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任意後見人を複数人選ぶことはできるが問題もある

任意後見人が複数人
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任意後見人を複数人選ぶことは可能です。

任意後見契約は委任契約の一種なので、複数人を受任者にすることができます。

ですが、複数人を受任者にすることで、1人だけを受任者にする場合とは違う問題が発生します。

複数人を選んだことにより、結果として任意後見契約が失敗することもあります。

今回の記事では、任意後見人が複数人いる場合について説明しているので、任意後見を検討しているなら参考にしてください。

1.任意後見契約は委任契約の一種

任意後見契約は委任契約の一種なので、任意後見人を複数人選ぶこともできます。

例えば、長男だけでなく次男とも任意後見契約を結びたい親御さんもいます。誰か1人を選ぶと、選ばれない人が不満を持つ場合もあるからです。

ただし、任意後見人を複数人選ぶなら、1人だけ選んだ場合との違いを知っておいてください。

  • 代理権の範囲
  • 公証人手数料
  • 複数人のデメリット

以下の項目で、それぞれ説明していきます。

 

2.任意後見人が複数人なら代理権が重要

任意後見人を複数人選ぶなら、それぞれの代理権が重要となります。

任意後見人が複数人の場合、代理権は以下のどちらかです。

  • 単独代理
  • 共同代理

単独代理はさらに2つに分かれます。

任意後見人が複数人の代理権

2-1.単独代理は2つに分かれる

任意後見人の代理権を単独代理にする場合、以下の2つに分かれます。

  • 全ての行為を単独で代理できる
  • 任意後見人ごとに代理権を分担する

全ての行為を単独で代理できる

全ての任意後見人が、全ての行為を単独で代理できる場合です。

特に条件を付けなければ、任意後見人は単独代理となります。

任意後見人ごとに代理権を分担する

任意後見人ごとに代理権を分担する場合です。

例えば、以下のように分担します。

  • 任意後見人Aは不動産に関すること
  • 任意後見人Bは預貯金に関すること

それぞれの任意後見人が、任されている部分だけ単独で代理します。

2-2.共同代理にすると登記に記録される

任意後見人の代理権を共同代理にする場合は、「代理権の共同行使の特約目録」を任意後見契約書に添付する必要があります。

そして、共同代理の定めは後見登記簿に記録されます。

(任意後見契約の登記)
第五条 任意後見契約の登記は、嘱託又は申請により、後見登記等ファイルに、次に掲げる事項を記録することによって行う。
(中略)
五 数人の任意後見人が共同して代理権を行使すべきことを定めたときは、その定め

出典:e-Govウェブサイト(後見登記等に関する法律5条)

以下は、「代理権の共同行使の特約目録」の例です。

代理権の共同行使の特約目録

 任意後見受任者〇〇及び〇〇は、下記事項について共同して代理権を行使する。

1 居住用不動産の購入及び処分

2 不動産その他重要な財産の処分

共同行使の特約目録に記載されていない行為は、単独で代理権を行使することができます。

代理権の共同行使の特約目録

代理行為の相手方は、後見登記を見れば共同代理かどうか判断できます。

 

3.公証人手数料は契約数により違う

任意後見人を複数人選ぶ場合、公証人手数料は単独代理と共同代理で違います。

  • 単独代理は任意後見人ごとに契約
  • 共同代理は何人いても1個の契約

任意後見人が複数人の契約数

3-1.単独代理は任意後見人ごとに契約

単独代理の場合は任意後見人ごとに契約を結ぶので、任意後見人の数だけ公証人手数料も増えていきます。

原則として、任意後見契約書は個別に作成するのですが、同時に複数人と契約を結ぶ場合は1枚の公正証書で作成することも可能です。

ただし、1枚の公正証書で作成しても、契約自体は複数なので公証人手数料は増えます。

3-2.共同代理は何人いても1個の契約

共同代理の場合は任意後見人が何人いても、契約自体は1個なので公証人手数料は変わりません。

ただし、「代理権の共同行使の特約目録」も作成するので、公正証書の枚数は増えることになります。公正証書の枚数が増えれば、謄本等の発行手数料が増えます。

 

4.任意後見人を複数人選ぶことのデメリット

任意後見人を複数人選ぶとデメリットもあります。

単独代理と共同代理ではデメリットが違うので、前もって確認しておいてください。

4-1.単独代理にも問題点はある

単独代理は2つに分かれますが、それぞれデメリットがあります。

意見が不一致でも代理できる

全ての行為を単独で代理できるようにしていると、任意後見人同士の意見が一致しなくても代理できます。

例えば、本人の不動産を売却するとします。任意後見人Aは1,000万円で売却しようとしますが、任意後見人Bは売却金額に不満がある場合です。

任意後見人Aは単独で代理できるので、たとえBが売却金額に不満を持っていたとしても売却できます。

ですので、自分が納得していなくても、他の任意後見人が代理行為を進める可能性があります。

任されている部分以外は代理できない

代理行為を分担して委任している場合、自分が任されている部分以外は代理できません。

そのため、他の任意後見人が欠けてしまうと、その部分については代理行為ができなくなります。

例えば、代理権を分担して任意後見人Aに不動産、任意後見人Bに預貯金とします。

任意後見人Bが死亡すると、預貯金に関することを代理する人がいなくなります。

分担していた任意後見人が欠けた

欠けた部分の代理行為が重要であれば、法定後見の申立てが必要となります。

4-2.共同代理は全員揃わないと成立しない

共同代理のデメリットは2つあります。

  • 1人でも欠けると不成立
  • 意見が対立する可能性

1人でも欠けると契約が不成立

共同代理は1個の契約なので、誰か1人でも欠けると契約自体が成立しなくなります。

例えば、AとBを共同代理にしている場合、Bが契約を解除するとAが残っていても契約は終了です。

任意後見人の人数が増えるほど、契約が不成立になる可能性も高まります。

意見が対立する可能性がある

当然ですが、任意後見人同士の意見が対立すれば、代理行為をすることができません。

任意後見人の仲が悪くなると、代理行為が進まない可能性が有ります。

 

5.任意後見人を予備的に定めることはできない

任意後見契約書の中で、任意後見人を予備的に定めることはできません。

予備的に定めるとは、「第1順位のAが死亡したら第2順位のBが任意後見人になる」等の、条件付きで予備の任意後見人を定めることです。

後見登記の記載事項に予備的契約は規定されていないので、予備の任意後見人を登記することができません。

対応策としては、同順位で2人とも任意後見受任者とし、内部の話し合いで優先順位を決めておきます。

例えば、本人の判断能力が低下したら、任意後見受任者Aが任意後見監督人の選任申立てをします。
*任意後見受任者Bは申立てをしません。

Aが死亡または病気等により任意後見人の職務を行えない場合は、任意後見受任者Bが任意後見監督人の選任申立てをします。
*Bが任意後見人に就任する。

どうしても予備的に任意後見人を決めておきたい場合は、専門家や公証役場に相談してみてください。

 

6.さいごに

任意後見人を複数人選ぶことはできます。

ただし、任意後見人を1人だけ選ぶ場合とは違う部分もあります。

  • 代理権の範囲
  • 公証人手数料
  • 複数人のデメリット

任意後見人を複数人選ぶなら、単独代理または共同代理で代理権が違います。

また、契約数により公証人手数料は増えていきます。任意後見人を複数人選ぶことでデメリットも発生します。

任意後見契約を結びたい人が複数人いる場合は、違いについて確認しておいてください。