共有持分の買取請求は提案と権利行使の2つがあります。
買取請求という言葉は同じですが、2つの買取請求は別の手続きです。
ただし、どちらの手続きも不動産の共有状態を解消する方法になります。
今回の記事では、共有持分の買取請求について説明しているので、不動産が共有状態なら参考にしてください。
目次
1.共有者に対する持分買取の提案
共有持分の買取請求の1つ目は、共有者に対する持分買取の提案です。
共有者に対する持分買取の提案は、2つの意味で使われます。
- 自分の持分を買い取ってください
- あなたの持分を買い取らせてください
どちらの買取でも、共有者間の売買契約になります。
1-1.自分の共有持分を買い取ってほしい
不動産の共有状態を解消するために、自分の共有持分の売却を共有者に提案することはあります。
例えば、自分は不動産を使用していないが、共有者は不動産を使用している場合です。共有者にとって不動産が重要であれば、持分買取に応じる可能性は高くなります。
ただし、共有者にとって不動産が重要であっても、持分買取請求の提案を断ることはあります。
*金銭面で折り合いがつかない。
共有者が持分買取請求の提案を断った場合、第3者に持分を売却する人もいます。
不動産の共有持分は自由に売却できますし、他の共有者の同意も不要だからです。
関連記事を読む『不動産の共有持分を売却するのに共有者の同意は不要』
1-2.共有者の共有持分を買い取りたい
不動産の共有状態を解消するために、共有者の共有持分を買い取ることはあります。
例えば、自分が不動産を使用している場合、不動産が共有状態だと不便になることが多いです。
解消できる時に解消しておかなければ、共有者に相続が発生して共有者の変更が発生するかもしれません。
また、不動産を使用していない共有者からしても、金銭が取得できるなら悪い話ではありません。
共有不動産を自分名義で統一したいなら、金銭での買取請求を提案するのが一番可能性が高いです。
関連記事を読む『不動産の共有名義人が死亡すると持分はどうなるのか?』
2.共有者に対する持分買取請求権の行使
共有持分の買取請求の2つ目は、共有者に対する持分買取請求権の行使です。
持分買取請求の提案との違いは、請求権の行使なので共有者の同意は不要という点です。
2-1.共有者が管理費用を支払わない
不動産の共有者は持分に応じて、不動産の管理費用を支払う義務があります。
ですが、他の共有者が管理費用を支払わないので、1人で管理費用を支払っている人もいます。他の共有者の管理費用を負担した場合、共有者に対して負担分を求償することができます。
共有者が負担分の求償に1年以上応じなければ、共有持分の買取請求権を行使することができます。
(共有物に関する負担)
第二百五十三条 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
2 共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。
ただし、買取請求権なので、相当の償金を支払う必要があります。
相当の償金がいくらになるのかは、当事者の話し合いで決めるのが一番ですが、裁判で決めることもあります。
2-2.持分移転登記は共有者との共同申請
共有持分買取請求権の行使は、本人の意思表示で効力が発生します。
ただし、不動産登記を変更しなければ、当事者以外の第3者には対抗することができません。
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
持分移転登記は共有者との共同申請なので、共有者が協力すれば問題なく完了します。
ですが、買取請求の意思表示をしても、共有者が登記に協力しないこともあります。
共有者が登記に協力しない場合は、「共有持分買取権に基づく移転登記」を求める訴訟を提起します。
訴訟にて移転登記が認められると、単独で持分移転登記を申請することが可能です。
3.買取請求以外で共有を解消する方法
共有持分の買取請求をする目的は、共有状態の解消がほとんどです。
そして、共有状態を解消する方法は、買取請求以外にも複数あります。
- 共有持分の贈与
- 共有持分の放棄
- 共有物の分割請求
買取請求以外の方法についても、簡単に説明しておきます。
3-1.共有持分を欲しい人がいるなら贈与
共有持分を買い取る金銭は持っていないが、共有持分は欲しいという共有者もいます。
共有状態の解消を優先するなら、共有持分を贈与することで達成できます。
不動産の価値にもよりますが、欲しい人がいるなら贈与するのが早いです。
関連記事を読む『不動産の共有持分を贈与する相手は自由に選べる』
3-2.共有持分の放棄は単独の意思表示
不動産の共有持分を放棄すると、放棄された共有持分は共有者に移転します。
放棄するのに共有者の同意は不要ですが、所有権移転登記は共有者との共同申請となります。
共有持分の放棄は自由にできますが、共有者とトラブルになりやすいので注意が必要です。
関連記事を読む『不動産の共有持分を放棄すると共有者に移るが注意点もある』
3-3.共有者は分割請求権を行使できる
不動産の共有者はいつでも分割を請求できます。
ただし、共有者に分割請求をしても、共有者間で合意できなければ、裁判所での手続きが必要になります。
原則は現物分割ですが、代償分割や換価分割が選ばれる可能性もあります。
関連記事を読む『共有物分割請求とは共有状態を解消する方法の1つ』
4.さいごに
不動産の共有者が使う「共有持分の買取請求」は、2つの買取請求に分かれます。
- 共有者に対する買取請求の提案
- 共有者に対する買取請求権の行使
共有者に対する買取請求の提案とは、共有者間での持分売却のことです。提案なので、共有者間で合意しなければ成立しません。
それに対して、共有者に対する買取請求権の行使は、単独の意思表示で効力が発生します。
共有持分を買い取るという言葉は同じですが、内容は違うので気を付けてください。