公正証書遺言には証人が2人必要!欠格事由に該当するとなれない

公正証書遺言の証人
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公正証書遺言を作成するには、証人の立ち会いが2人以上必要です。

ただし、誰でも良いわけではなく、法律で欠格事由も定められています。

もし欠格事由に該当する人が証人になると、公正証書遺言は成立要件をみたせず無効となります。

証人に資格は必要ないので、知人に頼んでも問題ありません。知人に頼めなければ、専門家や公証役場に依頼しましょう。

公正証書遺言の作成を検討しているなら、今回の記事は役に立つので、しっかりと確認しておいてください。

目次

1.証人は公正証書遺言の成立要件

公正証書遺言が成立するには、複数の要件を満たす必要があります。

そして、証人も要件に含まれています。

以下は、民法の条文です。

(公正証書遺言)
第九百六十九条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。

出典:e-Govウェブサイト(民法969条1項)

条文を読むと分かりますが、証人の人数も法律で決まっています。

1-1.実務上は2人しか立ち会わない

公正証書遺言には証人が必要

民法の条文上では、証人は2人以上とされているので、3人でも4人でも法律上は可能です。

ただし、私の知る限り、実務上は2人しか立ち会っていません。

もし3人以上の証人を立ち会わせたいなら、前もって公証人に相談してみてください。

1-2.その他の要件も満たす必要がある

公正証書遺言の成立要件は、証人以外にも存在します。

以下は、民法の条文です。

(公正証書遺言)
第九百六十九条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
出典:e-Govウェブサイト(民法969条)

ただし、遺言者は成立要件を気にしなくて問題ありません。

公証人が要件を満たしているか確認したうえで、公正証書遺言を作成するからです。

遺言者が気にすべきは、証人が欠格事由に該当するかどうかになります。

2.公正証書遺言の証人になれない人

公正証書遺言を作成するには、証人が2人以上必要です。

ただし、誰でも良いわけではなく、証人になれない人も存在します。

2-1.欠格事由により関係者は除外

公正証書遺言の証人になれない人は、法律により定められています。

以下は、民法の条文です。

(証人及び立会人の欠格事由)
第九百七十四条 次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
一 未成年者
二 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
三 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

出典:e-Govウェブサイト(民法974条)

上記を並べると、以下のようになります。

  • 未成年者
  • 推定相続人
  • 推定相続人の配偶者および直系血族
  • 受遺者
  • 受遺者の配偶者及び直系血族
  • 公証人の配偶者・4親等内の親族

遺言書の関係者は除外されています。

未成年者(18歳未満)

未成年者(18歳未満)では証人の意味をなさないので、法律により除外されています。

推定相続人・その配偶者および直系血族

推定相続人だけでなく、推定相続人の配偶者や直系血族も、遺言書の内容に利害関係があるので除外されています。

推定相続人

現時点で相続が発生したら相続人になる人

直系血族

両親や祖父母、子どもや孫のこと

遺言書の親族は、欠格事由に該当する可能性が高いです。

受遺者・その配偶者および直系血族

受遺者だけでなく、受遺者の配偶者や直系血族も、遺言書の内容に利害関係があるので除外されます。

受遺者

遺贈により財産を取得する人

従兄弟(従姉妹)に遺贈する場合、いとこの直系血族も欠格事由に該当します。

公証人の配偶者・4親等内の親族、書記・使用人

公証人の配偶者や4親等内の親族および書記・使用人も、欠格事由に該当します。

公証人の身内では証人の意味がないからです。

2-2.証人が欠格事由に該当すると無効

欠格事由に該当する人が証人になると、公正証書遺言は成立要件を満たせず無効となります。

【事例】

遺言者|A
証人 |BとC(受遺者の配偶者)

Cは欠格事由に該当するので、証人はBだけです。

公正証書遺言の成立要件は証人が2人以上なので、要件を満たせず無効となります。

証人が欠格事由に該当するかは、公証人も確認するので、ミスが起きる可能性は低いです。

ただし、相続人や受遺者の家族が該当しないか、念のため自分でも確認しておいてください。

2-3.欠格事由に該当する人が同席した場合

欠格事由に該当する人が同席しただけの場合、特段の事情が無い限り遺言書は有効となります。

以下は、最高裁の判例です。

遺言公正証書の作成にあたり当該遺言の証人となることができない者が同席していたとしても、この者によって遺言の内容が左右されたり、遺言者が自己の真意に基づいて遺言をすることを妨げられたりするなど特段の事情のない限り、同遺言が無効となるものではない。

出典:最高裁平成13年3月27日判決(判例タイムズ1058号105ページ)

法律で禁止しているのは、証人の欠格事由なので、同席しただけでは無効になりません。

ただし、通常は公証人が同席を断るはずです。後々、トラブルになる可能性があるので、同席は認めないでしょう。

3.公正証書遺言の証人は誰に頼む

公正証書遺言の証人は誰に頼むのでしょうか。

ほとんどのケースでは、以下の3つから選んでいます。

  • 知り合いに頼む
  • 専門家に頼む
  • 公証役場に頼む

誰に頼む場合であっても、欠格事由に該当しないよう注意してください。

3-1.自分の知り合いに頼んでも問題ない

証人に資格は不要なので、欠格事由に該当しなければ友人や知人でも問題ありません。

ただし、遺言書の内容を知られてしまうので、頼みにくい人もいるでしょう。

誰も頼める人がいなければ、専門家や公証役場に紹介を依頼してください。

3-2.遺言書作成を依頼した専門家

遺言書の文案作成を専門家(司法書士・弁護士等)に依頼している場合、証人もセットで依頼する人もいます。

当然ですが、文案を作成している専門家は、遺言書の内容を知っているので、頼むことに対する抵抗も少ないでしょう。

遺言書の作成を依頼する際に、証人についても相談しておいてください。

3-3.証人がいないなら公証役場に紹介を依頼

遺言書の内容を自分で考えた場合、公証役場に証人の紹介を頼む人もいます。

ほとんどの公証役場は証人を紹介してくれるので、知り合いに頼めなくても問題ありません。

もちろん、無料ではなく報酬は発生するので、前もって費用を確認しておきましょう。

次章からは、証人を手配する費用について説明していきます。

4.公正証書遺言の証人を手配する費用

公正証書遺言の証人を手配する費用は、誰に頼むかによって違います。

  • 司法書士や弁護士に頼む
  • 公証役場に手配を頼む
  • 自分の知り合いに頼む

それぞれ説明していきます。

4-1.司法書士や弁護士に頼むなら約1万円

遺言書の文案作成を司法書士や弁護士に依頼している場合、証人の手配も依頼できます。
※受けていない専門家もいる。

事務所によって料金は違いますが、1人1万円が多いです。
※2人なら2万円。

もちろん、1万円以上かかる事務所も存在します。

専門家に相談する際は、遺言書の料金だけでなく、証人手配料も確認しておきましょう。

4-2.公証役場に頼むと6,000円から1万円ぐらい

公証役場に証人の手配を頼む場合、手配料は1人6,000円から1万円ぐらいです。

例えば、手配料が7,000円なら、2人で1万4,000円必要になります。

ただし、手配料は各公証役場によって違うので、具体的な金額は事前に確認しておいてください。

4-3.費用を抑えるなら自分で用意する

証人の手配料を抑えるなら、自分で用意しましょう。

なぜなら、知り合いに頼むなら、費用は当事者で自由に決めれるからです。

例えば、無料で受けてくれる人が見つかれば、証人手配料は発生しません。

有料で頼む場合でも、相場よりも低い金額なら、費用は抑えれます。

5.公正証書遺言の証人が担う役割

公正証書遺言の証人が担う役割としては、以下があります。

  • 遺言者の意思どおり作成されているか確認
  • 確認したら公正証書遺言に署名捺印

証人になる人は、しっかりと確認しておいてください。

5-1.持参物は本人確認書類と印鑑

公正証書遺言の作成日に、証人が持参する物は2つだけです。

  • 本人確認書類
  • 印鑑(認印でも可能)

本人確認書類は、運転免許証やマイナンバー等になります。

印鑑に関しては、認印で問題ありません。

2つしかありませんが、忘れると公正証書遺言が作成できなくなるので、家を出る前に確認しておきましょう。

5-2.当日は3つの点を確認する

公正証書遺言の証人は、以下の3点を確認します。

  • 遺言者の本人確認
  • 遺言者の意思を確認
  • 遺言の内容を確認

いずれの確認も、証人が直接するわけではなく、公証人の確認作業を確認するイメージです。

遺言者の本人確認

公証人が遺言者の本人確認をするので、証人も確認作業を見ておきましょう。

ちなみに、証人の本人確認もあります。

遺言者の意思を確認

遺言者が自分の意思で公正証書遺言を作成しているか確認します。
※判断能力があるかどうか。

ただし、証人が質問するわけではなく、遺言者と公証人のやり取りを見て確認するだけです。

遺言書の内容を確認

遺言者の希望どおりに、遺言書が作成されているか確認します。

原則では、遺言者が遺言の趣旨を口述して、その後で公証人が読み上げます。

ただし、公証人が読み上げて、遺言者が間違いないと答えるだけのケースも多いです。

5-3.証人も遺言書に署名捺印

3つの点を確認したら、証人も公正証書遺言に署名捺印します。

以下は、民法の条文です。

第九百六十九条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。 (省略) 四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
出典:e-Govウェブサイト(民法969条4項)

遺言公正証書

(省略)

以上を遺言者及び証人に読み聞かせ、かつ閲覧させたところ、各自その筆記の正確なことを承認し、次に署名押印する。

遺言者  〇〇 〇〇   

証 人  〇〇 〇〇   

証 人  〇〇 〇〇   

証人には署名できない場合の例外がないので、必ず署名が必要です。つまり、怪我などにより、字が書けない人は証人になれません。

押印も成立要件なので、印鑑を忘れないよう注意してください。

6.まとめ

今回の記事では「公正証書遺言の証人」について説明しました。

公正証書遺言を作成するには、証人が2人必要になります。証人は公正証書遺言の作成日に、公証人の確認作業を確認するのが仕事です。

ただし、遺言者の親族等は、欠格事由に該当するので、証人になれません。

ご自身で探すのも自由ですし、専門家(司法書士・弁護士)や公証役場に頼んでも大丈夫です。

専門家に遺言書の文案作成を依頼する場合は、証人についても相談してみてください。紹介を依頼する場合、1人当たり1万円ぐらいが相場となります。

費用を抑えるなら、自分で証人を探しても大丈夫です。

公正証書遺言の作成を検討しているなら、今回の記事を参考にしてください。

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