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認知により相続権が発生するので法定相続分の計算に注意

認知と相続
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非嫡出子は認知が済んでいなければ、父親が亡くなっても相続人になることができません。

認知により父子の間に法律上の親子関係が発生するので、相続関係も発生することになります。

認知により発生する相続関係は、父親だけでなく兄弟姉妹の間にも発生します。異母兄弟姉妹も第3順位の相続人として、相続人になる可能性が有ります。

認知により法定相続人が増えると、その他の相続人の相続分は減ることになるので、法定相続分を計算する際は注意が必要です。

今回の記事では、認知による相続発生について説明しているので、相続の悩みを解決する参考にしてください。

1.非嫡出子が相続するには認知が必要

非嫡出子が父親の相続人になるには、認知が必要になります。

なぜかというと、非嫡出子と父親との間に法律上の親子関係が存在しないからです。

非嫡出子
法律上の婚姻関係にない2人の間に生まれた子ども

以下は、民法の条文です。

(嫡出の推定)
第七百七十二条 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。

出典:e-Govウェブサイト(民法772条1項)

婚姻中に懐胎した子どもは父親の嫡出と推定されます。
※推定なので父親が争うことはできる。

それに対して、婚姻外で懐胎した子どもは父親の子と推定されないので、法律上の親子関係を発生させるには認知が必要になります。

(認知)
第七百七十九条 嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。

出典:e-Govウェブサイト(民法779条)

1-1.認知により父親の相続人になる

認知することにより父子の間に親子関係が発生するので、相続関係も発生することになります。

父親が亡くなれば子どもとして相続人になりますし、子どもが亡くなれば父親は直系尊属として相続する可能性があります。

認知が済んでいなければ父親の相続人になれないので、認知の有無は必ず確認しておきましょう。

認知の有無は戸籍謄本の父親欄を確認すれば分かります。

認知が済んでいれば父親の名前が記載されていますし、済んでいなければ空欄になっています。

1-2.母親の相続に関しては認知は不要

婚姻外で出生した子どもであっても、母親との親子関係を発生させるのに認知は不要です。
※例外もあります。

以下は、最高裁の判例です。

母と非嫡出子間の親子関係は、原則として、母の認知をまたず、分娩の事実により当然発生する。

出典:最高裁判所判例集(昭和37年4月27日最高裁判所第二小法廷)

出産(分娩)した人が母親なので、認知をしなくても当然に親子関係は発生します。

ちなみに、出産した人が当然に母親になると、代理出産では問題が生じます。

 

2.嫡出子と非嫡出子の相続分は同じ

嫡出子と非嫡出子の法定相続分は同じです。

たとえ父親と一度も会ったことが無くても、相続分は嫡出子とまったく同じです。

非嫡出子と嫡出子の相続分

2-1.認知により他の相続人の法定相続分も変更になる

認知により法定相続人が増えるので、結果として他の相続人の法定相続分が減ることになります。


【事例1】

例えば、相続人が配偶者と子ども(1人)だった場合、当初の法定相続分は各2分の1です。

認知により子どもが1人増えると、認知後の法定相続分は以下のように変化します。

  • 配偶者:2分の1
  • 子ども:4分の1
  • 子ども:4分の1
    ※認知

配偶者の法定相続分は変化しませんが、子どもの法定相続分が2分の1から4分の1に減っています。

【事例2】

例えば、相続人が子ども(2人)だった場合、当初の法定相続分は各2分の1です。

認知により子どもが1人増えると、認知後の法定相続分は以下のように変化します。

  • 子ども:3分の1
  • 子ども:3分の1
  • 子ども:3分の1
    ※認知

子どもの法定相続分が2分の1から3分の1に減っています。


遺言認知や死後認知では法定相続分の変更が重要になるので、計算を間違えないように気をつけてください。

2-2.相続発生日によっては非嫡出子の相続分が違う

嫡出子と非嫡出子の相続分は同じなのですが、昔は相続分が違いました。

詳しい説明は省略しますが、平成25年9月5日の違憲判決により相続分は平等になりました。
※平成13年7月1日以降に発生した相続も関係します。

そのため、放置していた遺産分割協議をする場合は、相続発生日に注意してください。相続発生日によっては、非嫡出子の法定相続分は違う可能性があります。

2-3.認知により非嫡出子に遺留分も発生する

認知により法定相続人になるので遺留分も発生します。

被相続人(父親)が遺言書で全財産を遺贈していても、遺留分侵害額については請求可能です。

ただし、遺留分侵害額請求は侵害の事実を知った日から1年で消滅するので、請求するなら早めにする必要があります。

 

3.認知により兄弟姉妹としても相続人になる

認知をした父親に子どもがいれば、兄弟姉妹として相続人になる可能性があります。

なぜなら、異父(異母)兄弟姉妹も第3順位の相続人となるからです。

異父兄弟姉妹も相続人

つまり、認知により父親を相続する権利だけではなく、兄弟姉妹として相続する権利も取得します。

父親の相続だけでなく、兄弟姉妹の相続についても知っておく必要があります。

3-1.兄弟姉妹に遺留分は無いので遺言書が対応策

あなたの相続人が配偶者や同父母兄弟姉妹であれば、異父(異母)兄弟姉妹も相続に関係します。

遺産分割協議で法定相続分を主張されると、配偶者や同父母兄弟姉妹は断ることができません。

対応策としては、遺言書を作成するのが一般的です。兄弟姉妹には遺留分が無いので、遺言書を作成しておけば問題ありません。

3-2.異父(異母)兄弟姉妹の相続分は同父母兄弟姉妹の半分

相続人が兄弟姉妹の場合で、かつ、異父(異母)兄弟姉妹と同父母兄弟姉妹がいるなら、法定相続分が違うので注意してください。

以下は、民法の条文です。

(法定相続分)
第九百条 (省略)
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

出典:e-Govウェブサイト(民法900条4項)

異父(異母)兄弟姉妹の相続分は、同父母兄弟姉妹の相続分の2分の1になります。


条文だけだと分かりにくいので、事例で説明します。

【事例1】

亡くなった人の相続人が、同父母兄弟姉妹(1人)と異母兄弟姉妹(1人)の場合です。

  • 同父母兄弟姉妹:3分の2
  • 異母兄弟姉妹 :3分の1

【事例2】

亡くなった人の相続人が、同父母兄弟姉妹(1人)と異母兄弟姉妹(2人)の場合です。

  • 同父母兄弟姉妹:4分の2
  • 異母兄弟姉妹 :4分の1
  • 異母兄弟姉妹 :4分の1

【事例3】

亡くなった人の相続人が、同父母兄弟姉妹(2人)と異母兄弟姉妹(2人)の場合です。

  • 同父母兄弟姉妹:6分の2
  • 同父母兄弟姉妹:6分の2
  • 異母兄弟姉妹 :6分の1
  • 異母兄弟姉妹 :6分の1

兄弟姉妹として相続人になる場合は、異父(異母)兄弟姉妹と同父母兄弟姉妹で違いがあるので注意してください。

 

4.さいごに

非嫡出子は認知により父親との親子関係が発生します。

そのため、認知が済んでいなければ、父親が亡くなっても非嫡出子は相続人となりません。

たとえ父親と同居していても法律上は相続できないので、戸籍謄本で父親欄を確認しておきましょう。

非嫡出子と嫡出子に相続分の違いはありません。まったく同じ相続分となります。

認知により親子関係が発生すると、父親が同じ兄弟姉妹の相続人になる可能性があります。

認知で発生する相続は父親だけではないので、戸籍謄本で兄弟姉妹についても確認しておく必要があります。