不動産の共有者が所在不明なので、共有解消の話し合いができず困っていませんか。
共有名義を単独名義にしたいのに、話し合いができず放置されている不動産は多いです。
ですが、共有者が所在不明であっても、共有持分を取得する方法は複数あります。
- 不在者財産管理人を選任する
- 失踪宣告により死亡とみなす
- 所在不明等共有持分取得の申立て
上記の方法を利用することで、共有持分の取得は可能です。
ただし、それぞれの方法にはデメリットも存在するので、選ばれる際は注意してください。
1.所在不明の共有者に不在者財産管理人を選任
1つ目の方法は、所在不明の共有者に不在者財産管理人を選任するです。
所在不明の共有者に不在者財産管理人が選任されると、共有持分についての話し合いも不在者財産管理人とできます。
1-1.所在不明共有者の持分を管理する人
家庭裁判所に選任された不在者財産管理人は、所在不明共有者の財産(共有持分含む)を管理します。
共有持分取得についても、不在者財産管理人と話し合ってください。
ただし、共有持分を無料で取得したいという提案は、認められない可能性が高いです。
※所在不明共有者が損する行為。
不在者財産管理人を選任したからといって、共有持分を無料で取得できる保障はありません。
関連記事を読む『不在者財産管理人の選任申立て【手続きには数ヶ月かかる】』
1-2.不在者財産管理人のデメリットは予納金
不在者財産管理人のデメリットは、予納金が高額な点です。
原則として、不在者財産管理人の選任申立てをすると、家庭裁判所から申立人(共有者)に対して、予納金の納付が求められます。
予納金の額は20万円から100万と幅が広く、申立後でなければ正式な金額は分かりません。予納金を納めなければ、不在者財産管理人は選任されないです。
共有持分取得の方法として、不在者財産管理人を検討するなら、予納金の額に注意してください。
関連記事を読む『不在者財産管理人の予納金は申立人の負担となる』
2.失踪宣告により所在不明の共有者を死亡とみなす
2つ目の方法は、失踪宣告により共有者を死亡とみなすです。
所在不明の共有者が死亡とみなされると、共有持分は相続人に移ります。その後、相続人から共有持分を取得するという方法です。
共有状態によっては、共有者(所在不明)の相続人が共有者(持分を取得したい人)というケースもあり得ます。
2-1.共有者の死亡により持分を移転させる
失踪宣告により所在不明の共有者は、最後に生存が確認できた日から7年後に死亡とみなされます。
そして、共有者が死亡とみなされることにより、共有者の相続財産(共有持分含む)は相続人に移転します。
失踪宣告により共有者の所在不明問題は解決するので、後は相続人(新しい共有者)から持分を取得してください。
関連記事を読む『【失踪宣告の手続き】申立てをしなければ始まらない』
2-2.失踪宣告のデメリットは要件の厳しさ
失踪宣告のデメリットは、要件が厳しい点です。
- 共有者が生死不明が7年以上
- 法律上の利害関係人のみ可能
それぞれ説明しています。
共有者の生死不明が7年以上
原則として、所在不明の共有者を死亡とみなすには、所在不明(生死不明)が7年以上必要になります。
例えば、共有者と数年前までは連絡がとれていたなら、失踪宣告は利用できません。
不動産の共有者が所在不明であっても、7年以上でなければ利用できない点はデメリットです。
関連記事を読む『【失踪宣告のデメリット】4つの欠点を確認しておこう』
法律上の利害関係のみ可能
不動産の共有者が所在不明(7年以上)であっても、法律上の利害関係人でなければ、失踪宣告の申立てはできません。
以下は、主な利害関係人です。
- 配偶者
- 推定相続人
- 生命保険金の受取人
- 遺贈の受遺者
たとえ不動産の共有者であっても、法律上の利害関係人に該当しなければ、失踪宣告は利用できないです。
関連記事を読む『失踪宣告の利害関係人の範囲|申立てができる人は限られる』
3.裁判所に所在不明等共有者持分取得の申立て
3つ目の方法は、所在不明等共有者持分取得の申立てです。
令和5年4月1日より、所在不明共有者の持分を取得する方法が増えました。
上記以前は、不在者財産管理人と失踪宣告が主な方法でしたが、新たに「所在不明等共有者持分取得」が加わったので説明していきます。
3-1.供託金を納めると共有者持分が取得できる
地方裁判所に所在不明等共有者持分取得の申立てをすると、共有者の所在不明を確認した後に、供託金の納付書が送付されます。
そして、指定された供託金を納めると、共有者の持分が取得できるという流れです。
ちなみに、供託金の額は取得する持分価格なので、申立てをする前に調べておく必要があります。
※申立書にも持分価格を記載。
不動産の共有者が所在不明であっても、供託金さえ納めれば確実に持分を取得できる点が特徴です。
3-2.所在不明等共有者のデメリットは経験者が少ない
所在不明等共有者持分取得のデメリットは、新しい制度なので経験者が少ない点です。
ネット上で探しても、制度についての説明はありますが、具体的な事例についての説明は見当たりません。
お住まいの地域によっては、無料相談に行っても、説明に出てこない可能性もあります。
まだまだ事例(経験)が少ないので、所在不明等共有者持分取得を積極的に勧める専門家も少ないのが欠点です。
4.共有者が所在不明なら専門家に相談
不動産の共有者が所在不明なら、専門家に相談してみてください。
なぜなら、共有解消には複数の方法がありますし、それぞれデメリットも存在するからです。
しっかりと専門家に相談したうえで、ご自身にとってベストな選択をしてください。
4-1.共有解消を苦手とする専門家も存在する
「専門家に相談してください」と勧めたのですが、不動産の共有解消を苦手とする専門家も存在します。
※共有解消の仕事を受けていない。
各専門家には得意・不得意があるので、苦手な専門家に相談しても、良い結果は生まれにくいでしょう。
共有解消を相談するなら、共有解消を得意とする専門家にしてください。
4-2.共有解消の報酬も専門家によって違う
専門家に共有解消を依頼する場合、報酬も専門家によって違います。
例えば、初めに相談した専門家の報酬が100万円でも、別の専門家に相談したら50万円だったというケースはあります。
専門家の報酬は自由設定なので、事務所によって違うという前提で相談に臨んでください。
5.まとめ
不在者財産 管理人 | 失踪宣告 | 所在不明等 持分取得 | |
---|---|---|---|
申立先 | 家庭 裁判所 | 家庭 裁判所 | 地方 裁判所 |
共有者の 申立て | ○ | △ | ○ |
不明期間 | 約1年 | 7年以上 | 約1年 |
予納金 | ○ | ー | ー |
供託金 | ー | ー | ○ |
今回の記事では「所在不明共有者の持分取得方法」について説明しました。
不動産の共有者が所在不明であっても、共有持分を取得する方法はあります。
- 不在者財産管理人を選任する
- 失踪宣告により死亡とみなす
- 所在等不明共有者持分取得の申立て
不在者財産管理人を選任して、共有者の代わりに話し合いをしてもらいます。ただし、無料で取得するという提案は認められない可能性が高いです。
失踪宣告により共有者が死亡とみなされると、共有者の相続人が持分を相続します。共有者が変更するので、持分取得の話し合いをしてください。
所在等不明共有者持分取得は新しい制度です。所在不明共有者が有する共有持分を、金銭を供託して取得するという流れになります。
どの方法にもデメリットがあるので、専門家に相談しながら解決方法を考えてください。
所在不明の共有者に関するQ&A
- 住所を知らないは所在不明に該当しますか?
-
該当しません。所在不明とは住所を調べても行方が分からない状態です。
- 生きている可能性があっても持分取得できますか?
-
所在不明であれば持分取得できます。