成年後見人が不動産売却をするには許可や同意が必要

成年後見人が本人(被後見人)の不動産を売却する際は、居住用か非居住用かで手続きが変わります。

不動産が居住用であれば家庭裁判所の許可を得なければ、売買契約は無効となります。

不動産が非居住用であっても、後見監督人が存在すれば同意が必要になります。

今回の記事では、成年後見人が本人の不動産を売却する際の手続きについて説明しているので、売却を検討しているなら参考にしてください。

1.居住用かどうかで手続きに違いがある

成年後見人が本人の不動産を売却する場合、不動産が居住用かどうかで手続きが違います。

成年後見人が不動産売却

  • 居住用不動産:家庭裁判所の許可が必要
  • 非居住用不動産:家庭裁判所の許可は不要

まずは、売却する不動産が居住用かどうかを知る必要があります。

1-1.現在住んでいる不動産は当然に該当する

当然ですが、現在住んでいる不動産は居住用不動産に該当します。

たとえ住民票を移していなくても、現在住んでいるのであれば居住用不動産になります。

間違えやすいのは、介護施設等に入所するので、入所以降は現在住んでいる不動産に住まなくなる場合です。

1-2.実際に住んでいなくても居住用に該当する

居住用不動産には、本人が将来的に居住する可能性のある不動産を含みます。

例えば、本人が介護施設に入所していても、本人が住んでいた不動産は居住用不動産に該当します。

なぜなら、本人が介護施設を退所した場合には、住んでいた不動産に戻ることになるからです。

現在は住んでいなくても、住む可能性があれば居住用不動産と判断されます。

 

2.居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要

成年後見人が本人(成年被後見人)の居住用不動産を売却するには、家庭裁判所の許可を得る必要があります。

(成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可)
第八百五十九条の三 成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。

出典:e-Govウェブサイト(民法859条の3)

家庭裁判所の許可を得るには、家庭裁判所に居住用不動産処分許可の申立てをします。

家庭裁判所の許可を得ずに居住用不動産を売却しても、売買契約は無効となるのでご注意ください。

2-1.居住用不動産処分許可の申立て手続き

居住用不動産処分許可の申立てをするには、申立書以外にも複数の書類を用意します。

主な書類には、以下があります。

  • 不動産登記簿
  • 売買契約書(案)
  • 不動産の評価証明書
  • 不動産の査定書
  • 親族の同意書

簡単に説明していきます。

不動産登記簿で不動産を特定

売却する居住用不動産の不動産登記簿を提出します。

売買契約書(案)に記載されている不動産と、不動産登記簿の記載が一致しているか確認しておきましょう。

許可よりも先に売買契約書(案)を用意

間違えやすいのですが、許可を得てから売却相手を探すのではなく、売買契約がまとまってから許可の申立てをします。

ですので、売買契約書(案)も家庭裁判所に提出します。

不動産の評価証明書で基準を確認

不動産の評価証明書は、固定資産評価証明書を提出するのが一般的です。

不動産の存在する市区町村役場で取得できます。

不動産業者の査定書で適正かどうか確認

家庭裁判所は不動産売買の専門家ではないので、不動産業者の査定書で売却額が適正かどうか確認します。

親族の同意書でトラブル防止

居住用不動産を売却することに、親族(本人の推定相続人)が同意しているかです。

親族が反対している場合は、反対の理由なども判断基準となります。

2-2.売却許可の判断要素は複数ある

居住用不動産の売却許可が得られるかどうかは、複数の要素から判断されます。

  • 売却の必要性
  • 本人の意向や生活状況
  • 本人の帰宅先の確保
  • 不動産の売却条件(金額)
  • 売却代金の管理方法

上記の要素を総合的に考慮して、家庭裁判所は許可の判断をします。

居住用不動産を売却する必要性

本人の居住用不動産を売却する必要があるのかです。

売却する理由としては、介護施設の入所費用や病院の入院代に充てるためが多いです。

そのため、本人の財産状況も売却の判断材料となります。

本人の意向や生活状況

本人の判断能力が残っていれば、本人の意向は重要となります。

また、介護施設や病院で生活しているなら、居住用不動産に帰宅する可能性があるのかも重要となります。

本人の帰宅先の確保は重要

介護施設や病院から帰宅する際に、本人の住む所が確保されているかは重要です。

居住用不動産を売却することによって、本人の住む所が無くなっては意味がありません。

居住用不動産の売却条件(金額)

たとえ売却する必要性があっても、売却条件(金額)が妥当かどうかは判断されます。

明らかに金額が不相当であれば、家庭裁判所の許可を得るのは難しいでしょう。

売却金額の管理方法

売却金額の管理方法も判断基準となります。

家庭裁判所の考え方(希望)は、売却金額を本人の口座で管理することです。

 

3.非居住用不動産も自由に売却はできない

成年後見人が本人の非居住用不動産を売却するのに、家庭裁判所の許可は不要です。

ですが、非居住用不動産だからといって、成年後見人が自由に売却できるわけではありません。

成年後見人は本人の意思を尊重し、かつ、身上を配慮する義務があります。

(成年被後見人の意思の尊重及び身上の配慮)
第八百五十八条 成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(民法858条)

売却する必要性も無いのに不動産を売却すると、身上配慮義務に違反していると判断される可能性があります。

たとえ非居住用不動産であっても、売却する場合は家庭裁判所に相談した方がいいです。

 

4.不動産を売却するには後見監督人の同意が必要

成年後見人が不動産を売却する際には、家庭裁判所だけでなく後見監督人の存在も重要になります。

なぜなら、後見監督人が選任されている場合は、不動産を処分(売却)するのに後見監督人の同意が必要だからです。

(後見監督人の同意を要する行為)
第八百六十四条 後見人が、被後見人に代わって営業若しくは第十三条第一項各号に掲げる行為をし、又は未成年被後見人がこれをすることに同意するには、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。ただし、同項第一号に掲げる元本の領収については、この限りでない。
第十三条
(省略)
三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。

出典:e-Govウェブサイト(民法864条・13条1項3号)

民法864条および民法13条1項3号により、成年後見人は後見監督人の同意を得なければ、本人(被後見人)の不動産を売却することはできません。

後見監督人の同意は、居住用不動産または非居住用不動産どちらの場合も必要です。

居住用不動産なら以下の順番になります。

  1. 売買契約(案)
  2. 後見監督人の同意
  3. 家庭裁判所の許可

家庭裁判所に許可の申立てをする前に、後見監督人の同意を得ておきます。

民法13条1項については、下記の記事で詳しく説明しています。

 

5.さいごに

成年後見人が本人の不動産を売却(処分)する際には、家庭裁判所の許可や後見監督人の同意が必要になります。

ただし、すべての不動産に家庭裁判所の許可が必要なのではなく、居住用不動産を売却する場合です。

本人の居住用不動産を売却するには、家庭裁判所の許可がなければ契約は無効となります。

家庭裁判所に許可の申立てをしても、必ず許可が得られるわけではなく、必要性や相当性などを考慮して判断されます。

本人(被後見人)の不動産を売却する際は、居住用または非居住用かで手続きが変わるので気を付けてください。

後見人の選任が必要なケースには、以下があります。

  • 遺産分割協議
  • 不動産の処分
  • 保険金の受取

後見開始の申立てを検討されている場合は、以下のボタンより料金と流れについて確認することができます。

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