兄弟姉妹には遺留分が存在しません。たとえ相続人が兄弟姉妹のみであっても、結論は同じです。
遺言書を作成する場合も、遺留分を気にせず書いて問題ありません。
ただし、弟や妹を養子にしている場合は、遺留分が発生するので注意しましょう。
相続人が兄弟姉妹なら、今回の記事を参考にしてください。
1.兄弟姉妹には遺留分が存在しない
兄弟姉妹が相続人であっても、兄弟姉妹には遺留分が存在しません。
なぜなら、法律により除外されているからです。
1-1.遺留分があるのは配偶者・子・直系尊属
兄弟姉妹を除く配偶者・子ども・直系尊属には、遺留分が存在します。
以下は、民法の条文です。
相続人が兄弟姉妹だった場合、遺留分は存在しないので注意してください。
関連記事を読む『遺留分に関する民法の条文【1042条から1049条】』
1-2.相続人が兄弟姉妹のみでも変わらない
相続人が兄弟姉妹になる組合せは2つあります。
- 配偶者と兄弟姉妹
- 兄弟姉妹のみ
配偶者が存在する場合だけでなく、相続人が兄弟姉妹のみの場合も、遺留分は存在しません。
【事例】
被相続人|A
相続人 |B(弟)
遺言書 |C(友人)に全財産を遺贈
Bは唯一の肉親ですが、遺留分はないので、Cに何も請求できません。
たとえ相続人が兄弟姉妹1人だけだったとしても、結論は変わらないです。
1-3.代襲相続人である甥姪にも存在しない
亡くなった人よりも兄弟姉妹が先に亡くなっている場合、甥姪が存在すれば代襲相続が発生します。
ただし、代襲相続人である甥姪も、遺留分は存在しません。
なぜなら、本来の相続人(兄弟姉妹)が持っていない権利だからです。
甥姪は兄弟姉妹に代わって相続人になるので、兄弟姉妹と同じ権利しか取得できません。
関連記事を読む『甥姪には遺留分が無い!相続人であっても請求できない』
2.兄弟姉妹が相続人なら遺留対策は不要
相続人が兄弟姉妹であれば、遺留分対策は不要です。
- 遺留分対策
-
遺留分の割合を減らすや支払い用の金銭を用意するなど
相続対策を済ませておけば、希望どおりに財産を残せます。
2-1.遺言書を書けば希望どおりに残せる
通常、遺言書を作成する際は、遺留分を考慮して作成します。
※遺留分を無視して作成する場合もある。
ただし、相続人が兄弟姉妹であれば、気にせず作成して問題ありません。
第3者に全財産を遺贈してもよいですし、特定の兄弟姉妹に全財産を相続させてもよいです。
遺言書を作成しておけば、希望どおりに財産を残せるので、後回しにせず書いておきましょう。
2-2.生前贈与の時期を考慮する必要がない
通常、相続対策として生前贈与を使用する場合、時期を考慮する必要があります。
贈与の時期によっては、遺留分の計算に含まれるからです。
贈与の相手 | 相続開始前 |
---|---|
第3者 | 1年以内 |
相続人 | 10年以内 |
※遺留分権利者を害すると知っていた場合は期限無し
ですが、相続人が兄弟姉妹であれば、気にせず贈与して問題ありません。
遺言書を作成するのが面倒であれば、生前贈与も選択肢の一つです。
※贈与税には注意。
関連記事を読む『生前贈与も遺留分の計算に含めるが時期により違いがある』
2-3.相続対策をしなければ兄弟姉妹が取得
兄弟姉妹に遺留分は存在しませんが、相続人であることに変わりはありません。
したがって、相続対策をしなければ、兄弟姉妹が相続財産を取得します。
【事例】
被相続人|A
相続人 |B(配偶者)・C(兄)
相続分 |B(4分の3)・C(4分の1)
Cに遺留分はありませんが、相続分は4分の1あります。
配偶者に全財産を残するもりなら、相続対策は必要です。
遺留分対策が不要であっても、相続対策は後回しにせず、早めに取り掛かりましょう。
3.弟や妹を養子にすると遺留分が発生
兄弟姉妹に遺留分はありませんが、弟や妹と養子縁組をした場合は遺留分が発生します。
なぜなら、養子も子どもとして遺留分があるからです。
3-1.弟妹が養子なら実子と同じ遺留分
法律上、養子と実子に違いはありません。
したがって、弟妹を養子にすると、実子と同じように遺留分が発生します。
ただし、弟妹(養子)に全財産を相続させるつもりなら、遺留分を気にする必要はありません。
※実子がいる場合は除く。
注意が必要なのは、養子以外にも財産を残す場合です。
関連記事を読む『【遺留分は養子にも認められる】実子と同じ遺留分がある』
3-2.相続対策で養子縁組するなら注意
全財産を養子にした弟妹に残す場合は別ですが、第3者や他の親族にも財産を残すなら注意してください。
なぜなら、養子の遺留分を侵害すると、遺留分侵害額請求の可能性があるからです。
【事例】
被相続人|A
相続人 |B(養子)
遺贈 |C(兄)・D(姉)
財産を均等に残したいので、CとDに各3分の1ずつ遺贈した。
遺贈がBの遺留分(2分の1)を侵害しているので、BはC・Dに遺留分侵害額請求できます。
弟妹を養子にした場合は、遺留分にも気を付ける必要があります。
関連記事を読む『遺留分侵害額請求権とは金銭を請求する権利』
4.遺留分と兄弟姉妹は勘違いしやすい
兄弟姉妹に遺留分は存在しないのですが、勘違いしやすいので注意してください。
以下は、よくある会話になります。
兄から遺留分を請求されました
お兄さんには遺留分があるので、支払うしかありません
上記の会話を文字だけで判断すると、兄弟姉妹に遺留分があると勘違いします。
重要なのは「兄」が亡くなった人から見て、誰に当たるかです。
【事例1】
被相続人|A
相続人 |B(兄)・C(妹)
※BはCの兄
遺言書 |Cに全財産を相続させる
Bは亡くなった人の兄なので、遺留分が存在しません。
【事例2】
被相続人|A
相続人 |B(子)・C(子)
※BはCの兄
遺言書 |Cに全財産を相続させる
Bは亡くなった人の子なので、遺留分が存在します。
したがって、BはCに遺留分侵害額を請求可能です。
兄弟姉妹と遺留分の関係は、文字で判断すると間違えやすいので注意してください。
5.まとめ
今回の記事では「遺留分と兄弟姉妹」について説明しました。
兄弟姉妹には遺留分が存在しません。たとえ相続人が兄弟姉妹のみだったとしても、結論は同じです。
相続人が兄弟姉妹であれば、遺留分対策は不要です。
ただし、相続対策は必要なので注意してください。遺言書の作成や生前贈与をしなければ、兄弟姉妹が相続財産を取得します。
弟や妹を養子にすると、子どもとして遺留分が発生します。養子以外にも財産を残すなら、遺留分に注意が必要です。
遺留分と兄弟姉妹は勘違いしやすいので、しっかりと確認しておいてください。