同性パートナーのために遺言書を書きたいが、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」のどちらを選べば良いのか迷われていませんか。
どちらの遺言書にもメリット・デメリットがあります。あなたの家族構成によっても、結論は違ってくると思います。
今回の記事では、同性カップルと遺言書の選び方について説明しているので、遺言書を選ぶ際の参考にしてください。
目次
- 自筆証書遺言は自分で書く
- 自分で書く利点は3つある
- 自分で書くと問題が起こりやすい
- 法務局での遺言書保管サービス
- 法務局に預けるメリット
- 遺言書を預ける前に確認しておこう
- 公正証書遺言は公証人が書く
- 公証人に作成してもらう利点
- 公正証書遺言にする際の注意点
- どちらにするかは揉める可能性で判断する
- 緊急事態であれば自筆証書遺言を先に作成する
- まとめ
1.自筆証書遺言は自分で書く
自筆証書遺言とは、文字通り自分で書く遺言書です。簡単に作成することができますが、一方でミスも目立ちます。
1-1.自分で書く利点は3つある
自筆証書遺言の利点は3つあります。
- 手軽に作成できる
- 費用が少なくて済む
- 書き直しも手軽にできる
①手軽に作成できる
紙とペンとハンコがあれば、今すぐにでも作成することができます。
自分の都合だけで書けるので、スケジュールを気にする必要もありません。
②費用が少なくて済む
自分だけで作成する場合は無料です。
*お勧めはしないです。
同性カップルは2人が同じ時期に作成するケースが多いので、費用が少なくて済むのは重要です。
専門家に文案作成やダブルチェックを、依頼する場合は料金が発生します。
③書き直しも手軽にできる
自宅で保管している場合は破って書き直すだけなので、届け出や許可も不要となります。
何回でも書き直しはできるので、後回しにするぐらいなら早く書いた方が良いです。
1-2.自分で書くと問題が起こりやすい
自筆証書遺言の問題点です。
- 形式不備の恐れがある
- 内容に問題があることが多い
- 紛失の恐れがある
- 検認が必要
- 作成を疑われやすい
①形式不備の恐れがある
形式に一つでも不備があると遺言書は無効になります。自分で自分のミスに気づくのは難しいです。
ミスで一番多いのは形式不備です。形式不備とは以下の4つです。
- 手書きではない
- 作成年月日が抜けている
- 名前が抜けている
- ハンコを押していない
形式不備の遺言書は絶対的に無効です。同性パートナーへの遺贈も無効になります。
自分で遺言書を作成した場合は、ダブルチェックだけでも専門家を利用しましょう。
②内容に問題があることが多い
自分一人で書いてしまうと、内容に問題があっても気付きにくです。気付く知識を持っていることが前提条件となります。
以下は問題になりやすいです。
- 遺留分侵害
- 特定遺贈と包括遺贈の違い
- 遺言執行者の有無
③紛失の恐れがある(見つからない)
自宅で保管すると紛失の恐れはあります。亡くなって何年かしてから、遺言書が見つかることは珍しくないです。
自筆証書遺言にするなら、法務局の保管制度を利用しましょう。
④検認が必要
自筆証書遺言は家庭裁判所での検認手続きを終わらせないと、相続手続で使うことができません。
ただし、検認をしなくても遺言書自体は有効です。
法務局の保管制度を利用した場合は、検認手続きは省略されます。
⑤作成を疑われやすい
遺言書作成時の意思能力を疑われやすいです。同性パートナーへの遺贈については相続人と揉めやすい。
2.法務局での遺言書保管サービス
2020年7月10日より、法務局で自筆証書遺言の保管サービスがスタートしました。
自筆証書遺言の欠点を補ってくれます。
法務局に預けるまでの流れは『自筆証書遺言は法務局で保管しよう』で確認できます。
2-1.法務局に預けるメリット
保管サービスには次のようメリットがあります。
- 形式不備のチェック有り
- 紛失の恐れがない
- 検認手続き不要
①形式不備のチェック有り
法務局に遺言書を預ける際に形式不備のチェックがあります。
したがって、形式不備で無効になる可能性は低いです。
②紛失の恐れがない
原本は法務局で保管するので紛失する可能性はないです。
自筆証書遺言は電子データとしても保管するので、法務局の建物が倒壊したとしても大丈夫です。
③検認手続き不要
法務局に保管しておいた自筆証書遺言は、家庭裁判所での検認も不要になります。
2-2.遺言書を預ける前に確認しておこう
遺言者が法務局に自分で預けに行く必要があります。代理人が提出することはできません。
ですので、体力的に難しい人もいます。
用紙のサイズ等に規定があるので、すでに書いている場合は預ける前に確認してください。
亡くなった後の相続手続で、受遺者(同性パートナー)にとっては、多少面倒かもしれないです。必要書類を集めるのに費用と手間がかかります。
3.公正証書遺言は公証人が書く
公正証書遺言とは、公証人に作成してもらう遺言書です。自分では書かないのが、自筆証書遺言との最大の違いとなります。
公正証書遺言の方が作成件数は多いです。
3-1.公証人に作成してもらうメリット
公証人に作成してもらうメリットには以下があります。
- 形式不備の恐れがない
- 内容も確認される
- 信頼性が高い
- 紛失の恐れがない
- 検認手続きが不要
形式不備の恐れがない
公正証書遺言を実際に作成するのは公証人なので、形式不備の恐れはありません。
ですので、形式不備で遺言書が無効になることは無いです。
遺言書の内容も確認される
公正証書遺言を作成するには、初めに遺言書の文案を提出します。
したがって、内容も確認するので、明らかな問題があれば指摘されます。
例えば、遺留分をまったく考慮していなければ、間違いないか確認されます。
証拠としての信頼性が高い
自筆証書遺言と公正証書遺言は、遺言書としての効力は同じです。
ただし、信頼性では公正証書遺言の方が高いです。
万が一、同性パートナーと相続人が揉めたとしても、証拠として有利に働きます。
紛失の恐れがない
公正証書遺言の原本は、公正証書役場で保管するので紛失の恐れはありません。
また、公正証書遺言の謄本を失くした場合、公証役場で再発行することもできます。
検認手続きが不要
公正証書遺言は、家庭裁判所での検認が不要です。
3-2.公正証書遺言にする際の注意点
公正証書遺言を作成する際の注意点はです。
作成費用は高くなる
公正証書にすると費用が余計に発生します。公証人手数料がかかるのと、証人2人を用意してもらう費用もかかります。
遺言書作成には時間がかかる
公証人と打ち合わせ等が必要になるので、すぐに作成するのは難しいです。
書き直す場合も費用がかかる
公正証書遺言を書き直す場合は、再度作成手数料が発生します。
公正証書遺言を何度も書き直すのは、経済的な面から考えてもお勧めできないです。
4.どちらにするかは揉める可能性で判断する
同性婚で遺言書を選ぶときの判断基準は、あなたが亡くなった後に揉める可能性があるかどうかです。
揉める可能性の有無は以下を考慮します。
- 家族へのカミングアウトの有無
- 家族の同性愛に対する考え方
- 法定相続人の有無
遺言書の信頼性が高いのは公正証書遺言です。
そのため、揉める可能性があるなら公正証書遺言を選ぶべきです。
一方、法定相続人がいないのであれば揉める可能性も少ないです。
ですので、自筆証書遺言で問題ありません。
自筆証書遺言にするなら、専門家に文案作成かダブルチェックは依頼した方が安全です。作成した自筆証書遺言は法務局で保管すれば、紛失等の恐れや検認手続きも不要になります。
5.緊急事態であれば自筆証書遺言を先に作成する
同性パートナーが急に体調を崩して病院に行くと、死期が遠くないと診断されることがあります。
病院で診断されてから急いで遺言書を作成するなら、公正証書遺言にする場合でも自筆証書遺言を先に作成してください。
なぜかというと、公正証書遺言の準備をしている間に亡くなる人もいるからです。
万が一、公正証書遺言の作成が間に合わない可能性を考慮して、簡単な内容でも良いので自筆証書遺言を作成します。
遺言書
遺言者は、全財産をパートナーである○○○○(生年月日・住所)に遺贈する。
公正証書遺言の作成が間に合わないかもしれないので、自筆証書遺言を作成しておきます。
令和○年○月○日
○○○○ 印
上記のような内容であっても、法律上は有効に成立します。
公正証書遺言の作成が間に合えば、上記の自筆証書遺言は自動的に撤回されます。
司法書士から一言公正証書遺言の作成を待つ時間があれば、自筆証書遺言を作成しておいてください。
6.まとめ
同性カップルが選ぶ遺言書はどちらが良いのか。遺言書としての効力は、自筆証書遺言・公正証書遺言どちらも同じです。
完璧な正解は無いのですが、アドバイスとしては安全性が高い方を勧めるという結論です。
ケースバイケースですが、公正証書遺言の方が安全性は高いです。
ただし、費用が数万円は増えてしまいます。
同性カップルは2人同時に作成することも多いので、金銭的に厳しくなります。場合によっては、自筆証書遺言での作成も考える必要がありあます。
迷ったり悩んだりした際は、自分だけで考えるのではなく相談してみてください。金銭的に余裕が無い場合には、今は自筆証書遺言にして余裕ができてから公正証書遺言に切り替える等のアドバイスをすることもあります。
ホームページ上に記載していなくても、個別の対応をしてくれる事務所もあります。カップル割引価格・分割払い対応等、気兼ねなくご相談ください。