同性カップルが不動産を購入するときや、同性パートナーに不動産を残すときには、不動産登記が必要になります。
不動産登記を専門家に依頼すると、依頼料と登録免許税が発生します。
意外に高額になるので、不動産登記が必要になる場合について説明していきます。
今回の記事は原則としての登録免許税です。
目次
- 不動産購入時の登記
- 建物表題登記
- 所有権保存登記
- 所有権移転登記
- 抵当権設定登記
- 同性パートナーに不動産を残す
- 生前贈与
- 死因贈与
- 遺贈
- 信託終了による承継
- 養子縁組による相続
- その他の場合
- 持分放棄
- 特別縁故者
- 特別縁故者不存在
- まとめ
1.不動産購入時の登記
同性カップルが不動産を購入すると、4つの登記が関係します。
- 建物表題登記
- 所有権保存登記
- 所有権移転登記
- 抵当権設定登記
1‐1.建物表題登記
同性カップルで注文住宅を購入した場合や、未登記の不動産を購入すると必要になります。
表題登記とは、建物の出生届けのようなものです。建物を新築した場合は法務局に届け出をします。
登録免許税は必要ありませんが、専門家報酬は発生します。
表題登記の申請を専門家に依頼する場合は、司法書士ではなく土地家屋調査士です。
1‐2.所有権保存登記
所有権保存登記とは最初にする所有権の登記です。
登録免許税は固定資産税評価額の1,000分の4です。
新築物件の場合は、建物表題登記と所有権保存登記の2つが必要になります。
1‐3.所有権移転登記
中古物件等を購入すると、売主から同性カップルへの所有権移転登記が必要です。
売買を原因として所有権移転登記をします。
登録免許税は固定資産税評価額の1,000分の20です。
1‐4.抵当権設定登記
住宅ローンを組んでいる場合は不動産に抵当権の設定をします。
登録免許税は住宅ローン借入額の1,000分の4です。
住宅ローンを完済したときは抵当権抹消登記をします。不動産1件につき1,000円です。
住宅ローンについては下記の記事をご覧ください。
2.同性パートナーに不動産を残す
同性パートナーに不動産を残す方法は複数あります。
- 生前贈与
- 死因贈与
- 遺贈
- 信託終了による承継
- 養子縁組による相続
2‐1.生前贈与
亡くなる前に不動産を贈与することで、同性パートナーに残す場合です。
贈与を原因とする所有権移転登記をします。
登録免許税は固定資産税評価額の1,000分の20です。
ただし、不動産を贈与すると贈与税が高額になるので、選択する同性カップルは少ないと思います。
2‐2.死因贈与
契約は生前に行いますが、効力発生は贈与者の死亡時になります。
贈与を原因とする所有権移転登記をします。
登録免許税は固定資産税評価額の1,000分の20です。
死因贈与は贈与税ではなく相続税の課税対象です。
死因贈与契約書は公正証書で作成する方が安全です。
2‐3.遺贈
遺言書により同性パートナーに不動産を遺贈する場合です。
遺贈を原因とする所有権移転登記をします。
登録免許税は固定資産税評価額の1,000分の20です。
同性パートナーに遺贈する場合は、遺言執行者を指名しておくと便利です。
なぜなら、通常は同性パートナーと相続人が共同申請をするところ、同性パートナーと遺言執行者の共同申請になるからです。
受贈者(同性パートナー)を遺言執行者にしておけば、1人で名義変更をすることができます。
2‐4.信託終了による承継
信託終了により同性パートナーが、不動産を承継する場合です。
登記が2つ必要になります。
信託財産引継を原因とする所有権移転登記と信託登記の抹消。
所有権移転は固定資産税評価額の1,000分の20です。
信託抹消は不動産1個につき1,000円です。
2‐5.養子縁組による相続
同性パートナーと養子縁組をしている場合は、相続を原因とする所有権移転登記をします。
登録免許税は固定資産税評価額の1,000分の4です。
養親から養子、養子から養親どちらの相続でも登録免許税は同じです。
不動産を同性パートナーに残す場合、養子縁組による相続だけ登録免許税が低くなります。
3.その他の場合
可能性として考えられるケースについても、まとめて書いておきます。
3‐1.持分放棄
ペアローン等で不動産を購入した場合は、同性カップルで共有している状態です。
共有不動産の持分は放棄することができます。
放棄した持ち分は、共有者(同性パートナー)に移ることになります。
持分放棄を原因とする所有権移転登記をします。
登録免許税は固定資産税評価額の1,000分の20です。
実質的に生前贈与と変わらないので、同性カップル間で行うことは少ないと思います。
3‐2.特別縁故者
亡くなった人に相続人がいない場合、同性パートナーは特別縁故者として不動産を取得する可能性があります。
特別縁故者については『同性婚と特別縁故者|パートナーが最後に頼る手段』をご覧ください。
民法第958条の3の審判を原因とする所有権移転登記をします。
登録免許税は固定資産税評価額の1,000分の20です。
特別縁故者制度に頼らなくても大丈夫なように、生前に相続対策をしておきましょう。
3‐3.特別縁故者不存在
特別縁故者として認められなかった場合でも、不動産が共有であれば取得する可能性があります。
特別縁故者の不存在が確定すると、共有者(同性パートナー)へ持ち分は移転することになります。
特別縁故者不存在確定を原因とする所有権移転登記をします。
登録免許税は固定資産税評価額の1,000分の20です。
4.まとめ
同性カップルが不動産を購入すると、不動産登記も必要になります。
専門家への依頼料と登録免許税は意外と高額になります。いつ必要になるかを把握しておくと対策も立てやすいと思います。
同性パートナーに不動産を残す場合の登録免許税は、基本的には固定資産税評価額の1,000分の20になります。相続対策をする際には税金の支払いにも備えてください。
同性パートナーへの遺贈の登記は、第3者対抗要件になりますので必ず行ってください。