公正証書遺言を作成するには、証人の立ち会いが2人以上必要です。
ただし、誰でも良いわけではなく、法律で欠格事由も定められています。
もし欠格事由に該当する人が証人になると、公正証書遺言は成立要件をみたせず無効となります。
証人に資格は必要ないので、知人に頼んでも問題ありません。知人に頼めなければ、専門家や公証役場に依頼しましょう。
公正証書遺言の作成を検討しているなら、今回の記事は役に立つので、しっかりと確認しておいてください。
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1.証人は公正証書遺言の成立要件
公正証書遺言が成立するには、複数の要件を満たす必要があります。
そして、証人も要件に含まれています。
以下は、民法の条文です。
条文を読むと分かりますが、証人の人数も法律で決まっています。
1-1.実務上は2人しか立ち会わない
民法の条文上では、証人は2人以上とされているので、3人でも4人でも法律上は可能です。
ただし、私の知る限り、実務上は2人しか立ち会っていません。
もし3人以上の証人を立ち会わせたいなら、前もって公証人に相談してみてください。
1-2.その他の要件も満たす必要がある
公正証書遺言の成立要件は、証人以外にも存在します。
以下は、民法の条文です。
ただし、遺言者は成立要件を気にしなくて問題ありません。
公証人が要件を満たしているか確認したうえで、公正証書遺言を作成するからです。
遺言者が気にすべきは、証人が欠格事由に該当するかどうかになります。
2.公正証書遺言の証人になれない人
公正証書遺言を作成するには、証人が2人以上必要です。
ただし、誰でも良いわけではなく、証人になれない人も存在します。
2-1.欠格事由により関係者は除外
公正証書遺言の証人になれない人は、法律により定められています。
以下は、民法の条文です。
上記を並べると、以下のようになります。
- 未成年者
- 推定相続人
- 推定相続人の配偶者および直系血族
- 受遺者
- 受遺者の配偶者及び直系血族
- 公証人の配偶者・4親等内の親族
遺言書の関係者は除外されています。
未成年者(18歳未満)
未成年者(18歳未満)では証人の意味をなさないので、法律により除外されています。
推定相続人・その配偶者および直系血族
推定相続人だけでなく、推定相続人の配偶者や直系血族も、遺言書の内容に利害関係があるので除外されています。
- 推定相続人
-
現時点で相続が発生したら相続人になる人
- 直系血族
-
両親や祖父母、子どもや孫のこと
遺言書の親族は、欠格事由に該当する可能性が高いです。
受遺者・その配偶者および直系血族
受遺者だけでなく、受遺者の配偶者や直系血族も、遺言書の内容に利害関係があるので除外されます。
- 受遺者
-
遺贈により財産を取得する人
従兄弟(従姉妹)に遺贈する場合、いとこの直系血族も欠格事由に該当します。
公証人の配偶者・4親等内の親族、書記・使用人
公証人の配偶者や4親等内の親族および書記・使用人も、欠格事由に該当します。
公証人の身内では証人の意味がないからです。
2-2.証人が欠格事由に該当すると無効
欠格事由に該当する人が証人になると、公正証書遺言は成立要件を満たせず無効となります。
【事例】
遺言者|A
証人 |BとC(受遺者の配偶者)
Cは欠格事由に該当するので、証人はBだけです。
公正証書遺言の成立要件は証人が2人以上なので、要件を満たせず無効となります。
証人が欠格事由に該当するかは、公証人も確認するので、ミスが起きる可能性は低いです。
ただし、相続人や受遺者の家族が該当しないか、念のため自分でも確認しておいてください。
2-3.欠格事由に該当する人が同席した場合
欠格事由に該当する人が同席しただけの場合、特段の事情が無い限り遺言書は有効となります。
以下は、最高裁の判例です。
法律で禁止しているのは、証人の欠格事由なので、同席しただけでは無効になりません。
ただし、通常は公証人が同席を断るはずです。後々、トラブルになる可能性があるので、同席は認めないでしょう。
3.公正証書遺言の証人は誰に頼む
公正証書遺言の証人は誰に頼むのでしょうか。
ほとんどのケースでは、以下の3つから選んでいます。
- 知り合いに頼む
- 専門家に頼む
- 公証役場に頼む
誰に頼む場合であっても、欠格事由に該当しないよう注意してください。
3-1.自分の知り合いに頼んでも問題ない
証人に資格は不要なので、欠格事由に該当しなければ友人や知人でも問題ありません。
ただし、遺言書の内容を知られてしまうので、頼みにくい人もいるでしょう。
誰も頼める人がいなければ、専門家や公証役場に紹介を依頼してください。
3-2.遺言書作成を依頼した専門家
遺言書の文案作成を専門家(司法書士・弁護士等)に依頼している場合、証人もセットで依頼する人もいます。
当然ですが、文案を作成している専門家は、遺言書の内容を知っているので、頼むことに対する抵抗も少ないでしょう。
遺言書の作成を依頼する際に、証人についても相談しておいてください。
3-3.証人がいないなら公証役場に紹介を依頼
遺言書の内容を自分で考えた場合、公証役場に証人の紹介を頼む人もいます。
ほとんどの公証役場は証人を紹介してくれるので、知り合いに頼めなくても問題ありません。
もちろん、無料ではなく報酬は発生するので、前もって費用を確認しておきましょう。
次章からは、証人を手配する費用について説明していきます。
4.公正証書遺言の証人を手配する費用
公正証書遺言の証人を手配する費用は、誰に頼むかによって違います。
- 司法書士や弁護士に頼む
- 公証役場に手配を頼む
- 自分の知り合いに頼む
それぞれ説明していきます。
4-1.司法書士や弁護士に頼むなら約1万円
遺言書の文案作成を司法書士や弁護士に依頼している場合、証人の手配も依頼できます。
※受けていない専門家もいる。
事務所によって料金は違いますが、1人1万円が多いです。
※2人なら2万円。
もちろん、1万円以上かかる事務所も存在します。
専門家に相談する際は、遺言書の料金だけでなく、証人手配料も確認しておきましょう。
4-2.公証役場に頼むと6,000円から1万円ぐらい
公証役場に証人の手配を頼む場合、手配料は1人6,000円から1万円ぐらいです。
例えば、手配料が7,000円なら、2人で1万4,000円必要になります。
ただし、手配料は各公証役場によって違うので、具体的な金額は事前に確認しておいてください。
4-3.費用を抑えるなら自分で用意する
証人の手配料を抑えるなら、自分で用意しましょう。
なぜなら、知り合いに頼むなら、費用は当事者で自由に決めれるからです。
例えば、無料で受けてくれる人が見つかれば、証人手配料は発生しません。
有料で頼む場合でも、相場よりも低い金額なら、費用は抑えれます。
5.公正証書遺言の証人が担う役割
公正証書遺言の証人が担う役割としては、以下があります。
- 遺言者の意思どおり作成されているか確認
- 確認したら公正証書遺言に署名捺印
証人になる人は、しっかりと確認しておいてください。
5-1.持参物は本人確認書類と印鑑
公正証書遺言の作成日に、証人が持参する物は2つだけです。
- 本人確認書類
- 印鑑(認印でも可能)
本人確認書類は、運転免許証やマイナンバー等になります。
印鑑に関しては、認印で問題ありません。
2つしかありませんが、忘れると公正証書遺言が作成できなくなるので、家を出る前に確認しておきましょう。
5-2.当日は3つの点を確認する
公正証書遺言の証人は、以下の3点を確認します。
- 遺言者の本人確認
- 遺言者の意思を確認
- 遺言の内容を確認
いずれの確認も、証人が直接するわけではなく、公証人の確認作業を確認するイメージです。
遺言者の本人確認
公証人が遺言者の本人確認をするので、証人も確認作業を見ておきましょう。
ちなみに、証人の本人確認もあります。
遺言者の意思を確認
遺言者が自分の意思で公正証書遺言を作成しているか確認します。
※判断能力があるかどうか。
ただし、証人が質問するわけではなく、遺言者と公証人のやり取りを見て確認するだけです。
遺言書の内容を確認
遺言者の希望どおりに、遺言書が作成されているか確認します。
原則では、遺言者が遺言の趣旨を口述して、その後で公証人が読み上げます。
ただし、公証人が読み上げて、遺言者が間違いないと答えるだけのケースも多いです。
5-3.証人も遺言書に署名捺印
3つの点を確認したら、証人も公正証書遺言に署名捺印します。
以下は、民法の条文です。
遺言公正証書
(省略)
以上を遺言者及び証人に読み聞かせ、かつ閲覧させたところ、各自その筆記の正確なことを承認し、次に署名押印する。
遺言者 〇〇 〇〇 ㊞
証 人 〇〇 〇〇 ㊞
証 人 〇〇 〇〇 ㊞
証人には署名できない場合の例外がないので、必ず署名が必要です。つまり、怪我などにより、字が書けない人は証人になれません。
押印も成立要件なので、印鑑を忘れないよう注意してください。
6.まとめ
今回の記事では「公正証書遺言の証人」について説明しました。
公正証書遺言を作成するには、証人が2人必要になります。証人は公正証書遺言の作成日に、公証人の確認作業を確認するのが仕事です。
ただし、遺言者の親族等は、欠格事由に該当するので、証人になれません。
ご自身で探すのも自由ですし、専門家(司法書士・弁護士)や公証役場に頼んでも大丈夫です。
専門家に遺言書の文案作成を依頼する場合は、証人についても相談してみてください。紹介を依頼する場合、1人当たり1万円ぐらいが相場となります。
費用を抑えるなら、自分で証人を探しても大丈夫です。
公正証書遺言の作成を検討しているなら、今回の記事を参考にしてください。