「知ってますか、ペットは相続人になれないです」
そんなことは当たり前と、思われたかもしれません。
けれども、実際にペットに相続させることが、できると思っている人は存在します。
残念ながらペットに、直接財産を相続させることはできないです。ですが、間接的になら財産を残すことはできます。
ペットに財産を残すための準備をしておきましょう。
目次
1.ペットの扱い
現在の日本の法律では、残念ながらペットに財産を相続させることはできません。アメリカでは法律により、実質的に相続させることができます。信託制度を利用したやり方です。
ペットは日本の法律では「物」として扱われています。たとえ遺言書にペットに相続させると書いても、その部分は無効となります。
ペットに直接財産を相続させることはできません。そのため、残されるペットのために、違う方法を考える必要があります。。
2.ペットの世話をするのは誰ですか
自分が病気等になった場合や亡くなった後に、誰がペットの世話をしてくれるのか。飼い主にとって一番重要な問題です。
大きく分けると、三つのパターンがあります。
- 家族
- 知り合い
- 老犬ホーム等
2‐1.家族が世話をしてくれる
相続人である家族が世話をしてくれるなら、一番安心なのではないでしょうか。
ただし、実際には諸般の事情で、家族が世話をするのは難しいケースが多いです。
- ペット禁止のマンションに住んでいる
- 家族が動物アレルギーを持っている
- 家族が動物嫌い
- 1人暮らしなので世話ができない
まずは、家族が世話をできるのかどうかを、確認しておくことからスタートしましょう。
2‐2.知り合いが世話をしてくれる
知り合いにペット好きな人がいるなら、世話を頼むこともできます。
知り合いに頼む場合は、条件等をしっかりと決めておいてください。「いつからなのか」「費用はどうするのか」等を書面で残しておく方が確実です。
2‐3.老犬ホーム等に預ける
期間限定や終身でペットの世話をしてくれます。急な入院等でも利用することができますので、条件や料金等を前もって調べておきましょう。
金銭に余裕がある場合は、一番確実な方法ではないでしょうか。
2‐4.信頼できる人を探す
誰が世話をしてくれるにしても、信頼できる人を探す必要があります。自分が元気なうちに対策を立てるのは、人の相続とまったく同じです。お金の問題もあるので、しっかりと考えておくべきです。
相続人がいない場合に、ペットを引き取ってくれる人を探しておかないと、ペットにとっては厳しい現実が待っています。
3.ペットに財産を残す方法
ペットに間接的に財産を残す方法は、大きく分けると4つあります。
3‐1.遺言書による遺贈
遺言書でペットを譲る方法です。知り合いにペットの世話をしてもらう場合は、遺言書で遺贈しておく必要があります。
遺産とセットで負担付遺贈にすることもできます。負担付遺贈とは、遺産とペットのお世話をセットにした遺贈です。
ペットの餌代や病院代も一緒に遺贈します。
遺贈を受けた人が、ペットの世話をしてくれるのか不安がある場合は、遺言執行者を指定しておくこともできます。遺言執行者は遺言が適切に執行されているか見極める責任があります。
遺贈を受けた人がペットの世話を放棄した場合には、遺贈の効力は失います。
遺言書で遺贈をする場合は、譲る人にあらかじめ確認を取っておいてください。なぜなら、遺贈は断ることができるからです。
3‐2.生前贈与
自分が病気等で入院したり介護施設に入所する等で、ペットの世話をすることが難しくなったときにする方法です。
贈与契約なので双方の合意が必要になります。遺贈と同じように負担付贈与契約にすることも出来ます。ペットの世話をするのを条件として、現金等と一緒に贈与することです。
現金等と一緒に贈与する際は、贈与税にも気を付けてください。
3‐3.死因贈与
自分が亡くなったときにペットを譲ることを、あらかじめ契約しておく方法です。
お世話をしてくれる人が見つかっている場合は、遺贈よりもこちらの方が確実です。
なぜなら、死因贈与は契約なので、一方的に放棄することはできないからです。
契約するときは、書面で契約することお勧めします。口約束はトラブルを招きます。
遺贈と同じく負担付死因贈与にすることもできます。
3‐4.信託契約
信託契約とは、信頼できる人に財産を託して、財産の管理・運用をお願いする契約です。
ペットのために信託契約を使う人も、最近は増えてきています。
ペットのためのお金を信託財産として、信頼できる人に信託して、ペットのために使ってもらう契約です。
信託したお金は、ペットのためにしか使うことができません。
子どもがペットを引き取ることはできないが、お金の管理をすることは引き受けてくれる場合があります。
お金は子どもに信託財産として託して、ペットの世話は別の人に頼みます。
信託財産は相続財産とは別になるので、確実にペットためにお金を残すことができます。
自分が病気等でペットの面倒が見れなくなったときに、信託契約の効力を発動させることもできます。
4.税金の問題
ペットを譲ることで、税金が発生する可能性があります。ペットと現金等をセットで譲った場合です。
4‐1.贈与税
負担付贈与をすると、贈与を受けた人に贈与税が発生します。
贈与税の基礎控除額は年間110万円なので、贈与税も計算に入れて贈与する必要があります。
基礎控除後の 課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
200万円超 300万円以下 | 15% | 10万円 |
300万円超 400万円以下 | 20% | 25万円 |
400万円超 600万円以下 | 30% | 65万円 |
600万円超 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1000万円超 1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
1500万円超 3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
4‐2.相続税
負担付遺贈や負担付死因贈与をすると、遺贈や贈与を受けた人に相続税が課税されます。自分が少額しか受け取ってなくても、相続財産の合計が高額な場合は相続税が発生します。
興味があれば『ペットに相続税は発生するのか|一緒に譲る財産額が関係する』をご確認ください。
5.ペットと相続放棄
家族が亡くなったときに、借金等があり相続放棄を選ばれる人も増えています。
ただし、家族がペットを飼っていた場合に、引き取っても大丈夫なのかという疑問があります。
ペットも相続財産なので、相続放棄をすると厳密には引き取ることができなくなります。ペットを引き取ってしまうと、単純承認をしたとみなされる可能性があります。単純承認したとみなされると、相続放棄が取り消される恐れがあります。
実際にはペットに財産価値が無ければ、引き取っても問題ない気もしますが、明確な答えは出ていません。
家族が相続放棄を考えているなら、生前にペットを譲っておきましょう。
『ペットは相続放棄をすると引き取れないのか|実際のところを考える』
6.病気等に備える
ペットの病気についても、考える必要があります。
ペットは健康保険の対象ではないので、治療費は全額自己負担になります。万が一に備えてペット保険等に入っておくのも対策の一つです。
ペット保険とは、ペットの治療費などの一部を支払ってくれる保険のことです。
自分が亡くなった後のペットの治療費についても、考えておく必要があります。世話を頼んだ人が治療費を払えない可能性もあります。世話を頼む場合は、治療費や保険料も計算しておく必要があります。
遺言書と一緒にペットの身上書も、書いておきましょう。かかりつけの動物病院や、ペットのアレルギーなどについて書いておくと、新しい飼い主さんも困りません。
7.お葬式について
昔は家の庭に埋めたりするのが普通でしたが、今は火葬してお葬式を挙げる人も多いです。遺贈等でペットが亡くなった後の、お葬式を頼んでいる人もいます。
犬や猫だけではなく、爬虫類のペットも葬儀会社によっては火葬できるそうです。
火葬した後でペットの位牌を家に飾っている人もいます。色々な種類の位牌があるので、気に入るデザインもあると思います。
ただし、ペット葬儀等に関するトラブルも増えているようなので、業者を選ぶ際には複数から見積もりを取るなどしましょう。
8.お墓に関すること
ペット霊園も全国各地にたくさんあります。
日本の法律では、ペットが一緒にお墓に入ることを禁止にはしていません。それぞれのお墓の使用規則で、禁止にしているそうです。
最近ではペットと飼い主が、一緒に入れるお墓も増えてきています。比較的新しい霊園に多いそうです。
遺言書でペットが亡くなった後に、自分のお墓に入れて貰うことも可能です。
大阪にも複数あるので、自分のお墓を買う予定がある場合は、考えてみるのもいいと思います。
9.まとめ
ペットのために財産を残す方法について考えました。
ペットに関する悩みは、人の相続と悩みが似ています。「財産を残したい」「何処で暮らすのか」「葬儀はどうするのか」「お墓を建てたい」等です。
ただし、ペットは自分で相続対策をすることはできません。飼い主さんが責任をもって相続対策をするべきです。
直接相続させることはできませんが、ペットの為に使う財産を残すことはできます。