成年後見人と本人が利益相反になると代理できない

成年後見人と利益相反
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成年後見人は本人の法定代理人ですが、利益相反に該当すると代理することができません。

利益相反には現実的な争いだけでなく、形式的にみれば利害が対立する行為も含めます。

成年後見人は利益相反行為をすることができないので、本人のために特別代理人を選任する必要があります。

今回の記事では、成年後見人と利益相反について説明しているので、あなたの行為が利益相反に該当しないか確認しておいてください。

1.利益相反に該当するかは外形で判断

成年後見人の代理行為が利益相反に該当するかは、外形のみを客観的に判断します。

ですので、「本人の財産が減って後見人の財産が増える行為」は、後見人の動機や意図に関係なく利益相反行為です。

主な利益相反の事例としては、以下の5つが挙げられます。

  • 本人の財産を後見人に贈与する
  • 本人と後見人の間で不動産売買をする
  • 後見人が借金をする際に本人が保証人になる
  • 本人と後見人が共同相続人として遺産分割する
  • 本人が相続放棄する(共同相続人と後順位)

1-1.本人の財産を成年後見人に贈与する

1つ目の利益相反行為は、本人の財産を成年後見人に贈与するです。

本人の財産が減って後見人の財産が増えるので、典型的な利益相反行為です。

たとえ本人に贈与する意思があっても、外形で判断するので利益相反になります。

1-2.本人と成年後見人の間で不動産売買をする

2つ目の利益相反行為は、本人と成年後見人の間で不動産売買をするです。

正式な契約なら問題ないと思われるかもしれませんが、以下のような問題があります。

  • 売買価格が妥当か分からない
  • 本当に金銭を支払うか分からない

成年後見人が本人を代理して不動産売買をすると、外形からは正当な契約かどうか分かりません。

1-3.成年後見人が借金をする際に本人を保証人にする

3つ目の利益相反行為は、成年後見人が借金をする際に本人を保証人にするです。

たとえ成年後見人が本人のために使う予定で借りたとしても、外形からは判断できないので利益相反行為に該当します。

ちなみに、成年後見人が借金をする際に、本人の不動産を担保にするのも利益相反行為です。

1-4.本人と成年後見人が遺産分割協議をする

4つ目の利益相反行為は、本人と成年後見人が共同相続人として遺産分割協議をするです。

本人と成年後見人が共同相続人として遺産分割協議をするのは、遺産分割協議の内容に関係なく利益相反行為に該当します。

たとえ本人の相続分が増える内容だったとしても、遺産分割協議をすること自体が利益相反と判断されます。

相続人間で利益相反

子どもが親の後見人になっていると、共同相続人になりやすいでの気を付けてください。

1-5.相続放棄が利益相反行為と判断されるケースは2つ

5つ目の利益相反行為は、成年後見人が本人の相続放棄をするです。

成年後見人が本人を代理して相続放棄をする場合、以下の2つに該当していないか確認してください。

  • 本人と成年後見人が共同相続人
  • 成年後見人が後順位相続人

本人と成年後見人が共同相続人

本人と成年後見人が共同相続人の場合に、本人が相続放棄をするのは利益相反行為に該当します。

なぜなら、本人が相続放棄をすることにより、成年後見人の相続分が増えるからです。

たとえ相続放棄の理由が借金だったとしても、外形で判断するので利益相反行為となります。

成年後見人が後順位相続人

成年後見人が後順位相続人の場合に、先順位相続人である本人が相続放棄するのは利益相反行為に該当します。

本人が相続放棄することにより、後順位相続人である成年後見人が相続人となるからです。

後順位相続人と利益相反

亡くなった兄弟姉妹の相続人が親であれば、相続放棄により後順位相続人である成年後見人が相続人となります。

利益相反かどうかは外形で判断するので、相続放棄の理由は関係ありません。

2.利益相反に該当しない行為もある

本人と成年後見人が利益相反に該当しない行為もあります。

利益相反行為と似ているので、間違えないように気を付けてください。

  • 成年後見人の財産を本人に贈与する
  • 本人が借金をする際に成年後見人を保証人にする
  • 成年後見人が相続放棄した後なら大丈夫
  • 法定相続分での相続登記

2-1.成年後見人の財産を本人に贈与する

成年後見人の財産を本人に贈与するのは、利益相反に該当しません。

ただし、負担付の贈与をする場合は、利益相反行為に該当します。

負担付贈与
受贈者が一定の債務を負担することを条件にした贈与のこと

例えば、住宅ローンの残っている不動産を本人に贈与して、残りの住宅ローンを本人が負担する場合です。

2-2.本人が借金をする際に成年後見人を保証人にする

本人が借金をする際に成年後見人を保証人にするには、利益相反行為に該当しません。

なぜなら、外形で判断する限り、本人は損をしていないからです。

2-3.成年後見人が相続放棄をした後なら大丈夫

本人と成年後見人が共同相続人だったとしても、成年後見人が相続放棄した後なら本人を代理することができます。

成年後見人が相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったとみなされるので、本人を代理しても利益相反にならないからです。

ですので、成年後見人が相続放棄した後なら、本人の代理人として遺産分割協議や相続放棄をすることができます。

2-4.法定相続分での相続登記

本人と成年後見人が共同相続人であっても、相続登記を法定相続分で行う場合は利益相反に該当しません。

法律で定められた割合で登記しているだけなので、本人が損をしているわけではないです。

また、法定相続分で相続登記する場合は、相続人の1人から単独で申請できるので、本人を代理する必要もありません。

3.利益相反に該当しても特別代理人が不要なケース

本人と成年後見人が利益相反に該当しても、特別代理人が不要なケースもあります。

  • 後見監督人が選任されている
  • 成年後見人が複数人選任されている(条件付き)

3-1.後見監督人が選任されている

後見監督人が選任されている場合は、特別代理人は不要となります。

なぜなら、本人と成年後見人の利益が相反する場合は、後見監督人が本人を代理するからです。

(後見監督人の職務)
第八百五十一条 後見監督人の職務は、次のとおりとする。
四 後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること。

出典:e-Govウェブサイト(民法851条4項)

利益相反なら後見監督人が代理人

3-2.後見人が複数人選任されている

成年後見人が複数人選任されていて、かつ、権限が分かれていれば特別代理人は不要です。

本人と成年後見人が利益相反に該当しても、他の成年後見人が担当している分野であれば問題ありません。当該行為に関しては、担当の成年後見人が代理します。

ただし、「共同代理の定めがある」「担当している後見人と利害が対立する」場合は、特別代理人の選任が必要です。

4.特別代理人を選任しなければ無権代理となる

本人と後見人の利益相反行為に該当するのに、特別代理人を選任しなかった場合は無権代理となります。

原則として無効な行為になりますが、特別代理人を選任して追認してもらうと有効になることもあります。

追認
不完全な法律行為を後から有効にする意思表示のこと

無権代理行為により本人に損害が生じた場合は、成年後見人は損害賠償請求を受けることになります。

5.さいごに

家族が成年後見人に選任されていると、本人と成年後見人の利害が対立することがあります。

利益相反になりやすいのは、本人と成年後見人が共同相続人になる場合です。

  • 遺産分割協議
  • 相続放棄

たとえ本人が得する内容の遺産分割協議であっても、利益相反行為に該当します。

利益相反に該当するかどうかは外形で判断されるので、あなたの行為が利益相反に該当するか確認しておいてください。

利益相反に該当する場合は、特別代理人の選任が必要となります。