、法律上の利害関係人に限られています。
- 配偶者
- 推定相続人
- その他(生命保険金の受取人・受遺者)
一般的には、配偶者または推定相続人が申立人です。
法律上の利害関係人が申立てをしなければ、失踪宣告は利用できません。生死不明の期間が何十年経っていても結論は同じです。
【事例】
行方不明者|父
推定相続人|子
祖父が亡くなり父が相続人の1人となっていても、他の相続人(父の兄)は失踪宣告の申立人になりません。
なぜなら、父の死亡に法律上の利害関係が無いからです。
※父が死亡しても父の兄に影響は無い。
遺産分割協議が進められるは、事実上の利害関係になります。
失踪宣告を検討している人にとって、申立人が限られる点はデメリットになります。
関連記事を読む『失踪宣告の利害関係人の範囲|申立てができる人は限られる 』
3.失踪宣告による相続開始日は選べない
デメリット3つ目は、相続の開始日は選べないです。
失踪宣告により死亡とみなされると、死亡とみなされる日に相続が発生します。
ただし、死亡とみなされる日は、申立人が決めるわけではありません。
3-1.死亡とみなされる日は法律により決まる
死亡とみなされる日は自由に決めれるのではなく、法律により決められています。
- 普通失踪|生死不明から7年経過した日
- 特別失踪|危難が去った日
つまり、失踪宣告の申立てをした日は関係ありません。10年経過していようが20年経過していようが、死亡とみなされる日は同じです。
死亡とみなされる日が決めれないのは、相続ではデメリットになります。
関連記事を読む『失踪宣告による死亡日はいつなのか|相続発生日となるので重要』
3-2.相続人が変更になる可能性
失踪宣告の申立てまでに長期間経過していると、親族の中に亡くなっている人もいます。
そして、亡くなっている人がいると、相続人が変更になる可能性があります。
【事例】
行方不明者|夫
推定相続人|妻・直系尊属
申立人 |直系尊属
妻 |夫の行方不明後に死亡
行方不明者の推定相続人は、配偶者(妻)と直系尊属です。
死亡とみなされる日によって、妻が相続人になるのか違いがあります。
死亡とみなされる日より前に配偶者が亡くなっていると、直系尊属のみが相続人となります。
一方、死亡とみなされる日より後に配偶者が亡くなっていると、配偶者と直系尊属が相続人です。
※配偶者の相続人が権利を相続します。
亡くなった順番によっては、相続人が変更するというデメリットがあります。
関連記事を読む『【失踪宣告による相続】誰が相続人なのか間違えないように注意 』
4.失踪者が生存していると手続が必要
デメリット4つ目は、行方不明者が生存していた場合の手続きです。
失踪宣告により行方不明者が死亡とみなされても、後になって生存が確認されることはあります。
4-1.失踪宣告を取消すには手続きが必要
行方不明者の生存が確認されても、失踪宣告が自動的に取消されるわけではないです。
本人(行方不明者)が手続きの為に戸籍謄本を使おうとしても、戸籍上は死亡とみなされたままです。
失踪宣告を取消すには、家庭裁判所に失踪宣告の取消しの申立てをする必要があります。
行方不明者の生存が確認された場合でも、取り消しに手続きが必要な点はデメリットになります。
関連記事を読む『失踪宣告を取消すには家庭裁判所の手続きが必要』
4-2.受け取った財産の返還手続き
行方不明者が生存していた場合、失踪宣告により発生した財産は返還する必要があります。
- 相続財産
- 生命保険金
- 遺族年金
ただし、返還するのは現存利益となります。金銭を消費していても、形を変えて残っていれば返還します。
現存利益の範囲は分かりにくいので、不明な点があれば専門家に相談した方が安全です。
関連記事を読む『失踪宣告の後に生きていたことが判明すると相続はどうなる』
5.まとめ
今回の記事では「失踪宣告のデメリット」について説明しました。
失踪宣告にもデメリットは存在します。
- 失踪宣告までに時間がかかる
- 申立人は利害関係人に限られる
- 相続の開始日は選べない
- 失踪者が生存なら手続きが必要
失踪宣告までには時間がかかるので、すぐに使える制度ではありません。
申立人は限られるので、利用できないケースもあります。
死亡とみなされる日(相続の開始日)は選べないので、親族の中に亡くなった人がいると、相続人が変更するかもしれません。
行方不明者が生存していた場合、自動的に失踪宣告が取り消されるわけではなく、取消しの手続きが別に必要です。
失踪宣告を申し立てるなら、デメリットも知っておきましょう。