相続財産に農地が含まれていても、相続放棄するのは自由です。農業委員会の許可等も必要ありません。
ただし、農地だけ選んで相続放棄はできないので、他の相続財産も取得できないです。
相続人全員が相続放棄すると、処分されなかった農地は最終的に国庫へ帰属します。
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1.相続財産に農地が含まれても相続放棄できる

相続財産に農地が含まれていても、相続放棄はできます。
なぜなら、相続放棄が認められるかどうかに、農地の有無は関係ないからです。
- 相続の開始を知った日から3ヶ月以内
- 相続財産を処分していない
上記の条件を満たしていれば、相続放棄は認められます。
1-1.農地がいらないという理由でも問題ない

相続放棄する理由は自由なので、「農地がいらない」でも問題ありません。
【事例】
被相続人|父親
相続人 |長男・二男・三男
相続財産|建物・宅地・田畑
亡くなった父親に借金は無いが、農地を相続したくないので、長男・二男・三男は相続放棄した。
勘違いしやすいのですが、借金の有無は相続放棄の結果に影響しません。
借金がなくても農地が不要であれば、相続放棄を選んで問題ないです。
関連記事を読む『相続放棄の理由は自由|借金・安全・疎遠・不動産以外でも可能』
1-2.相続放棄に農業委員会の許可や同意は不要

相続放棄の手続きをするのに、農業委員会の許可や同意は不要です。
通常、農地を処分するには、農業委員会の許可等が必要になります。
ですが、相続放棄は農地を処分する行為ではないので、農業委員会とは無関係です。
相続の開始を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に申述書を提出してください。
関連記事を読む『【相続放棄の手続きは家庭裁判所】その他の方法では成立しない』
2.相続放棄すると農地はどうなるのか
相続放棄を検討しているが、農地がどうなるのか気になって、判断を下せない人もいるでしょう。
そこで、相続放棄後の農地についても説明していきます。
2-1.最終的に農地は国庫に帰属する

相続人全員が相続放棄すると、最終的に農地は国庫に帰属します。
以下は、民法の条文です。
(残余財産の国庫への帰属) 第九百五十九条 前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。
相続人が存在しなければ、相続財産は相続財産法人となります。
そして、選任された相続財産清算人が、相続財産を清算(処分)していきます。
農地が処分されずに残った場合は、国庫に帰属して終了です。
2-2.相続財産管理人(清算人)の選任が必要
相続人が全員相続放棄しても、相続財産清算人(旧相続財産管理人)が選任されなければ、農地は国庫に帰属しません。
なぜなら、相続人の不存在が確定しないからです。
戸籍上の相続人が全員相続放棄しても、相続人が存在する可能性はあります。
相続財産清算人の選任後に、相続人の捜索等を経て、相続人の不存在が確定します。
したがって、農地を国庫に帰属させたいなら、相続財産清算人の選任が必要です。
3.農地と相続放棄に関する注意点

農地を相続放棄する場合の注意点について説明します。
- 農地だけ選んで相続放棄できない
- 後順位の相続人に農地が移る
- 相続人によっては保存義務がある
3-1.農地だけ選んで相続放棄できない
相続放棄すると相続人ではなくなるので、農地以外の財産も取得できません。
したがって、農地以外に欲しい財産があるなら、相続放棄は選べないです。
【事例】
被相続人|父親
相続人 |長男・長女
相続財産|田畑・建物・宅地・定期預金
長男と長女は離れた場所で生活しているので、田畑を相続しても使う予定がない。
ただし、相続放棄すると、宅地や定期預金も相続できない。
農地だけ選んで放棄できる制度ではないので、間違えないように注意してください。
関連記事を読む『財産の一部だけ相続放棄はできない!取捨選択は認められない』
3-2.後順位の相続人に農地が移る

先順位相続人が全員相続放棄すると、後順位相続人に相続(農地)が移ります。
※配偶者は順位変更と無関係です。
【事例】
被相続人|父親
第1順位|長男・長女
第2順位|亡くなっている
第3順位|父親の弟
相続財産|田畑・建物・宅地
長男と長女は田畑が不要なので相続放棄した。
その結果、第3順位(父親の弟)に相続権が移るので、田畑が不要であれば第3順位も相続放棄が必要です。
後順位相続人と交流があるなら、相続放棄を伝えておきましょう。
関連記事を読む『相続放棄をすると次順位の相続人に負債等が移ってしまう』
3-3.相続人によっては保存義務がある
かつては、相続放棄しても農地の管理義務は残ると言われていました。
※法律が曖昧なので真偽不明。
しかし、民法改正により、相続放棄後の管理義務は変わっています。
※令和5年4月1日から変更。
義務 | 法改正前 | 法改正後 |
---|---|---|
内容 | 管理義務 | 保存義務 |
誰が | 相続放棄した人 | 相続放棄した人 ※現に占有 |
いつまで | 次順位相続人が 管理を始めるまで | 相続人等に 引き渡すまで |
誰に対する 責任なのか | 曖昧 | 曖昧 |
相続放棄後に保存義務(旧管理義務)を負うのは、現に相続財産を占有していた相続人です。
つまり、亡くなった人の田畑を占有していなければ、保存義務はありません。
一方、田畑を占有していた相続人は、相続人等に引き渡すまで保存義務があります。
管理義務については、下記の記事で詳しく説明しています。
関連記事を読む『【相続放棄後の管理義務】法改正後の940条で責任者が明確になる』
4.相続放棄以外に農地を手放す方法
事情があって相続放棄できないなら、相続したうえで農地を手放す必要があります。
農地の相続については、下記の記事を参考にしてください。
関連記事を読む『【農地の相続】許可は不要だが届け出は必要なので忘れずに』
4-1.農地が欲しい人を探して処分する
まずは、農地が欲しい人を探してください。
ただし、欲しい人が見つかっても、処分(売却・贈与)できるかどうかは別問題です。
【事例】
被相続人|父親
相続人 |長男
相続財産|建物・宅地・田畑
欲しい人|長男の知人
父親の田畑は不要であったが、知人がタダなら貰うと言ってくれたので、相続放棄ではなく相続を選びました。
ところが、農業委員会の許可が下りず、農地は贈与できなかった。
農地の場所によっては、転用許可も下りないので、農地の処分は難しくなります。
農業委員会の許可等が得られない場合は、別の制度で処分を検討してください。
4-2.相続土地国庫帰属制度を利用する
農地を誰も欲しがらないなら、相続土地国庫帰属制度を検討してください。
※許可等が得られない場合を含む。
簡単に説明すると、国にお金を払って土地を引き取ってもらう制度です。農地も引取対象に含まれています。
ただし、一筆につき最低20万円は必要なので、農地が複数あるなら注意してください。
条件等については、下記の記事を参考にしてください。
関連記事を読む『相続した土地を国庫に帰属させる条件は3つ』
5.まとめ
今回の記事では「農地の相続放棄」について説明しました。
農地が相続財産に含まれていても、相続放棄は自由にできます。農業委員会や自治体の許可等も不要です。
相続人が全員相続放棄すると、最終的に農地は国庫に帰属します。
相続放棄するなら、以下の点に注意してください。
- 農地だけ選んで相続放棄できない
- 後順位の相続人に農地が移る
- 相続人によっては保存義務がある
農地の処分は大変なので、できる限り生前に考えておきましょう。
農地と相続放棄に関するQ&A
- 農地の地積が分かりません。
-
地積が分からなくても相続放棄できます。
- 農地が共有でも相続放棄できますか?
-
相続放棄できます。
ただし、共有者が相続人なら持分は残ります。