亡くなった人の死亡届を出せるのは、戸籍法で定められた人だけです。
- 戸籍法87条1項:届出義務者
- 戸籍法87条2項:届出資格者
届出義務者に該当する人は、死亡届を届出る義務があります。
死亡届を出さなければ、戸籍に死亡が記載されないので、届出義務者は忘れずに届出てください。
今回の記事では、死亡届の届出人について説明しているので、届出人を調べているなら参考にしてください。
1.死亡届の届出人(届出義務者)
まずは、死亡届の届出義務者について説明します。
死亡届の届出義務については、戸籍法に定めがあります。
以下は、戸籍法の条文です。
上記の条文を図にすると、以下になります。
先順位届出義務者は、死亡届を出す義務があります。
ただし、先順位届出義務者がいる場合でも、後順位届出義務者は死亡届を出せます。
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1-1.死亡届出義務者の第1位は同居の親族
死亡届出義務者の第1位は、同居の親族です。
親族の範囲は民法により定められています。
以下は、民法の条文です。
親族の範囲は広いので、自分が該当するか気にする必要はありません。
また、親族に該当しなかったとしても、第2順位に該当するので大丈夫です。
1-2.死亡届出義務者の第2位は同居者
死亡届出義務者の第2位は、親族以外の同居者です。
事実婚の配偶者や同性パートナーは法律上の親族に含まれませんが、同居者であれば死亡届出義務者となります。
亡くなった人と同居していれば、第1位または第2位のどちらかに必ず該当します。
1-3.死亡届出義務者の第3位は大家や管理人
死亡届出義務者の第3位は、大家や不動産管理人です。
亡くなった人が一人暮らしであれば、不動産の所有者(家主・地主)や不動産管理者が死亡届出義務者となります。
例えば、老人ホームで亡くなった場合、老人ホームの管理者が死亡届出義務者に該当します。
近年、一人暮らしの人が増えているので、大家や不動産管理人が死亡届を出す機会も増えています。
2.死亡届の届出人(届出義務者の例外)
死亡届の届出義務については、戸籍法87条1項だけでなく戸籍法93条でも定められています。
以下は、戸籍法の条文です。
病院、刑事施設その他の公設所で死亡があった場合に、届出義務者が届出をすることができないときは、公設所の長又は管理人が、届出をしなければならない。
病院や刑事施設その他の公設所で亡くなった場合、届出義務者が届出をしないときは、公設所の長または管理人が届出義務者となります。
※届出義務者が存在しない場合も含む。
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2-1.公立病院等の長も死亡届の届出人になる
公設所に該当する病院とは、国立・県立・市立等の公立病院です。
入院先の公立病院で亡くなった場合、同居者は存在しないので、戸籍法87条1項の届出義務者も存在しません。
したがって、入院先の公立病院の長が死亡届の届出義務者となります。
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2-2.私立病院は公設所ではないが届出義務者
紛らわしいのですが、私立病院は公設所に該当しません。
ただし、入院先の市立病院で亡くなった場合、私立病院の長(管理人)は死亡届の届出義務者となります。
なぜかというと、戸籍法87条1項第三に該当するからです。
入院先の病院で亡くなると私立・公立を問わず、死亡届の届出義務者となるので注意してください。
3.死亡届の届出人(届出資格者)
次に、死亡届の届出資格者について説明します。
戸籍法には、死亡届の届出義務者だけでなく、届出資格者についても定めがあります。
以下は、戸籍法の条文です。
届出資格者は、以下の2つに分かれます。
- 同居者以外の親族
- 亡くなった人の後見人等
それぞれ説明していきます。
3-1.いとこや甥姪も死亡届の届出人になれる
亡くなった人が一人で生活していた場合、同居の親族は存在しません。
ですが、亡くなった人の親族であれば、同居していなくても届出資格者に該当します。
以下は、死亡届を出せる親族の範囲です。
亡くなった人の「いとこ」や「甥姪」も、届出資格者なので、同居していなくても死亡届を出せます。
3-2.死亡届は成年後見人や任意後見人も出せる
死亡届の届出資格者には、成年後見人や任意後見人も含まれます。
亡くなった被後見人等の死亡届を出す親族がいなければ、後見人等も死亡届を出せるので問題ありません。
また、戸籍法の改正により、令和2年5月1日からは任意後見受任者も死亡届を出せます。任意後見契約の効力が発生していなくても、死亡届を出せるので注意してください。
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4.死亡届の届出人に該当しない人
前章までに説明した人以外は、死亡届の届出人に該当しません。
4-1.元妻や友人では死亡届の届出人になれない
亡くなった人に身寄りがいない場合、死亡の連絡が離婚した配偶者に届くこともあります。
ですが、元配偶者は法律上の親族ではないので、死亡届の届出人に該当しません。
※同居している場合は別です。
また、どんなに親しくても知人や友人では、死亡届の届出人になれません。
4-2.葬儀屋は死亡届の届出人ではなく提出代行
意外と勘違いしている人も多いのですが、葬儀屋は死亡届の届出人に該当しません。
「私の親が亡くなった際は葬儀屋が提出した」
「依頼した葬儀屋が死亡届を提出すると言っている」
上記は間違いではなく、葬儀屋は届出人が作成した死亡届を提出しているだけです。
つまり、葬儀屋は届出人として死亡届を提出しているのではなく、届出人の「使者」として死亡届を提出しています。
葬儀屋は死亡届の届出人にならないので、死亡届を作成する際は注意してください。
5.死亡届の届出人欄にチェックを入れる
死亡届の届出人欄には資格の項目があるので、自分が何に該当するかチェックを入れます。
前章までに説明した、届出義務者と届出資格者が列挙されているので、該当する資格にチェックを入れてください。
該当する資格がなければ、死亡届の届出人になれません。
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6.死亡届の届出人がいない場合はどうなる?
死亡届の届出義務者が存在しない場合や、届出義務者が届出をしない場合も存在します。
当然ですが、誰も死亡届を出さなければ、いつまで経っても死亡者の戸籍に死亡が記載されません。
誰も死亡届を出さない場合は、市区町村長に死亡記載を促すことが可能です。市区町村長は死亡を確認すると、職権で死亡事項を記載します。
亡くなった人の戸籍に死亡が記載されず困っているなら、市区町村長に申出をしましょう。
7.まとめ
今回の記事では「死亡届の届出人」について説明しました。
死亡届の届出人は戸籍法で定められており、「届出義務者」と「届出資格者」に分かれます。
公立病院等で亡くなった場合は、公立病院の長(管理人)も届出義務者に該当する場合があります。
誰も死亡届を出さなければ死亡が記載されないので、市区町村長に死亡記載を促すことは可能です。
関連記事を読む『死亡届により死亡が戸籍に反映される|死亡事項を図を用いて説明』
死亡届の届出人に関するQ&A
- 届出義務者がいる場合でも届出資格者は死亡届を出せますか?
-
出せます。
- 同居者が死亡届を出す場合、同居の証明は必要ですか?
-
不要です。