一度開始した後見は、本人を保護するためにも解除できません。
判断能力が低下したままの状態で、後見を途中で止めてしまうと保護にならないからです。
ですが、後見人が不正な行為をしている場合や、著しく不行跡であるなら解任することはできます。
今回の記事では、後見が解除できない理由と後見人の解任について説明しています。
目次
1.成年後見は本人を保護する制度
成年後見人(保佐人・補助人)が選任されると、成年後見を途中で解除することはできません。
なぜなら、成年後見は判断能力が低下した人を保護する制度だからです。
本人の判断能力が依然として低下しているのに、成年後見を途中で解除するのは本人の保護になりません。
1-1.目的を達成しても終了しない
成年後見は何か目的があって申立てをすることが多いです。
- 銀行口座の手続き
- 不動産の売却
- 介護施設への入所
ですが、当初の目的が達成できても、成年後見を解除することはできません。
本人を保護するのが成年後見制度なので、判断能力が低下している限り続きます。
1-2.申立人の希望が通らなくても続く
成年後見の申立てをしたが、希望が通らないこともあります。
- 後見人に専門家が選任された
- 本人のお金が使えない
- 後見監督人が選任された
申立人の希望が通らなくても、成年後見を解除することはできません。本人のために成年後見制度は存在しています。
成年後見を申し立てる際は、必ずデメリットを確認しておいてください。
2.後見人の解任は法律に定めがある
成年後見の解除ではなく、後見人の解任であれば法律に定めがあります。
ただし、解任するには解任事由に該当する必要があります。
2-1.後見人の解任事由は3つ
後見人の解任事由は以下のとおりです。
- 不正な行為
- 著しい不行跡
- その他後見の任務に適しない事由
①不正な行為
後見人の不正な行為とは、成年被後見人(本人)の財産を使い込んだり、自分の利益のために利用するなどです。
例えば、本人の財産を自分の借金返済に充てる行為です。
②著しい不行跡
後見人が著しく不行跡とは、後見人の品行や素行が著しく悪い場合です。
後見人の品行や素行が著しく悪いと、本人の財産管理にも危険を生じさせる恐れがあるからです。
③その他後見の任務に適しない事由
その他後見の任務に適しない事由です。
- 後見人の権限乱用
- 財産管理の不適当
- 後見人の職務怠慢
上記のような事由が該当します。
2-2.家族の感情論では解任できない
家族が後見人を解任したい理由に、「後見人が気に入らない」があります。
- 後見人の愛想が悪い
- 後見人の話し方が気に入らない
- 家族の希望を聞いてくれない
ですが、家族と後見人の相性が悪くても、解任事由には該当しません。後見人として誠実に職務をこなしている限り、家族の感情論では解任できません。
あくまでも、後見は判断能力が低下した人を保護する制度となります。
2-3.後見人は新しく選任される
後見人が解任されても、後見が終了するわけではありません。後見人が解任されると、新しい後見人が選任されます。
後見は本人の判断能力が低下している限り、本人のために続いていきます。
3.本人の判断能力が回復したら取消し
一度始まった後見を止めれるのは、本人の判断能力が回復した場合です。
後見を開始するには判断能力の低下が要件となります。
判断能力が回復すれば後見の要件を満たさなくなるので、後見を取消すことができます。
ただし、判断能力の回復を証明するには、医師の診断が必要です。自己申告や家族の主張では、判断能力の回復は認められません。
将来的に医学が進歩して認知症などを治せるようになると、後見を取消す機会が増えるかもしれません。
4.さいごに
成年後見が開始されると、本人の判断能力が回復するまで終了することはありません。
なぜなら、成年後見は判断能力が低下した人を保護する制度だからです。判断能力が回復していないのに、途中で終了することは本人の保護になりません。
ただし、後見人が不正な行為をしている場合や、著しい不行跡な場合には解任することができます。
本人を保護するためにも、後見人を解任して新しい後見人を選任します。
家族のために成年後見を申し立てるときは、後見を途中で解除することはできないと知っておきましょう。